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溺愛されるよう仕向けるはずが、早々に陥落させてたなんて聞いてない!  作者: いか人参


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【番外編】勘違い嫉妬イベント


部屋で午後のお茶を楽しんでいたアレナが顔を上げ、ふと目を輝かせた。その視線の先にいたレネがびくっと肩を震わせる。



「お断りします。」

「…まだ何も言ってないじゃない。」


言う前から断られたアレナが不機嫌になるが、これ以上面倒ごとに巻き込まれたくないレネは目も合わせてくれない。



「ただお買い物に行きたいなと思っただけよ。」

「それなら、週に1度邸に来ている商会で十分では?」

「気分転換に街に出たいの。」

「旦那様にお声を掛けたら如何ですか?」

「だってお忙しいでしょう?」


だんだんと雲行きの怪しくなる会話に、レネが目を細める。



「何が目的ですか?」

「いやその…なんて言うか…少し嫉妬されてみたいな…なんて♡」

(毎日毎分毎秒嫉妬しかされてないじゃないですか…)


二人の日常を知るレネが白けた顔をするが、アレナは恥ずかしそうに両手の人差し指をつつき合っている。



「具体的には何をされるおつもりですか?」

「簡単な話よ。内緒で外に買い物に行ってジュリアス様のプレゼントを買うの。それをたまたま目撃されて、他の男のプレゼントかと勘違いされて嫉妬されるアレよ!」

「アレと言われましても…」


こめかみを抑えるレネ。

相変わらずアレナの行動原理は恋愛小説なのだと頭が痛くなる。



「そもそも、ジュリアス様の許可なしに外には出られませんよ。手形が無ければ門番も通してくれませんからね。」

「そこなのよね…ヒロインは門番を倒す術でも持っているのかしら?」

(普通は自宅で軟禁なんてされないのですよ。)


レネは思わずツッコミを入れたくなったが、心の内に留めた。



「では旦那様に外出の許可を頂いてください。それであれば全面協力いたします。」

「分かったわ!」


元気よく返事したアレナはさっそく、その日の晩餐の席でジュリアスに話をすることにした。


 


「一人で買い物がしたいだって?」


二人きりの晩餐中、アレナの隣で甘い顔をしていたジュリアスの表情が曇る。その瞳が一瞬だけ仄暗く光った。



「何か欲しいものでもあるのか?言ってくれれば明日にでも邸に取り寄せる。」


「い、いえ!そんなお手を煩わせるなんて申し訳ないですわ。」


「煩う?悦びの間違いだろ?」


「!!」


ニヤリと微笑んだジュリアスが、片手でするりとアレナの頬を撫でた。うっとりとした表情を浮かべて見つめてくる。


(これは…もう強行突破するしかないわ!!忘れた頃に一人で外に行ってやる!)


これまでいくつもの作戦を決行してきたアレナは、その経験を自信にして力強く決意した。



「それで、何が欲しいんだ?」


「え…」


逃す気のないジュリアスが、アレナの頬に長い指を添えたまま美しい顔を近づけて尋ねてくる。柔らかな表情だが、その目は狩人のそれだ。


(なっ…こんな展開聞いてないわよ!どうやったら曖昧な理由で外に行けるの!ヒロインはみんな口が上手いわけ?それがヒロインの必須条件なの!??)


軽くパニックになったアレナの向かう先はいつだって恋愛小説の中のヒロインだ。純粋な笑顔の下で相当強かなことをやってきたんだろと恨めしく思う気持ちが込み上げてくる。


(こういう時は…アレよアレ!天然なふりをして思い切りぼやかすのよ。)


美しい顔面に当てられながら、アレナは必死に笑顔を取り繕った。



「恥ずかしいのでその…秘密、ですわ。」


首を傾げて精一杯可愛らしく微笑む。



「秘密、か…」


俯いたジュリアスから漏れた声に深い悲しみが乗る。部屋の空気が一気に冷え込んだ。


(え、なんで………)


思わぬ反応にアレナの頭の中が真っ白になる。



「その秘密、話すまで部屋から出さないって言ったらどうする?」


それはそれは美しく優美な笑顔で微笑むジュリアス。一枚絵のような美しさに対して、物騒な発言があまりに合っていない。



「それは…」


彼の迫力にごくりと唾を飲み込むアレナ。怪しい光を放つ双眸に囚えられ、目を離すことが出来ない。胸の鼓動が速くなり、アイスブルーの瞳に飲み込まれそうになる。


その瞬間、空気が和らいだ。



「ふふ、冗談だ。時間と場所さえ事前に言ってくれれば問題ない。」


「…ありがとうございます。」

(助かったわ……………)


無事に許可をもらえて胸を撫で下ろしたアレナ。



それから数日、自分の邸だというのに交通手形を手にして邸を出たアレナは目立たない服を着て、鼻歌を歌いながら王都のメイン通りを闊歩していた。


その隣には不本意そうな顔をしたレネが歩く。彼女も今日は私服姿だ。



「ここよ。このお店は紳士物しか扱ってないの。勘違いされるには打って付けの場所だわ!」


思い通りにいってルンルン気分のアレナが店のドアを押す。



「こんな所に何の用かな?」

「……………っ!!?」


後ろから覗き込むようにして声をかけてきたのは、よく知るアイスブルーの瞳だった。


(ど、とど、どうしてここにジュリアス様がっ!?)


あわてふためくアレナだったが、こうなることを予想していたレネは一人息を吐く。周囲を見渡して危険人物がいないことを確認すると、静かに姿を消した。



「ここにアレナの欲しいものがあるのか?誰かへのプレゼントかな?この店には男物しか置いてないようだけど?」

「これはそのっ…」

「アレナの父君の誕生日はまだ先だし、うちの親戚には毎年決まった店の物を贈っている。君の従兄弟のレオナルドとその兄の誕生日はもう過ぎたな。それ以外に物を贈る間柄の男というと…邸の人間か?男は全員クビにするか。ミケルも仕方ない。」

「い、いえ!これは他でもないジュリアス様のためであって…」


(こんな物騒な話になるなんて聞いてないわよ!私はただ、物語のヒロインみたく嫉妬されたかっただけなのに!)


「ふぅん。」


アレナの必死な弁明に対し、全く信用していない声で相槌を打つジュリアス。無言のままアレナのことを見下ろすこと数秒、一転して柔らかく微笑んだ。


(あれ、あまり怒ってない…?)


いつもの雰囲気に戻ったジュリアスに、アレナの緊張が緩む。追及を逃れたい一心で、媚を売るようにこにこと微笑み返した。



「こんな所で立ち話もあれだな。」

「そうですわね。宜しければ一緒にカフェ…」

「続きは二人の寝室でしよう。」

「!??」

(す、すす、するってナニを!!?)


唐突に色っぽい声で寝室と言われててアレナの目が眩む。どうしても頭の中で色々と妄想が膨らんでしまい、勝手に顔が赤くなってくる。



「フッ…そんな強請るような顔をせずとも…ご褒美は話をした後にな。」

「………っ!!!」

(ななななっ!!ご、ご褒美って!!いわゆる上級者向けのアレですか!!?)


アレナの良からぬ妄想が捗る。

頭の中では、これまで読んできた大人向け恋愛小説のあんなシーンやこんなシーンが呼び起こされていた。ヒロインの乱れる姿と自分を重ねて身悶える。


その様子を見たジュリアスがクスッと意地悪な笑みをこぼした。



「それともお仕置きの方が良かったか?」

「おしおき…………………」

(いやああああっ!あんな美しいお顔で拘束具とか持っていたら死ぬうううっ!!!)


吐息混じりの色気漂う声で囁かれ、完全に変な想像をしてしまったアレナ。頭の中では、じゃらじゃらと大袈裟な装飾を付けたジュリアスが蔑んだ目を向けてくる。


美麗な顔面で紡がれる怪しい単語は破壊力があり過ぎた。



「明日は丸一日休みを取っているから、寝なくても問題ないな。」

「〜〜〜〜〜〜!!!」


アレナの妄想心を掻き立てる意味深な一言に、頭から湯気が立ちそうなほど全身が真っ赤に染まる。


(もうむり…)


美男子の放つ妖艶な言葉だけでもう足腰に力が入らず、ぽすんとジュリアスの胸板に身を預けるアレナ。



「いい口実が手に入ったな。」


笑みを噛み殺して呟いた声は、放心状態の彼女には届かない。


ジュリアスにお姫様抱っこで馬車に回収された後、そのまま寝室に直行されたことは言うまでもない。



お読み頂きありがとうございます!

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