041 エピローグ
ギーの体を追い出された後、オレは意識のないまま優しいまどろみの中にいた。
きっとこのまま意識がハッキリすることなく消滅していくのだろう。
もっと寒々しい終わりを覚悟していたけど、ちょっと救われた気持ちになった。
そんなことをよく回りもしない頭で考えている時だった。
「んご?」
まるで目が覚めるように意識が急速に覚醒していくのを感じる。
ついに終わりがきたのだろうか?
っていうか、今の「んご?」って何だよ?
だんだんと意識がハッキリとしていく。と同時に、ぼんやりとなにかが見え始めた。
薄暗いぼんやりとした視界の中央。人影のようなものがオレに向かって手を振っているように見えた。
「んごご……?」
ここはどこだ?
オレの魂はギーの体から追い出されて、消滅したんじゃなかったのか?
「……スケ、き……る? ……へん……し……」
なにかが聞こえた気がした。
耳を澄ますと、まるで周波数の合わないラジオをチューニングしているような雑音の中、かすれた声が聞こえた。
と思ったら、まるでなにかがピッタリと填まるような感覚と共に視界がクリアになる。
「んご!?」
リーズ!? なんでリーズが!?
状況を把握しようと視界を巡らせると、狭い部屋の中に所狭しと錬金術のための道具が置かれていた。どうやらここは『虎穴』のリーズの部屋のようだ。
でも、あれ? なんだか目線の高さがおかしいような……?
「またしゃべった! もー! 聞こえているの、ギスケ! 聞こえたら右手を上げないさい!」
リーズにぺちぺちと頭を叩かれて、オレは右手を上げる。
右手を上げる? 魂のオレに体などないはずだが……?
疑問に思って自分の右手を見ると、そこにはまるでハニワのような土でできた腕があった。
これがオレの腕……?
下を見ると、お腹の突き出た土の体が目に入る。その下には、木目の床があったのだが、なにかおかしい。
縮尺がおかしい。部屋も家具もリーズもとんでもなくデカいのだ。
なんだこれ? 夢か?
「やった! 聞こえているのね、ギスケ!」
巨大なリーズはオレをそっと持ち上げると、その胸の中にオレを抱きしめる。
だが、リーズに抱きしめられているというのにオレはリーズの柔らかさも温もりも感じることはなかった。まるでカメラを抱きしめたリーズの映像を見せられている気分だ。
「んごご……」
ちょっと残念に思いながら横目でもう一度部屋の中を確かめる。ここはリーズの部屋に間違いないようだ。部屋の大きさから、リーズが巨大になったわけでもなさそうである。
どんなファンタジーだよと思うが、どうやらオレの体は土で、その上とても小さいらしい。
でも、この土の体になんとなく見覚えがあるんだよなぁ。もしかしなくても、これって初級ゴーレムの体じゃないか?
なんでオレの体がゴーレムになってるんだろう?
「んご! んご!」
リーズに問いかけようとするが、オレの口からは意味のある言葉を紡げないようだ。ものすごくもどかしい!
「もー、暴れないで。ギスケがなにを知りたいかはわかってるわ」
「んご?」
「今から説明してあげるから、ね?」
そう言って、リーズはオレを元の場所に戻した。どうやらオレはリーズの机の上にいたらしい。
「まずは、あたしたちは無事にソウルイーターを倒せたわ。これが昨日のできごとよ」
「んご」
「ギスケが倒れた後、あたしたちはバローの街に戻ってきたの。昨日のうちにギーは目を覚ましたのよ」
そう言って、リーズが優しい手つきでオレの頭を撫でる。
「あなたのおかげでギーが無事に帰ってきたわ。本当にありがとう。あなたはギーの恩人よ」
本当に嬉しそうにはにかむリーズ。それを見るだけでリーズがギーのことをどう思っているかがわかるような気がして、オレは針で突いたようにちょっとだけ心が痛くなった。
「それでね、ここからが本題なんだけど……」
「んご」
そうだね。オレがどうしてこんな姿になっているのか、どうやってオレの魂をこのゴーレムに繋ぎ止めたのか。どうして……、どうして……、どうして……。疑問は尽きない。
「あなたがあたしの話をちゃんと聞かないのが悪いのよ? なんだか諦めているようだったけど、そんなのあたしが許さないわ! だって、あなたにはちゃんとお礼もできていないもの!」
「んご……」
ペシッとリーズからデコピンを喰らった。たしかに、これ以上仲良くなるのはお互い辛くなるかなと思ってリーズと話すことを避けていた部分はあるけど、それにしたって乱暴じゃない?
「それに、あなたには感謝してるけど、あたしの心に土足で踏み込んできたことをまだ許してないんですからね! あたしの心を奪った罪は重いのよ?」
「んご……!?」
それって……!?
見上げれば、リーズが頬を赤くして怒っているような顔をしていた。でも、オレには一番かわいいリーズの顔に見えた。
「まずはゴーレムじゃなくて、ちゃんとしたあなたの体が必要よね。大丈夫、作り方なら本に書いてあったから。問題は素材だけど、これがなかなかクセのある素材のオンパレードなのよ。でも安心して? 絶対にギスケの気に入る体を作ってあげるから。もー、こんなに尽くしてくれる人がいるなんて、ギスケったら幸せ者ね? まずはこの街のダンジョンでも手に入る素材から集めて行きましょう。その後は――――」
リーズは恥ずかしくなったのか、怒涛の勢いでこれからのプランなどを早口で語り始めたのだった。
一度は消滅まで覚悟した。でも、リーズが望んでくれるなら、オレはキミの傍にいたいよ。
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こんにちは(=゜ω゜)ノ
作者のくーねるでぶるです。
この物語はいったんここで幕を下ろさせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続きは書けたら書きます!
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