040 決着と別れ
「うおおおおおおおおおおお!」
「えいっ!」
「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
ギュスターヴによって身動きを封じられ、リーズの聖水改によって、もう体中ボロボロになったソウルイーター。
しかし、また黒い靄が発生した、あの靄の中でソウルイーターは完全回復しようとしているのだ。キリがないな。ゲームではソウルイーターの復活は三度と回数制限があったが、現実となったこの世界では何度復活ができるのだろう?
空恐ろしいものを感じる。
なんとかしないと……。
「サンダーランス!」
イザベルの魔法がバチバチと唸りをあげ、ソウルイーターの後ろ右脚を弾き飛ばした。
「だらあああああああああああああああああッ!」
そして、靄の中に突っ込んでいった人影が見えた。ジルだ。『護魂符』のおかげで魂を奪われないとはいえ、怖いことするなぁ。
「でやあッ! ヘビースラッシュ!」
スキルを発動し、ジルの操る大剣がソウルイーターの腰を破砕する。文字通り腰が砕けたソウルイーターの下肢が地面に落ち、ソウルイーターの体が滑り台のようになる。
今だ!
オレは意を決して走り出す。
ソウルイーターが無限の再生能力を持つなら、再生する前に殺しきるしかない。
オレはジルに続いて黒い靄の中へと侵入する。
途端にゾクゾクと寒気や怖気が背筋を登り、体が震えて顎がガクガクと鳴りそうになった。
だが、こんなところで引き返すわけにはいかない。
オレはソウルイーターの尻尾に乗り、そのままソウルイーターの背骨を駆け上がった。
目の前に見えるのは、ソウルイーターの太い首の骨だ。
今、ソウルイーターは黒い靄を発生させて回復している最中だ。つまり、それだけ弱っているということ。
この一撃で決める!
「であッ!」
ソウルイーターの太く大きな首の骨。その継ぎ目にダガーを突き立てる。
グッと体重をかけてダガーを押し込み、そしてダガーを勢いよく捻った。
ブチブチとなにかを千切るような感覚が手に伝わってきた。
ソウルイーターが嫌がるように首を大きく振る。飛ばされてしまいそうだ。だが、オレはその勢いも利用して最後に突き立てたダガーを蹴り上げた。
オレはダガーを蹴り上げた拍子にソウルイーターの足元に落ちてしまう。
その時、カポッと間抜けな音が響いて、ついにソウルイーターの首が外れた。
その瞬間、ソウルイーターを構成していた骨がバラバラと重力によって脱落するように崩れていく。その胴体部分にあった白い靄も晴れていく。
白い靄によって囚われていたなにかキラキラしたものが街の方に飛んでいくのが見えた気がした。
もしかしたら、あれが人の魂のだったのかもしれない。
オレも先ほどからなにか体に違和感を感じていた。
まるで体から追い出されるような圧迫感。おそらく、この体にギーの魂が帰ってきたのだろう。
リーズが言っていた。一つの体には一つの魂しか入れない。オレの魂よりも体の持ち主であるギーの魂の方が体の親和性が高いに決まっている。
オレはもうじき体を追い出されて、そのまま消滅していくのだろう。
「ギスケ!」
「リーズ……」
倒れたまま振り向けば、リーズがいた。
「やったのよね? あたしたち、勝ったのよね?」
「ああ、勝ったよ。ギーの魂も無事だ」
「やった!」
オレはよっこいしょっと立ち上がると、リーズを正面から見た。リーズもオレの真剣な雰囲気に気が付いたのか、神妙な顔をしてオレを見上げてくる。
「一つの体に入れる魂は一つだけ。この体はギーに返すよ」
「ギスケはどうするの?」
「さあ、どうなるんだろうね。オレにもわからない。でも、短い間だったけど、リーズと一緒にいられて楽しかったよ。オレの人生で一番輝いている時間だった」
人生の最推しのリーズ。彼女と会話することができる。同じ空気を吸い、同じものを食べ、同じ時を過ごした。こんなの奇跡だ。もう思い残すことはない。
「だったら……もっとあたしたちと一緒に――――」
「無理だよ。オレには体がないからね」
「それなら――――」
「ああ、リーズ。オレの大切な人。キミにはこれからいくつも試練が待ち受けているけど、キミならきっと超えられると信じている。だから、がんばって」
できればオレのことを覚えていて欲しいけど、まぁ、そこまではさすがに望み過ぎだよね。
「だから――――」
「ごめんよ、リーズ。もう時間みたいだ。ギーと仲良くね」
「あ、ちょっと!」
もう堪えられないくらいオレの魂を外に出そうとする力が強くなっていた。
「じゃあね、リーズ」
それだけ言うと、オレはもう圧力には逆らわず、体を明け渡した。
きっとこの体はギーのものとなり、これからはリーズとギーの物語が始まるのだろう。
リーズに伝えたかったことは、すべて手紙にしたためてきた。
伝えていないのは……オレの恋心だけ。
でも、これから消滅する奴に告白されたってリーズも困ってしまうだけだろう。仲間思いで、情の深い子だから。
オレのことで気に病むこともあるかもしれないが、どうかまっすぐ進んでほしい。どうか、ギーとお幸せに。
あぁ……。なんだか眠たくなってきたな。おそらく、このまま意識を手放したら、二度と目を覚まさないのだろう。
怖い気持ちはある。だが、これもオレの選んだ選択だ。
それに、最期に痛い思いをしなくていいだけ幸せな終わりなのかもしれない。
オレはそう自分を納得させると、自ら意識を手放した。
◇
「んご?」
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