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003 メイン武器の調達

「いやぁ、大量だわ!」


 夕方。オレはジャラジャラと重たい革袋を鳴らしながら街の大通りを歩く。


 オレがやったこと。それは、賭博場でおこなわれている目玉イベント、なんでもありの格闘技でどちらの選手が勝つのか賭けたのだ。


 最初こそオレの頭の中にあるゲーム情報を信じきれなくて少額だけ賭けたが、一度賭けに勝ってからは、全額いっちゃったよね。その結果が、重たい革袋だ。もう笑いが止まらない。


 ゲームでの賭博場は、簡単に資金を増やすことができるいわゆる救済措置として登場している。格闘技での勝敗はランダムではなく、決まっているのだ。


 オレは、ゲーム開始初日の賭け試合の勝敗を暗記していた。ゲームでの効率プレイでは、初日に賭博場に行くのが鉄板なのだ。何度も周回プレイをするうちに、オレは初日の勝敗を覚えてしまっていた。


 それにしても、これでオレの記憶しているゲーム知識がこの世界でも通用することが証明されたな。これからもゲーム知識をガツガツ使って、リーズの役に立ちたいところだ。


 そして、いつまでもリーズに頼りきりというのもよくない。なにかのきっかけでリーズとは袂を分かつ可能性もないわけじゃないし、オレの目標はリーズの隣に立つのに相応しい男だ。これからリーズが成長していくのは確実。ならば、オレだって成長していかなくてはいけない。


 今回の儲けは、申し訳ないが少しだけ自分に投資させてもらおう。リーズの成長は予想がつくけど、ゲームでは仲間にならなかったギーの能力がよくわからないところがあるからな。まずは自分の能力チェックだ。そして、今の状態で最適の装備や戦法を考えていく。


 まぁ、もう見当は付いてるんだけどね。


「いらっしゃいませー」


 オレは敢えて大通りの店ではなく、街の外れの方にあるこぢんまりとした武器屋に入った。ギーの知識が、大通りの店は質はいいが値段も張ると教えてくれたのだ。


 ゲームの時よりも、だいぶ街が複雑になっている。こういった部分は、ゲームの知識よりもギーの記憶の方が役に立つな。


「長弓を探しているんだが」


 そう。これこそがオレの出した最適解。


 弓の命中率や会心の一撃の確率は、ステータスの運に大きく依存しているのだ。


 ギフト【幸運】で、ステータスの運の値が強化されているオレにとって、まさに理想の武器なのである。


 そして、短弓ではなく長弓を選ぶのは、連射性ではなく一撃の威力を求めてのことだ。連射速度がいくら早くてもダメージが0では意味が無いからね。今は平気だろうが、ダンジョンの奥に進めば進むほど、短弓では辛くなるだろう。なら、最初から長弓を運用した方がいい。


 【幸運】の強さはそれだけじゃないのだが、まぁ、今はこんなところだろう。


「長弓ですね。こちらになります」


 その後、店員さんに軽く弓の手ほどきを受けて、オレはロングボウと矢を十本、そして矢筒を買った。


 そして、忘れてはならないオレのメイン武器も買い換える。オレには【双剣】のギフトもあるからね。今まで青銅製のダガーと棍棒だったが、アイアンダガー二本持ちに替えた。これでわずかだが攻撃力も上がるだろう。


 そんな感じで武器を一新したオレは、常宿にしている『虎穴』へと帰ってきた。ここのオーナーは、孤児院に出資してくれるいい人で、孤児にも優しいのだ。成人して孤児院を出た者は、真っ先にお世話になる安宿である。


「ただいまー」


 いつものように『虎穴』へ入ると、食堂になっている一階にリーズの姿があった。椅子に座って、両手でコップを持って、なんだか思案顔だ。ちょっとアンニュイなリーズもかわいらしい。


「あ、ギー」

「リーズ、起きてたのか。どうしたんだ? 飯はまだだろ?」

「ちょっと考え事をね……」


 オレはリーズの座っている向かいのテーブル席に座った。


「そうだ。リーズに金を返すよ」

「え? どうしてよ?」

「ちょっと臨時収入があってな」

「えっ!?」


 驚くリーズの前にオレは四分の一くらい減ってしまった革袋を置いた。


「こんなにたくさん……。あっ! 弓! その弓どうしたのよ!?」


 リーズがオレが背負っていた弓を見つけると、椅子から立ち上がってテーブルに身を乗り出しながら弓を指差した。


「どうしたって、買ったんだよ」

「買った……。まさかッ⁉」


 リーズがひどく驚いた表情を作ってオレを正面から見つめる。その顔は絶望に染まっていた。いったいどうしたんだろう?


「まさか、ギー。あなたまさか、あたし以外の人にお金を借りたんじゃ!?」

「え? 借りてないよ?」

「嘘! じゃあ、どうやってそんな大金を手に入れたのよ!?」

「賭博場だよ。賭けに勝ったんだ」

「とばく、じょう……?」

「うん。賭博場」

「え? 賭け事をしてきたの!?」

「そうなる」

「あたしの貸したお金で……?」

「……そうなるな」

「もー! なんでそんな危ないことするのよ! 負けたらお金なくなっちゃうのよ!?」

「今日はいける気がしたんだ」

「ダメな人はみんなそう言うわ!」

「まぁまぁ、勝ったしいいじゃないか」

「そういう話じゃ……。もう賭け事なんてしちゃダメよ? 今日は勝てたかもしれまないけど、賭け事はいつか身を滅ぼすんだから。あたしとの約束よ?」

「わかったよ」


 まぁ、もう賭け事をすることはないだろうしな。オレが覚えているのは、初日の勝敗だけなのだ。

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― 新着の感想 ―
女主人公で錬金術師。 某アトリエシリーズが頭に浮かびました。 借りたお金で賭博場。 これだけ読むと駄目人間臭が……。 でも試合内容を全て覚えていたのか。 これで当座のお金は困りそうにないですね。
ちょっと擁護できんは
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