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ポラリスの多世界  作者: 一
特異大魔法世界編
63/362

#61 勇者という光


衝撃と光が収まったのはいつの瞬間だろうか。

気がついた頃には、ニノマエが完全に地に伏していた。


そして、勇者が持っていた剣は折れていた。


まさかの大番狂わせである。あの勇者ニノマエが予選敗退するという結果になって観戦会場は大騒ぎになっていた。しかも、勇者を負かしたのは無名の剣士である。


下馬評では、勇者ニノマエは優勝候補の一人に数えられていた。


偶然立ち寄ったこの武道大会で、一稼ぎする筈が惨敗を喫していた。勇者とは油断しない者であり、勇者とは困難に自他共に挑む者である。それを地で征く勇者ニノマエは油断も無く、全力で挑んで敗北した。


負かした相手の名前はアエテル・ニタース、無名の剣士だ。



「勇者ニノマエ、もう立てないのか?」


「ぐッ..」


体が重たい、全身に痛みと切られた傷跡が酷く熱を持っている。

治癒の加護が追いついていない、自動回復魔法も追いついていない。体の外も中もボロボロだ。


「どうした?勇者、俺をもっと楽しませろ!」


「お前は一体何者なんだ?」


「言ったろ、俺はアエテル・ニタース。さぁ立て!」


「意識が飛びそうだ...」


本当に気を緩めると意識が飛びそうだ。

こんな気分になるのはいつ振りだろうか、魔王サタナエルと戦ったとき以来か?龍王ドラグルフを討伐したときか?彼奴らもかなりの化け物だったが、今回は桁が違う異次元の強さだ。過去の魔王、龍種、魔人、魔法使い、魔物、どれにも属さない出鱈目な強さだ。


まるで、ゲームで言うとチート級だ。


アレクにランダにどう説明するかな。

これは完全に僕の完敗だ。伝説の剣であるスカーハハも折れた。

魔法での攻撃も全て防がれ、残存魔力量もゼロだ。


愛剣のスカーハハにも申し訳ない。

僕の未熟さ故。


だが、俺は勇者!


「こんなところで負けてたまる訳にはいかない!」


全身から血が吹き出る感覚がする。鎧の隙間からも傷跡からも血が噴水のように吹き出して熱を持っている。治癒魔法が追いつかないなんてことは一度も無かったのに、こいつの攻撃の威力の高さが異常なんだ。


「そうだ!勇者ァ!!」


「君が何故僕に拘るかは知らない、君の力の根源は異常だ。この大会に漂う不穏な空気を出しているのは君の一味だろ?」


「・・・」


「図星か?僕はね、伊達に勇者を背負っている訳では無いんだよ。悪を嗅ぎつけるのは得意でね」


「だからどうした?」


「だから、君に最後に一泡吹かせようと思う」


「・・・」


最後の力だ。過去に負けたことなんて幾らでもある。

負けるということは人生の敗北じゃない。負けるということはまだ僕には伸び代があるということを知れた幸運な日だ。


そして、この世界に転移して勇者になって泥水を啜るようなことも苦難も過去幾度もあった。そして、今この瞬間も僕は成長する機会を与えられている。これを幸運と呼ばずになんて呼ぶ。


「行くぞ、これが最後の力だ」


「!!」


勇者から強大な聖なる力が膨大な魔力と力を覇気を纏って吹き出している。その覇気はとても濃く深く幾千も死線を越えた先にあるであろう勇者のみに与えられたギフト。


折れたスカーハハの柄を握り絞める。


折れた筈のスカーハハの先には魔力と聖なる力で具現化した鋒が顕現した。


「来い!!勇者ァァア!!!」


「僕はこの試合に負けても君らの悪事をきっと暴いて見せる!!」


極聖光ウル


虚崩ヴェラ


互いの剣が交合う。互いの衝撃は結界を切り裂き大地を切り裂き大気を切り裂いた。光と光が打つかり光は消えた。



そして、勇者は敗れた。




ギルド:メアリヘイル

ランク:勇者


一十日にのまえとおか 予選敗退



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