#44 秒針が動き始める
「エノカ様、会議お疲れ様でした」
「ああ、スイスイありがとう。これで各国の大魔法使いは連携するだろう。次は同じ轍を踏まないさ」
「私もそう思います!」
「なんだ、珍しくスイスイなんか力入っているじゃないか」
「あの敵はとても強敵でした。次は同じ轍を踏まなくても、もしかしたらと思うと怖いと思うときがあるんです」
「そう、心配ばかりしても時間の無駄さ。なるように成る。特に特異界においてはな」
珍しくスイスイが心配していることはパルム・エノカにとってそうそう見ることが無い光景だった。先日の戦闘でそれほど何かを感じたとということか。
私も心配掛けないように気を引き締めなければな。
「おーい、パルム!」
武皇の大魔法使いのシンデレラ・リリアンシュナーベルがこちらに近づいてくる。何の用だろう。珍しい。そういえば今日は珍しいことが少し多いな。
「リリアンシュナーベル、どうした?何かようか?」
「リリアンで良いと昔から言ってるだろう。まぁいい。先程の会議を労おうと思ってな。急だが、明日うちの国を挙げて大武道大会を行うのだがな。そこに観戦しに来ないか?」
「リリアンシュナーベルの国の?ああ、そういえばもうそんな時期か早いな。明日か特に行く用事も無いなー」
「あははは、やはりあまり乗り気じゃないな。今回の大武道大会は大型ルーキーがいるらしいぞ」
「興味ないな」
「まぁ、話は最後まで聞けよな。その大型ルーキーはあの魔神王を1時間足らずで倒したそうだ」
「魔神王?ああ、創世級では下位だが、禁書魔法を使う魔神だったな。それをルーキーで1時間で達成とは凄いな」
「ああ、おかげで我が国ではこの話題で持ちきりだ」
「だが、興味無いな。禁書図書室で引き籠もりたいさ」
「それに、可憐な少女2人で達成したそうだ。しかも1人の目は虹色の瞳を持つらしい。かなり珍しいというか、虹色の目の種族など聞いたことがなくてな。それも話題の一つになってる」
「リリアン!!今なんて言った??!!」
「え?ああ、少女2人がな」
「その後だ!」
「虹色の目をした少女がな。もう1人は赤髪に女の子らしい」
「行く」
「え?」
「その大会へ私も行こうじゃないか。スイスイ支度の準備を」
「あ、はい」
「お。おう。急に乗り気になってきたじゃないか。気分屋め、国を挙げて迎えるぞ。パルム!」
「いや、風が変わってな。明日だったな」
虹色の目。これは天啓だ。ようやく来たか。
何故、武道大会なぞに出ているかは謎だが、実力を測るには丁度いい。リリアンシュナーベルのところの武道大会は伝統があり、勇者クラスの有名と実力を兼ね備えた者が集う場所。
虹色の目をした少女か。
とても楽しみだ。とても。
「パルム、一緒に行くなら私と来るか?」
「ああ、甘えさせてもらおう」
「今年の出場者リストだ」
「先に見てもいいのか?」
「ああ、私たちの仲じゃないか。気にするな」
ざっと目を通す。
ほう、あの剣聖に魔導仙人、ヒヒイロカネ級の冒険者の砂漠のシュナも出場するのか。他にもクリスタル級以上の冒険者も多い。
これは見応えがありそうだな。
「あ、これがその例の2人だ。我が国で三大ギルドに入る白い月からの代表選出だ。ポラリス・ステラマリスとリノ・ノノ」
「ポラリス・ステラマリスとリノ・ノノか。2人出るのか?」
「いや、まだこのリストは公式のものではなくてな。これはただの候補者、検討者リストだ。だが、白い月からは魔神王の一件で彼女ら2人のどちらかが出る予定だ」
「なるほどな」
「恐らく、ポラリス・ステラマリスという女性が出るだろう。虹の目に星色の髪の毛はとても美しいと噂に聞いたぞ」
「それはそれは」
だが、リリアンシュナーベルの言う通り、ポラリス・ステラマリスが出ることは明白だろう。この機会に彼女の実力を知ることが出来るとは。まさに天啓だな。
「警備のほうは大丈夫なんだろうな」
「心配するな。今回の事件の一件もある。そこは心配しなくても良い。私も観戦しながら横槍が入らないように警戒はするし、結界も国全域で発動させる予定だ。既に結界は幾つか配置済みだ」
「相変わらず仕事が早いようで」
「あははは!国を挙げての祭りだからな!パルムも楽しめ!」
「言葉に甘えて、そうしよう」
大きな宿命がカチカチと音を立てて世界の秒針を進めたような気がした。




