#42 金獅子亭で乾杯を!
「お姉さま、ここが金獅子亭でしょうか」
「うん、宙王さんの案内通りに来たから間違いないと思うよ」
「なんだか、想像よりも」
「うん、お城というか宮殿みたいな作りだね」
「これ、宿泊料ほんとにサービスしてくれるんですかね」
「確かに、いかにも高級そうなつくりだから、手付金から差し引かれたらたまったもんじゃない」
これは、あれか。絶対、大会で上位に食い込んでギルド名の名を売れということのプレッシャーなのか。
整えられた広い庭に、舗装された綺麗な石畳造り。豪華な装飾が施された外装。見るからに入る前から感じる高級臭。
「覚悟を決めねばならないようだ」
「お姉さま、私も覚悟を決めました」
二人はぎこちなく足を金獅子亭に向けて歩く。
舗装された石畳は凹凸も無く、まるで現代でいう大理石を丁寧に研磨して磨き上げられた道路というべきか。植木も綺麗な形で常日頃手を加えられていることが素人目でも良くわかる。
それに、ゴミ一つ落ちていない。庭にも石畳にも。
これも魔法による恩恵なのだろうか。
僕らはこの世界の魔法については全くの知識が無い。それに、僕自身もよくわかっていない。体感で何日経過しただろうか。怒濤の毎日だったけれど、そんなに日は経っていない筈だ。
だから余計に濃く感じるんだろうな、と思う。
「行くよ、リノ」
「はい」
金と白を基調とした大きな玄関がスムーズに音を立てずに開いていく。なんとう滑らかさ。生前の現代でも目を見張る造りだと感心する。
扉を開けると、多くの品の良さそうな客が行き交っていた。
「エントランスを見るだけでも、品が良さそうな人がいっぱいだ」
「ええ、貴族や商人や接待とかで使用するような宿なんでしょうね」
なんという場違いなところに来てしまったのだろうか。
そんなことよりも、早くチェックインしてリノの晩酌しよう。
今日は戦闘でもギルド長でも精神的になんだか疲れたから、気晴らしが早くしたいものだ。
「お姉さま、あちらに受付がありますよ」
「お、ありがとう。それじゃ、チェックインしてくるから荷物を見てて」
「了解です」
リノにはエントランスのロビーで待ってもらうことにした。
ふかふかの絨毯にふかふかのソファーだ。リノには少し待ってもらおう。受付カウンターへ向かった。
「はい、お客様。ご用件をお伺い致します」
「ええと、チェックインをお願いします。ポラリスです」
「ポラリス様ですね、少々お待ちください」
慣れた流れるような手つきで台帳を追っていく。
「ポラリス・ステラマリス様とリノ・ノノ様ですね。白い月より予約を承っております。期間は一週間お取りしております。必要であれば延長も可能です。つきましては滞在費用はギルドより既にお支払い済みです。お部屋はスウィートルームをご用意されておりますので、早速ご案内致しますのでこちらへ」
「あ、ありがとうございます」
スウィートだって?!生前にも泊まったことが無い金持ちしか泊まれないあのスウィートに??!なんという幸せなことか。しかも、ギルドが前払いしているとか。なんというプレッシャー。
「リノ、部屋を案内してくれるって行こうか」
「はい!」
先程露天で買い出しした袋を二人で分担して部屋に持ち込んだ。
ボーイさんらしき人が手伝おうかと声を掛けてくださったが、ボーイさんに持たせる程の荷物でも無いので、二人で持った。
「こちらの転送魔法陣へお入りください」
「「はい」」
転送魔法陣に入ると一瞬にして、最上階のスウィートフロアへ到着した。
「こちらの客室がポラリス様のお部屋となります」
「5002号室ですね。ありがとうございます」
「ルームサービスが必要でしたら、水晶通信にてお呼びくださいませ。では失礼致します」
「ありがとうございます」
部屋を開けると広い部屋が広がっていた。
何LDKだ?
大家族でも普通に住めそうな広い部屋が広がっていた。
「お姉さま、スゴイ部屋ですね」
「本当に、ギルドのプレッシャーが凄く感じるけれども、それよりも今日は精神的にとても疲れたから考えるの後にしよう。リノ呑もうか」
「はいー♪」
「あ、飲み物はっと足りるかな。そういえばルームサービスがあるって言ってたな。試してみるか」
部屋のいたる所に水晶通信が浮かんでいる。
そんなに大きくはなく、インテリアとしても機能してそうな感じだ。ふむふむ。
手を触れてみるか。
「光った!」
[はい、ポラリス様ご用件をお伺い致します]
「あの、お酒をいくつか頼めますか?」
[かしこまりました。リストを提示しますのでお飲みになりたい項目に触れてご注文ください]
「はい」
水晶通信の空間に大きくリストが表示された。
エールにエイスキーに、これはカクテル的なやつか?
知らない名前のお酒しかなかったので、適当にタッチして注文した。
[ご注文承りました。間もなく到着します。また何かありましたら遠慮無くご連絡ください]
「間もなく?」
テーブルが光ったと思ったら、先程注文した飲み物がたくさん並んでいる。しかもとても冷えている。スゴイ!
「お姉さま、さぁ呑みましょう」
「ああ、今日は本当にお疲れ様」
「「かんぱーい!」」
窓から入ってくる夜風がとても居心地が良い気持ちいい風だった。
おかげで、お酒も美味しく感じられてリノの世間話でとても盛り上がったことは言うまでも無い。




