#28 虹の来訪とギルド
円卓会議が白熱している頃、首都の神殿から南西に位置するラグナ大森林内では不穏な影たちが動き始めようとしていた。
「シキがやられたって本当?」
「ああ、パルム・エノカっていう魔法使いの女にやられたらしいぞ。おかげで、魔法特異界の魔法の無力化と無効化は失敗に終わったかんじ」
「やはり思ったように簡単にはいかないってことね。首都では大魔法使いが集まって何かしら企んでいるのは容易に想像につくが、我々を倒す連合を組むってところが次の手って感じだよね」
「私らが攻めたほうが、早かったんじゃないの?シキじゃ最初から倒される可能性があったわけだし」
「いや、誰が向かってもそう簡単にはいかないさ。僕らの敵はこの世界における頂きだからね」
「ふーん、相変わらず慎重だね。そういえば、あの戦國さんも神煌国のジグラット内で死んだらしいよ」
「おいおい、マジかよ。嘘だろ。戦國さんやられたのか。ショックだなぁ、そうしたら上のやつら、いよいよ本腰いれるんじゃね」
「まぁ、僕らもね。さて、早速行きますか。サボっていると僕らも痛い目に合いますしね」
不穏な影が大魔法使いが大連合を組むと決めた初日に蠢き始めた者たちが巡り合わせか、運命か、宿命がうねりを上げて動き始めた。
※
シュパン!!!
一瞬の光とともに、二人の人物が大魔法特異界へ到着した。
「お姉さま、ここどこですかね?」
「さぁ、だけれどもなんだか空気が違うね」
「魔法使いの世界だからでしょうかね」
「んー多分。どう思う全宙さん」
《観測掌握完了致しました。魔力と呼ばれる魔法の源の魔気が空気中に豊富に含まれているせいだと思われます。主特異界とは違った次元の法則が働いていることが確認できました》
「ふむふむ、僕らって魔法使えるのかな」
《主、可能性はゼロでは無いですが、習得は可能だと思われます。習得にエネルギーを割きますか?》
「んー、今はいいや、全宙さん変なこと聞いてごめんね」
《とんでもないです。主、この魔法使いがいる世界に来たなら誰しもきっと思うことだと思いますよ》
「う、う、全宙さん、ありがとう、っぐすぐす」
「お姉さま、パルム・エノカって女性の方を探さねばなりませんね」
「そうだねー、取り合えず近くの街まで行ってみるかな」
《主、観測完了致しました。周辺に複数の街から都市まで観測できました。パルム・エノカという該当する女性は発見できませんでした》
「OK、全宙、リノそれじゃ近くの都市までとりあえず行ってみようか。何か情報が得られるかも知れないし、何もしないよりはいいでしょう」
「はい、お姉さま!」
《主、それでは近くで一番規模の大きい魔法の大都市へ跳躍します》
シュパン!
《到着しました》
「早い!本当に刹那だね」
「お姉さま、見てください」
「おお、でかい」
巨大な城壁が目の前に聳え立っていた。流石は全宙さん、いきなり不法入国しないように、門の前に到着させる気遣いとマナー痛み入ります。しみじみ。
さて、どうするかなー
取り合えず入ってみるか。
神煌国以外の異国の地で初めて入る大都市だ。ドキドキする。
門には衛兵が複数立っていた。
そういえば、入国というか都市に入るために身分証明書みたいのは必要なのだろうか。提示を求められたら流石に無いしなぁ。ッとりあえず、旅人という設定にしよう。
「あの、旅の者で都市に入りたいんですが」
「ん?女性二人旅の旅人さんですか。身分証とかはありますか?」
「いいえ、身分証明書が無いんです。どこかで発行できる場所はありませんか」
「なるほど、旅の初心者さんですね。魔水晶で判定次第にはなりますが、新規で発行することは可能ですよ。ちょっとバタバタしてますが、あちらで魔水晶が判定してくれますので、衛兵の指示に従ってください」
衛兵は慣れた感じで説明してくれた。今回、旅人という設定にしたが、僕らみたいなケースは多いのだろう。思った以上に丁寧に説明にしてくれた。
一メートルぐらいだろうか。
魔水晶と呼ばれる宝石みたいな石が浮かんでいた。
「こちらで判定します。一名ずつ前に出て手を触れてください。魔力は注入しなくて結構です」
「はい」
魔水晶に手を触れると、青く光った。
「お連れ様も続いてどうぞ」
リノも同様に手を魔水晶に触れると青く光った。
「犯罪歴等、問題は無さそうですね。それでは奥にて新規で身分証明書を発行してもらってください。発効後は別の国でも共通して利用することができます。紛失した際は再度魔水晶の判定が必要になります。その際は料金が発生致しますのでご注意ください」
「「わかりました」」
よし、奥に進むと身分証明書の発行所があった。リノと僕の分の身分証明書はあっという間に作成できた。
革張りのパスポートのような感じだ。無くさないように気を付けなくては。
発行所を後にすると、再度門で入国手続きをした。
「無事に入国審査を通過しましたね。ご苦労様でした。それではどうぞ、武煌の大魔法使い様が治める国、武装国家ギルヴァートへ」
「衛兵さん、ありがとうございました」
「お姉さま、リノ、ドキドキしました。アンドロイドなので魔水晶の判定に影響でるんじゃないかって」
「僕も人間って人種じゃないからなぁ、僕も内心ドキドキだったよ。とりあえず良かった。それじゃ情報収集と行きますか」
武装都市ギルヴァート、とても賑やかな大都市だ。箒に乗って飛び交う魔法使い、出店では魔法道具の販売、行き交う大量の人々、行商人、細かな光でさえも、生活の音も魔法で満たされているようなそんな気持ちになった。
「さて、お金も無いし、情報の宛も無い。この世界の全域を全宙さんで観測してもらったほうが早いか。全宙さん、引き続きパルム・エノカについて捜索をお願い」
《主、かしこまりました。それでは範囲を拡大してこの星全域を観測対象にし、捜索を開始致します》
「よろしく頼むよ。さて、僕らはこの都市で何が出来るか。とりあえず王がいる宮殿に行ってみるか」
「お姉さま、そうですね。確かプロエ様からの情報だと、シンデレラ・リリアンシュナーベルという武皇の大魔法使いが王位でいるだとか。この世界が創られた頃からの存在みたいです」
「なるほどね、この世界も長命が多い世界なのか。もう驚かないけどね。数億年、数百億年の時空を過ごしている大魔法使い、一度お会いしたいものだね」
王がいるであろう宮殿は都市の中心にある。全宙さんの観測で都市の構造は全て把握済みだ。
ただ、都市の中心に近づくほど強固な防壁魔法が施されており、観測にノイズが入ると全宙さんから報告を受けたが、報告を受けた時点で既に調整済みで問題無いとのことだった。
全宙さん安定して凄い。
少し、宮殿に行く道中、観光では無いけれども肉眼で観光してみたい気分になった。
行き交う人、声、ラノベや漫画、アニメでしか見たことが無い魔法の数々。全てが新鮮で刺激的だった。それに何よりも綺麗だった。
「これが魔法の世界か」
「お姉さま、本当にこの都市は素敵な場所ですね。あ、あの王の宮殿が見えてきましたよ」
とても多く天まで聳える宮殿が見えてきた。白い宮殿だ。流線形の未来的なデザインをしている。
さて、リノと一緒に散策しているとあっという間に宮殿の門へと到着してしまった。
以外に早く着いてしまったな。
「ここまで結構楽しかったですからね」
リノもとても楽しそうだった。そういえば、リノにとっても別次元の特異界は初めてだし、好奇心がお互い刺激された結果だろう。
「さて、どうやって宮殿内に入るかだね。王と面会出来ればいいのだろうけれども」
《主、宮殿内および星全域を観測完了しました。宮殿内に王はいません。魔法皇国首都ランティアで観測できました。パルム・エノカという人物もそこにいました》
「え?!全宙さん優秀過ぎでしょう。とても助かるけれども」
「お姉さま、どうされたんです?」
「ここまで来ちゃったけど、会うべき人物の場所はここから南東の大都市にいるみたい」
「それは手間が省けましたね!」
「確かにとても手間が省けたね」
確かに、身分証明書も旅人だし、宮殿内にそうそうと入れるわけでは無いし、入れたとしても王が不在なら待つ時間がもったいないし、丁度良かったのかも知れない。
「それじゃ、一回都市の外に出てから移動しようか。ここだと周囲の目が在り過ぎるしね」
「そうですね。リノも賛成です」
お金があれば、何か記念にお土産の一つでも手に入れたいところだが、残念ながら無一文だからどうしようもない。とほほ。
「お姉さま、どうかされましたか」
「う、うんん、大丈夫。ちょっと観光したいなって思っただけ。だけどお金無いし」
「確かに、リノたちは今お金がありませんね。何かと必要になるかも知れませんし、何か換金できるモノか、ギルドみたいなところで登録してクエストをクリアするとかしてみますか?どうせ、一日や数日どうってことは無いと思いますよ。プロエ様からの報告書でも滞在については自由とのことですし。時間の概念というか流れが主特異界とは違っているので多少の誤差は問題無いのでしょう」
「なんと!!!??それじゃ早速お金を調達しに行こう!」
「なんだか、お姉さま嬉しそうでリノもとても嬉しいです」
「当たり前だよ、魔法の世界にせっかくきたからには少しはお土産が欲しいなって、それに今日は一日動いたから最後にギルドで登録して宿代ぐらい稼いで休憩するとしようよ」
「ふふふ、お姉さま楽しそう。わかりました」
《主の希望に沿ってギルドの場所を観測完了致しました。この都市で一番有名なギルドを観測できましたので、ご案内致します》
「ああ、全宙よろしく頼む!」
僕はとても嬉しかった。だって生まれて初めてのギルド登録にクエストが待っているのだから。ようやく、異世界モノの始まりって感じがするのはきっと僕だけだろう。
息抜きぐらい必要さ。
期待に胸を膨らませながら、この都市で一番有名で大きな規模を誇るギルドへと向かうことになった。




