#21 千年会議
特異大魔法界ゼーマ・デウス、首都ランティアにある大神殿レルベアの上層部である大元老魔法院では、特異界の中央特異界である神煌星エマリリスのジグラットと交信できないことに騒然となり、議題に上がり多重世界通信を試みるも幾度も失敗をしたという報告を煮詰め議論していた。
何かしらの異変が起きていることは明らかであった。他の特異界もへのコンタクトも同様である。同時にこの特異界以外の何者かの侵攻があったことも報告されて頭を抱えていた。
「エノカはおらんか、エノカはおらんか。千年会議を終えたばかりだというのに、あやつはどこで何をやっているのか」
元老員のシュシュ・フォン・アルバインはパルム・エノカの行方の宛を思索して声を上げていた。
「恐らく魔導図書室ではないでしょうか。新作の禁書物が入荷したとのことでしたので」
元老院秘書のアルクセは耳打ちした。元老員のシュシュ・フォン・アルバインとは付き合いが長い。数千年というところだろうか、元老院秘書となっては随分長い時を共に過ごしてきた元老員である。
「アルクセ、そうだな。パルム・エノカは魔導図書室か、急を要する、私の執務室に来させるように申し伝えよ」
「はい」
アルクセは魔導図書室へ行くことになった。魔導図書室は禁書図書室と通称で呼ばれており,、魔法省の許可が無ければ立ち入ることすら出来ない場所だが、例外はある。元老員と秘書クラスであれば、申請と認証程度で入館が許される。
それ以外は1つの例外の除いて入館と閲覧することは出来ない。貴族、魔法連盟、一般人などは正規の複雑な手続きと理由と面談が通ってようやく入館有無の審査が始まるといった感じだ。およそ数カ月から数年または何百年とかかる場合がある。要するに入館には
「パルム・エノカ様は魔導図書室か、神殿からだと転移魔法が早いが、魔法省に寄らなければ」
アルクセは足に力を込めて早めに行動した。魔導図書室までの距離はかなりある。しかも、略式とはいえ魔法省へ赴く必要があり、合わせてもし手続き不要だとしても、いかなる大魔法を駆使しようとも魔導図書室への直接転移は障壁魔法で弾き返されてしまう。
この大魔法特異界で唯一手続き無しで入れることが出来るのは、世界一の大魔法使いのパルム・エノカ様のみなのだ。何故、あの方だけ手続き無しなのか知らない。この世界に3人しかいない魔導の始祖だからなのかも知れないな。と、重いながら転移魔法で魔法省へ向かった。
◇◇◇
「おおおお!!これは!!新作の本じゃないかー!!」
魔導図書室に入荷した禁書物を読み始めて大興奮中の彼女がパルム・エノカその人である。丸眼鏡がキラリと輝く。
パルム・エノカは今日も何かと忙しい。世界一の大魔法使いとは周りが呼んでるだけで、自分では肩書きなんて全く興味がない。興味があるのは新たな新作魔法と創作魔法のみである。日々飽きる事無く、魔法を探求し、研究し、開発していく。そして、世界中を飛び回っているのだ。全ては新作魔法のためだけに。まるで、魔法そのもののような雰囲気を周囲からは持たれている。
「もう、エノカ様もう少しお静かに」
精神生命精霊体であるスイスイは大興奮のエノカを落ち着かせようと必死だった。この人はいつも好奇心全開で心の声が口から出るので、静かだったことは一度たりとも無い。よく、小姑だと揶揄されることもエノカ様から言われることもあるが、お目付け役としてはしっかりと見張っていないと、ふとどこかへ行ってしまうからだ。私はもうエノカ様とは長い。エノカ様に創造してもらってから幾年万年の月日を共に過ごしている。基本、エノカ様の身の回りの世話が私のお仕事だ。
「あーい」
エノカ様はいつものように気の抜けきった返事しながら、入荷された禁書物にケラケラと笑っている。たまに始祖の大魔法使いだと思えないほど、普通の少女のように見えるときがある。やるときはやるとてつもなく凄い方なのだが、普段の様子からは想像もつかない不思議な方だと生み出された存在ながらポツリと思うのだ。
「スイスイ見てみなよ、この魔法、星を調味料にする天体調理魔法というらしいぞ」
「何だか、凄い規模の変な魔法ですね」
「これとか、林檎を魔神に進化させる魔法だってー、面白過ぎて涙出てきた」
「もう、エノカ様、千年会議終わったからといって気を抜き過ぎですよ」
「だいじぶ、だいじぶ」
「まったくもう」
なんだか、子守りをしている気分になる。毎度ながら。スイスイは肩の力がなんだか抜けた気がした。
それにしても、よく魔導図書室にはよく来るが、変な魔法が良く集まったものだ。しかもそこからともなく書物は追加されていく、大体の魔導書の禁書物関連はエノカ様の頭に入っているのだから凄いのか変なのかよくわからなくなる。
コンコンッ
「んっ」
「エノカ様、スイスイ様ご歓談中失礼します、魔法省より魔報伝が来ております。間もなく神殿より使者の方が来られるそうです」
「えー、まだ読み始めたばかりなのにー」
「エノカ様!」
「来られましたら、またお呼びに参ります」
司書さんのランさんがペコリとお辞儀をすると部屋を退出して行った。
「エノカ様、どちらからの使者ですかね」
「んーわからない、多分、今日の議題になった件だろうから、非常にめんどくさい内容だろうよー」
とてもめんどくさそうな顔をエノカ様がされている。
「今日の千年会議の議題は大魔法特異界に侵攻してきた謎の勢力と同時期に、中央特異界との交信が出来なくなっている件とかでしょうかね」
「そんなところだろうよ。プロエのやつは何をやっているのだろうか。そんなことより、別の来訪者もあるだろうから私としてはそちら側の使者であって欲しいなー」
「来訪者?ですか、どちらの方なんですか?」
「んー、未来魔法の予知であれば、虹色の目をした来訪者だな」
「虹色の目ってどんな目ですか?そのような人種や種族は見たこともありませんよ」
「まぁ、私の未来予知で見れるのはここまでだからなんとも。例の侵攻している何者かのせいだろうなー」
「特異界で未来に干渉してくるなんてヤバくないですか??」
「まースイスイが思う通り、そんなところだ。ヤバイねーあははははー」
「エノカ様、笑い話じゃないですよ」
「来る者は拒まないのが私の姿勢だしなー。敵でも見方でも面白ければ私はいいのだよー」
「まあ、エノカ様なら何とでもなってしまうのかも知れませんが、気を抜き過ぎないようにですよ」
「あーい」
相槌を打つとまた禁書物を読み始めて笑い転がっている。
エノカ様は本当にどんな時もなんとでもなってしまう存在だから、余裕があるのかも知れない。ただ、今回の千年会議はとても重たい議題ばかりだった。
どうなることやら。




