知らない番号
風呂上がりにアイスを食べながら録画しておいたアニメを見ていると携帯が着信を知らせる。
知らない番号だ。
美人にお前の連絡先教えといたからなと一昨日佐々木に言われたことが咄嗟に甦り、左の赤い拒否を間違えて押さないように左手で携帯を持ち右手の人差し指でそうっと青い応答を押す。
「もしもし」
「もしもし、あの、青柳さんですか?」
「はい、青柳です」
「あの、佐藤です。あ、佐藤美青です。先週の土曜日に一緒にお食事していただいた」
「はい、あ、その節はどうも」
何だよ、その節って、馬鹿か。
「はい、あの、有難うございました。あの、今お電話大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。あの、アイス食ってただけなんで」
俺は棒に残ってた思いやりの塊のようなアイスをぐいっと奪衣婆のように剥ぎ取る。
口の中に続いていた甘さが最後にどっと押し寄せ、俺が明日目覚めなければ俺が最後に食べたのはチョコレートでコーティングされたバニラアイスなのだなと変な感傷を覚える。
食いしん坊か。
「アイス食べてたんですか?」
「はい」
そこ重要か?
わざわざ確認するとこか?
「私もさっき食べました。ご飯終わった後つい甘いものが食べたくなりますよね」
「あー、そうですね。わかります」
「アイスお好きですか?」
「好きですね。一年中食べます」
「私もです。炬燵に入って食べる冬のアイス美味しいですよね」
「そうですね」
「アイスでは何がお好きですか?」
「バニラとかチョコですね。果実系はあんまり。あとかき氷もあんまり食べないです。食べても宇治金時か真ん中にバニラが入ってるやつしか」
「私もです。果実系のシャーベットとかはあんまり食べないです。あとかき氷も私も宇治金時でミルク系のやつですね。アイス食べに行ったりします?」
「食べますね。ソフトクリームとか出かけると必ず食べている気がします」
「結構出かけられるんですか?」
「まあ、わりと」
「じゃあ、よく外食されます?」
「まあ出かけた日は」
「そうなんですか。会社京都なら美味しいお店いっぱいありますもんね」
「いえ、平日は社員食堂で済ませるので、外は出ないです。安いし、美味いんで」
「あ、美味しんですか?」
「はい、美味しいですね」
「そうですか」
彼女の声は平凡だ。
まあ、そう思うのは俺がこの世で最強の声を知っているからだろうけど。
でもこれはいけないなと思う。
こんな会話を続けていたら錯覚してしまう。
普通にこんな風に話すことが当たり前で何も可笑しいことなどないかのように。




