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弓兵は嫁(仮)を迎えに行く  作者: オーブピアー
6/8

5 弓兵、敵と遭遇す

サブタイトルが前回と同じ感じになってしまった。

一部、変更した箇所があります。

 目の前にはゾウくらいなら余裕で通れそうな洞窟が存在していた。


 「ここか?」

 「はい、この奥で母が捕まっています」


 今更だが森の四天王とか言われている存在を捕縛できる奴と戦うんだよな……

 まぁ、四天王と言っても中級スキル一発で倒しちゃったし今から戦う奴も大した存在ではないだろう。


 「中は迷路のようになっているので私の後をしっかりとついて来て下さい」

 「りょーかい」


 テュクスの後に続いて洞窟の中に入る。

 中は微かに光が灯っておりそこまで暗くない。


 「意外と明るいな」

 「この洞窟は燐光石でできているので明るいんです」

 「燐光石?」

 「外からの光を取り込み発光する鉱石です」


 淡い光を放っていて綺麗だ。

 暫く周囲の景色に見惚れながらテュクスの後をついて行くと霧がかかりだした。

 霧は奥に進むほど濃くなっていく。


 「なぁ、霧が出てきたが大丈夫なのか?」

 「これは母が私を逃がすために起こした霧です」


 流石、四天王などと言われるだけはある。

 そんなことを考えていると視界の端に赤い光を捉えた。

 霧で視界の悪い中、注視してみると赤い光を放つ小さな石であることが分かった。


 「あの赤く光る石はなんだ?」


 そう言ってテュクスの方を向いたが姿が無かった。


 「あれ?」


 周囲を見回したが濃霧が立ち込めていて確認することはできない。


 「おーい! どこだー!」


 大声で呼びかけてみたが反応はない。

 もしかしなくても逸れたか。


 「この歳で迷子になるとは……」


 どうしたものか……

 このまま入り口まで引き返そうとも霧のせいで道が分からない。


 「こういう時はユーティアたんの指し示す方向に向かうべきだな」


 頭の中で矢印の描かれたプラカードを持ったユーティアたんがぎこちない動きで踊りながら方向を指し示した。かわいい。


 「よし、右だな」


 それにしてもあの踊りを実際にユーティアたんにやって欲しいな。

 今の想像なんかより一兆倍はかわいいはずだ。今度是非ともやってもらおう。

 そう考えながら俺は右に歩き出した。






 「はぁ……はぁ……はぁ……」


 霧の立ち込める洞窟の中をテュクスは必死に走っていた。

 その顔には焦燥が浮かんでいた。


 (完全に油断していました! まさか幻術を使われなんて!)


 テュクス達は気付かぬうちに何者かに幻術を使われ引き離されたのである。


 (兎に角、急いで合流しなくては)


 そう思いながら走っていると大きな空間に出た。

 その空間は少しだけ霧が晴れていて周囲が確認でき、テュクスには見覚えのある場所であった。


 「ここは……まさか……」

 「ようやく帰ってきやがったか、クソガキ」

 「っ!」


 声のした方に視線を向けると紫色の毛並みを持つ獅子の顔をした筋骨隆々な男が片手に黒い大剣を携えて佇んでいた。

 その近くには白い鎖で拘束された紺碧の瞳と髪をした女性が横たわっている。


 「母様!!」

 「テュ……クス……」


 その顔は青白く声は弱々しかった。


 「仲間を連れてきたみてぇだが無駄な足掻きだったな。てめぇがいない間にこの女から魔力と能力は奪った。傷も完全に治った、これであの糞野郎をぶっ殺せる! このルベレオ様に傷を負わせたことを後悔させてやる!!」


 男はそう言いながら女性に巻き付いた鎖と同じ色の腕輪を掲げ、ここにいない誰かへと殺意を向けていた。


 「まぁ、その前にてめぇらをぶっ殺してこの森を手に入れねぇとな!」

 「っ! 母様を返せ!!」


 テュクスはそう叫ぶと両手を前に突き出した。


 「水よ、形を成し、怨敵を穿ち賜え!【アイシクル・ジャベリン】」


 詠唱が完了すると大の男でも貫かれたらただでは済まないほど巨大で鋭い氷の槍がルベレオへと放たれた。


 「ガキにしては中々やるじゃねぇか。だがな、俺様には効かねぇんだよ!」


 ルベレオは飛んできた槍に拳を突き出した。すると槍は粉々に砕け、光に反射して輝きながら辺りに散っていった。

 このような状況でなければそれはとても幻想的な光景だが、事態は悪化の一途をたどっていた。


 「てめぇと俺様だと格が違うんだよ」


 そう言ってルベレオは一瞬でテュクスとの距離を詰め、膝蹴りをかました。


 「かはっ……」


 テュクスは後方へと吹き飛ばされ壁に激突した。

 辛うじて意識は失わなかったが頭からは血を流し、全身を打ち付けたことにより痛みで身体は動かず、吐血もしていることから重症であることは明白だ。


 「テュクス!! しっかり……して!! 返事……をし……て!!」


 それを見た女性は必死に娘に呼びかける。


 「そこで見てな。てめぇの先にクソガキをあの世に送ってやるからよ」

 「や……めて!! 娘は……殺さな……いで!!」


 ルベレオは悲痛な声を上げる女性を横目で見ながら心底楽しそうな笑みを浮かべてテュクスの目の前へと移動した。


 「ゴホッ……」

 「死ね、クソガキ」


 ルベレオは手に持った大剣を頭上に掲げて振り下ろそうとした。

 その時、ルベレオの下に一本の矢が飛来した。


 「なっ!?」


 ルベレオは後方に飛び間一髪で矢を避けた。

 しかし、矢は軌道を変えて再度ルベレオに向けて飛来する。


 「くそっ!!」


 ルベレオは力の限りに大剣を振るって矢を弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた矢はテュクスの近くに着弾し小さなクレーターを作った。


 (ちっ! なんて威力してやがる!)


 矢を弾いた反動で震える手と地面にできたクレーターを見てルベレオは背筋に冷たいものが走った。

 ルベレオは矢が飛んできた霧が立ち込める通路の方を睨み付け怒鳴った。


 「そこのいることは分かってんだ! 出てこい!」


 通路の奥から出てきたのは飾り気のない灰色の弓を携えた灰色の瞳と髪を持つ一見すると少女に見える中性的な顔つきの人物だった。






 孤立してから暫くして、ある方向で何か感じたので急いで行ってみるとテュクスの奴が男(獅子の獣人?)に殴られて吹き飛ばされていた。

 結構重症みたいだったが奇襲するには絶好の機会だったから息を潜めて狙いをつけていたんだが、まさか気付かれるとは思わなかったぜ。

 というか、テュクスの近くに着弾してまた吹き飛ばされたけど生きてるのか? 威力低めにしといたし大丈夫だよな?


 「おーい、大丈夫かー?」


 テュクスに呼びかけたが返事がない。

 やべぇ、マジで死んじまったか? いや、少し動いてるし大丈夫か。

 一応、回復しておこう。


 「スペル・アロー【エクストラ・ヒール】」


 矢の形にした治癒魔術を弓につがえてテュクスに放った。

 今更だが治癒魔術ってちゃんと機能するよな?


 「助かりました、ありがとうございます」


 おおー、ちゃんと機能したか。


 「ただ、貴方の放った矢が止めになりそうでしたが」

 「いや、それは矢を弾いたあいつのせいだろう」

 「……まぁ、そういうことにしておきます」


 テュクスの方は大丈夫そうだな。

 さて、敵さんの方はどうかな?

 そう思い紫毛の獅子男に視線を向ける。

 がっしりとした体躯で黒い大剣を構えながら、警戒した目付きでこちらを見ている。

 後方には白い鎖で縛られた美人さんがいる。あれがテュクスの母親か。

 取り敢えず鑑定しておくか。


 「【鑑定】」




 【ルベレオ・ヴェレーノ】 男性

 《種族》化け獅子

 《称号》聖人殺し、逃亡者、野心家、愚か者




 …………これだけ?

 他人のステータスは完全には見れないってことか?

 それじゃあ、化け獅子について見てみるか。




 【化け獅子】

 野生の獅子が魔獣化した個体の一つ。化け獅子になるのは稀で個体数は少ない。

 人の言葉を理解するが凶暴性が高く残虐的な面を持つ。

 また、個体によっては固有の技能を持つ者もいる。




 化け猫のライオン版みたいなやつか?

 まぁ、種族の特性や称号を見る限りロクなものしかないし殺しても心は痛まないな。

 そう考えているとルベレオが口を開いた。


 「おい女、てめぇ何者だ?」

 「これから殺す奴に名乗る必要などないな。あと俺は男だ」

 「てめぇ…………男?」


 そう言うとルベレオは睨み付けてきたが俺が男と知ると驚いていた。

 そんなに女に見えるか……中性的な顔にしたつもりだったが失敗だったか?


 「まぁ、性別などどうでもいい。てめぇは殺す!」


 そう言うとルベレオは一瞬で距離を詰めてきて大剣を横凪に振り抜いてきた。

 反応が遅れた俺は大剣の一撃をもろに食らい、後方に吹き飛ばされた。


 「いたたたぁ~、結構強い」

 「今の一撃を受けて無事だと、てめぇマジで何者だ?」

 「ふん、俺はユーティアたんの加護があるからな。お前のような雑魚の攻撃など屁でもない」

 「何だとぉ、死ね!【アイシクル・レイン】」


 ルベレオがそう唱えると俺の背丈ほどある氷柱が二、三十本、頭上から降ってきた。


 「ぐはっ!」


 油断していてまたもろに食らった。

 結構痛かったが命に別状はない。


 「ちっ! これでも死なねぇか」

 「だから、言っているだろうユーティアたんの加護があると!!」

 「ユーティアたん? ……もしかして女神ユーティアのことか?」

 「ほう知っているのか? 流石ユーティアたんだぜ!!」


 こんな畜生でさえ知っているとは俺のユーティアたんは人気者だな。

 思わず嫉妬してしまうぜ……


 「クハハハハハ! 成程、八大女神一の雑魚女神ユーティアの加護か! 腐っても女神なだけあって加護もそれなりに強力というわけだな! ならその加護打ち破っててめぇをぶっ殺してやるよ!」

 「……………………は?」


 こいつ今なんて言った?

 ユーティアたんが雑魚女神だと?

 

 「あ? 聞こえなかったのか? その雑魚女神の糞加護を打ち破っててめぇをぶっ殺してやるって言ってんだよ!」


 そう聞いた瞬間、頭の中で何かが切れる音がした。


 「殺す」

 「あ?」

 「お前は殺す。殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺してやる。そしてこの世界に生まれてきたことを後悔させてやる」


 ユーティアを馬鹿にしたこいつは許さん。






 その頃のユーティア

 「なんか馬鹿にされた気がするんだけど今は悪寒しかしない」

 「ユーちゃん、ストレス溜まってんじゃないの~?」

 「そうかも……」 

鎖で縛られた美人と筋骨隆々な男が二人きりとは薄い本が厚くなりそうですね。

最後の方を読んでみて主人公ってヤンデレ?と思ってしまった。男のヤンデレとか誰得……でも見た目は女だと思うと有りだな思う自分がいる。

誤字脱字がありましたら、教えてください。

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