第65話 芽維たんはお菓子部に決めたらしい
おはようございます。璃々亜です。
今日も元気に5時半に目が覚めました。
昨日は兄の都キャプテンボイスによる「京」呼び捨て脳内録音を無限ループで再生しているうちに、あっという間に寝ちゃいました。
あ、ちゃんと数学の宿題を兄に教えてもらった後です。
でもって、結局パソコンには触らず……。
というか、あんなスーパーコンピューターなんて何に使っていいのかわかりませんけどね。
普通のパソコンあるのかな?インターネット使えるのかな?涙目。
今日の早朝勉強は、予習を中心に行うことにします。
蓮華ですくって、口に運ぶと、ごま油の香りをまず感じる。
その後に、鶏がらスープのうまみがたっぷりしみこんだ粥が口の中に広がる。
中華粥の楽しみは、なんといってもトッピング。トッピングの種類を変えることで、1回の食事で何度も楽しめるという。
まずは、定番のねぎから。白髪ねぎをのせた粥をひとすくい。
ふわー。おいしい。さっぱりとした美味しさ。
次は何にいたしましょう。
「璃々亜もお茶会部に入るか?学校での接触云々言っていたが、あれほどすばらしい部活だ。入る価値はあるぞ?」
次は、鶏肉にしましょう。そこに、揚げた湯葉をのせて。
ふあー、鶏の歯ごたえと、湯葉のぱりぱり感が、粥の食間が変化してこれまた楽しめる。
「嘉久、璃々亜はお茶会部には入らないんだよ。そうだよな?」
ふふ。そして、次は梅肉。
おっと、もう一度鶏肉も忘れずにと。
鶏肉と梅はあうんだよなぁ。ささみの紫蘇はさみ揚げとかおいしいもん。間違いない。
「じゃぁ、璃々亜は何部に入るんだ?いい加減、決めたらどうだ?」
うっさい!
もっとトッピングを楽しんで食べたらどうだ!
と、見れば、兄も嘉久も、トッピングを全部投入済みでした。
え?あれ?全部入れとかもありなわけ?確かに、おいしそうだけど。やってみよう。
あ、おいしい。
「結局何に決めたんだ?」
と、嘉久。
「んー、全部捨てがたいですわ」
どのトッピングがいいかなんて決められないなぁ。
「は?いったい、いくつ入るつもりだ?」
え?入る?何の話?
「嘉久様も、全部入れてるではないですか?」
きょとんとして、顔をかしげる。
ガションッと、蓮華を取り落とし、嘉久が声を上げた。
「と、と、トッピングの話はしてない!」
嘉久を横目で見て、兄が口を開く。
「璃々亜、部活の話だよ。もう明日までには決めないといけないからね。分かっているとは思うけど、うちの学校は帰宅部は無くて、最低一つは所属しなければならないから」
一つかぁ。本当、どうしよう。
「お兄様、もしどの部活も合わない場合はどうすればよろしいのですか?」
「新しく作ればいいさ」
「そんなに簡単に作れるものなのですか?」
「ああ。うちの学校は生徒の自主性を重んじているからね。人数を集めて同好会からスタートなんてことはないよ。一人でもすぐに部活として認められるよ。ただし、顧問さえ見つければね」
一人でも……。部活でボッチとか、全然嬉しくない。
同好会はないんだ。部活じゃなくて漫研同好会とかあるのかと思ったのに。
いや、すぐにでも出来るんなら、漫研部とか作っちゃえばいいんじゃない?
……。ああ、璃々亜のイメージ云々が無ければ……。お嬢様って何気に不便!
「ごきげんよう。芽維さんは部活はお決めになりましたか?」
朝一番でリサーチ開始。
「どうしようか色々と考えたのですが……。お菓子部にしようかと……」
「まぁ、お菓子部ですか?」
おいしかったケーキの数々を思い出す。
部活のある日は、あのおいしいケーキが食べ放題。天国のような地獄のようなあの素晴らしき部。
「おいしいお菓子が作れるようになりたいし、ううん、正直に言うと、おいしいお菓子がただで食べられるから……」
にこっとはにかんだ笑みをみせる芽維たん。
うきゃっ。かわゆす!
分かるよ、分かる。ただでタダって魅力的!しかも、おいしいは正義!
「そんなに菓子食いまくったら太るぞ?」
不意に、芽維たんの頭に大きな手がのせられて、上から声が降ってきた。
「あ、田中くん、おはよう」
「ごきげんよう、田中くん」
ぐぐぐ。田中め!
朝から痛い言葉をいいおって!
おいしいは正義VS太る
正義と悪の戦いがあることくらい、知ってるよ!くそうっ。目をつぶっていたのに。悪の存在に……。
「作った菓子、差し入れしてくれよ、な?そうすれば太らなくてすむだろ?」
な、何?
正義のヒーロー登場?
「もちろん、いいですよ」
にっこり笑って了承する芽維たん。
ああ、いいなぁ。正義のヒーロー田中マンに、作ったお菓子食べてもらえるんだ……。
「立花ちゃんにも食べてもらおうと思ってたの」
「立花ちゃん?」
誰、それ?
「ああ、立花って、この間話した妹だよ」
そういえば、6歳の妹さんがいるって言ってたなぁ。
「もしよろしければ、私の作ったお菓子も、もらっていただけないかしら?」
田中くんが、驚いた顔をする。
「え?いいの?白川さんが作ったお菓子もらえるの?」
なんでそんなに驚いた顔するかな?
「わ、私も、一人で食べてしまっては太ってしまいますから……」
「そっか。じゃぁ、遠慮なくもらうよ!部活の後、お腹ペコペコになるから助かる!あ、違うな、白川さんが作ったお菓子が食べられるなんて嬉しいな!」
おうっ、聞いたか嘉久よ!
いや、聞いてないのは知ってるが。
お腹ぺこぺこで助かるって言った後、ちゃんと、私が作ったから嬉しいって言い直したよ!とってつけたように言い直したにしても、とにかく紳士的だ!田中、お前、できた男だな!
お世辞でも嘘でも、言われれば嬉しい。
「上手くできるように、がんばりますわね」
思わずにやけて返事をすると
「そうか。そうだよな。上手くできるようになってからお兄さんには食べてもらいたいんだよな?」
ん?
あ、忘れてた。太りたくないなら、作ったお菓子を、兄及び嘉久にあげればよかったんだ。
……。
まぁいっか。あの二人ならきっと、差し入れのお菓子なんて、ほかの女子からくさるほどもらうだろうし。
兄と嘉久涙目。
きっと、要求されるでしょう。
それよりも、田中くーん、逃げて、夜道は背中に気をつけて!




