第56話 兄により、破滅ルートに乗ったかもしれないらしい
璃々亜さんの妄想が、エスカレートしかねないので、念のため15Rタグを設置しました。もうっ、頼むよ、璃々亜さん。暴走しないでね!
心……社会貢献度により加点
*高校からの申告の他、以下の例のように、校外の方からの情報も評価対象とする
例「○○高校の生徒さんが、電車の中で席を譲ってくれた」
「道に迷っていたら、**高校の子が親切に教えてくれた」
「××高校和太鼓部が、地元の祭りを盛り上げてくれた」
「アルバイトに来ている○○高校の子がよく働いてくれる」
「農業高校の生徒が、毎年収穫の忙しい時期に手伝いにきてくれて助かる」
「商業高校のサテライトショップにはよい品が並んでいて嬉しい」
うちの生徒、電車やバスなんてほとんど使わないからなー。だから、席を譲るべき場面に遭遇する可能性なんてない。
っていうか、徒歩や自転車もないどころか、一人で歩いていて迷子になるのはお嬢様お坊ちゃまの方なんじゃないかと……。
地元の祭りを盛り上げるタイプの部活動なんてあったっけ?見た限り……ないよなぁ。映像部のあのフランス語映像が盛り上げられるとは思えない……。そもそも、地元の祭りに興味があるのかな?屋台とかで買い食いとか最高なんだけど!
アルバイトなんて、そもそもしないだろうし。
スクリーンを見た生徒たちがざわつく。
「何だよ、これ!アルバイトなんてしないつぅの!」
「地元の祭り?そんなことに何故わざわざ私たちが出向かなければならないんですの!」
「庶民の生活に合わせすぎじゃありませんこと?」
「俺たちがずっとキングだから、どっかの学校がやっかんで運営委員にでもクレーム入れたんじゃないか?」
あーあ。文句ばかり。
私は、この「心」の評価っていいと思うけどなぁ。
制服だらしなくて茶髪のあんちゃんが、おばぁさんの重い荷物持ってあげるとか。髪の毛黄色くてところどころピンクの原型が分からないような制服着てるギャルが、はげ散らかしたおっさんに「妊婦がみえねぇのか、席ゆずってやれよ」って妊婦さんのために言ってる姿とか。
いわゆるバカ高って言われてたとこの生徒さんたちだったけど……。
単語帳片手に周りが見えてない高校生よりも立派に見えたよ。
勉強が出来て、部活を頑張っていて、ルールも守って、それはそれで立派だけど。
ちょっと頭が悪くて、部活なんてしてなくて、ちょこっと制服が校則に反していたって……心が立派なら、やっぱり評価するべきだと思うよ!
あ、ちょい極端な例か。校則は守らなくちゃね。勉強もできればしようよ。部活は……まぁ自由だけど。その上で、心も育てるわけね!
「落ち着いてほしい。こちらは外部情報として採用される例として挙げられているだけだ。何もこのまねをしろというわけではない。それぞれの学校に合った社会貢献の仕方をすればいいのだ。そこで、まず、我々は、二酸化炭素排出量を削減することで、社会貢献したいと思う」
ほほー。そこで、食堂の改革に話がつながるわけですね。
「目標は、1日500キロ出ていた生ゴミを200キロまで減らす!皆も協力をよろしく頼む」
兄がここで言葉を切る。
「キングの座を得るために」
ここで、講堂は再び歓声を上げる。「おーっ!」と。
3年2年の熱気につられたのか、1年の中にもキングを目指して頑張ろうと決意した人間が次々にこぶしを振り上げる。「おー!」
ああ、兄よ。
根っからのセレブ故に、何も分かっていない。
普通の高校はね、たぶん生ゴミの量って半端なく少ないよ?おっきなゴミバケツ一つぶんあるかどうかだよ?
弁当持参組みは残しても持って帰るし、パンやおにぎりを買ってきた人間は食べ残す量なんて買わない。むしろ、足りない量しか買えないこともあるんだから。学食だってね「残すならくれ!」って人間が鵜の目鷹の目で食料を狙ってるんだから。
頑張って減らしても、まだ多いと思う……。
つまり、ちっとも社会貢献になってなくて、普通に近づくだけ。評価されるとは思えない……。
「その他にも、社会に貢献できるということは、ぜひ提案してほしい。また、個々にも積極的に社会貢献していくようにと願う!」
やるぜやるぜ!って前向きな声が上がる。
んー、いや、だからさ、ゴミを減らしてもねぇ……。
庶民の芽維たんなら分かるよね?
はうっ!
芽維たんってば、恍惚状態が続いてる!こ、こ、これは……。
兄ルートなのか!
そして、私の義姉ルートなのか!にょほ。
「芽維おねーさま」「璃々亜さん今まで通り芽維って呼んでください。私たち、友達でしょう?」「へへへっ芽維さん」
これって、もしや……。切ろうにも切れない一生の付き合いってやつ?
兄嫁兼友達として、親しくずっと付き合えるという……。一生ボッチの心配ない生活が待っているというの?
おう!これは、兄ルート全力で応援しなければ!
「尚、二酸化炭素削減の元となる提案は、1年に在籍している我が妹と、その友人によってなされたものだ。他の者もぜひ続いてほしい」
ぎゃうっ!何言い出すんだ、兄よ!
「おお、流石会長の妹!」「優秀でいらっしゃるに違いありませんわ!」「どなたかしら?」「ご友人も立派な方なのでしょうね」
って、ちらちら後ろを振り返る2年や3年の目が怖い。
ちょ、あたし知らないから!他人です。他人。
芽維たんに助けを求めるように視線を送れば、未だに恍惚。皐月たんに助けを求めようと見れば、メモ取りに必死。
ふるふる。ふるふる。
「King High School tournamentでキングの座を得られるとしたら、会長の妹様のおかげですわね!」
まてまてまてー!
そういう意見、成功すれば「おかげ」失敗したら「せい」てやつでしょ?「キングの座を得られなかったら璃々亜のせいだ」っていう……。
もうっ、兄、恨みますよ!失敗を妹に押し付けるなんて!ぐぬぬぬっ。
まだ、講堂の熱は冷めない。
なんだか、KHTでキングの座を得るって私が思っている以上にすごいこと?
10年連続で取ってたのが、取れなくなったとしたら……。
それが、私が提案した案が原因だと言われたら……。
兄がいる間はいい。カリスマ兄が学園から居なくなった後、私はどうなっちゃうの?
「あいつのせいで、キングの座を取れなかった」「白川妹はどうしようもない人間だ。この学校を貶めた」「学園から排除しろ!」「破滅しろ!」
……ってことにならない?
人のせいにするのって楽じゃない?
しかも、共通の敵みたいなの作ると団結できるじゃない?
その生贄が私になったりしない?
せっかくヒロインがらみの破滅フラグを回避できたとしても……。別の破滅ルートに乗ってしまった気がしてならない。
……その運命から逃れるには……。
兄に頑張ってもらうしかないよね、キングの座を死守できるように……。
うーん。
仕方が無い。賢い兄だ。1を言って聞かせれば、10は理解してくれるはず。
ゴミ削減してもだめだよ?って遠まわしに伝えてみよう。
前世庶民の私のことがばれないように、注意しながら、庶民のあれこれを……どうやって伝えるべきか……。
いつもありがとうございます。
璃々亜、これから影でキングの座を得るために、兄を操るらしい。
いや、すでに操ってますがな!




