第402話 女子同志で楽しむらしい
「そうだ、せっかくだから、璃々亜ちゃん変身しない?」
ネズニーシーの一角。お土産売り場の並びに、衣装を着て写真を撮る店があった。
章子先輩が、店頭に飾られた写真を眺めながら口を開いた。
カウボーイの衣装やら、その時代の女性のドレスやらが並んでいる。
ん?
ネズニーシーと何が関係あるんだ?そんな作品あったっけ?もっと、人魚姫とか……。
って、人魚姫の衣装とか、どんだけハードル高いんだ!あれか?胸元は貝殻か?……おわふっ。
無理だろ、無理!……ってことで、こういう衣装なのか?
あ、あれだ。人魚姫でも、陸地に上がった後か?王子とかドレスとか貴族とかあったりするか。
……と、は、いえ……。
正直、こういうドレスとかもにあんまり興味ないんだよねぇ。
っていうか、ぶっちゃけ、ウエディングドレスも興味ないし……。
クローゼットには、なんかいっぱいドレス並んでたし。上流階級は日常にドレス着る場面あるってことなのかしらないけど……。
もしかして、単なる洋装フェチの母親の趣味という可能性がないわけでもないけど……。
まぁ、とにかく、フワフワキラキラなドレスとか興味なし。
もっと言えば……コスプレにしか見えないし。
コスプレするなら好きなキャラがいいし。
そもそもドレスキャラなんて数少ないし。
店内をちらりとのぞくと、女子同志で楽しそうに衣装を選んでいる人の姿が見える。
はっ!
もしかして、章子先輩が着たいってこと?
一人じゃちょっとなぁって思っているってことなのかな?
女子同志、きゃっきゃ言いながら、ドレス選んで写真を撮るとか……。
あ、うん、剣崎徹とかと一緒じゃ無理だよね……。
っていうことは……。
私が断ると、章子先輩がっかりだよね?
だめだ……。私には断るなんてできない……。
一人でどうぞなんて……、ボッチでどうぞなんて……、そんなこと言えようか?
言えるはずがない。
ううう、はい、わかりました。
記念に、こういうのも楽しそうですねと、ニコッと笑ってみました。
「じゃぁ、着よう!どれにする?」
楽しそうに店内へ足を踏み入れる章子先輩。
うん、よかった。
章子先輩が喜んでくれてよかった。
「璃々亜ちゃんには、これが似合うかなぁ?」
章子先輩が早速ドレスを見ています。
えーっと、私のはいいですから、先輩も自分の選んでください……と思ったけど……。
章子先輩の後ろで兄がわきわきと手を動かしているのが見えた。
あれは……間違いない。
璃々亜にはこれが似合うだとか、璃々亜にはこれがいいんじゃないかとか、璃々亜、どうせなら順番にとか、言い出しそうな気配だ。
章子先輩がいるから、女子同志の時間を邪魔しないように我慢してる……と思う。
ってことはだ、章子先輩が自分のを選び出したら、すかさず兄が近寄ってくるに違いない……。
あうぅ、うううっ。
「璃々亜ちゃんは、ピンクも似合いそうだけど、黄色がいいかな?」
ピンクですと!
それは、ヒロイン候補芽維たんカラーです。
私は遠慮します。……が、はっきりと先輩に言えるわけもなく。
「章子先輩は、スカイブルーが似合いそうですね」
さわやかな、すきっとした色。
甘いカラーじゃなく、暗い色でもないほうが似合いそうだ。
「そう?スカイブルーね。うん、じゃぁ、私はスカイブルーの衣装にするよ」
えええっ!
私の一言でそんなに簡単に決めてもいいんですか!
あわわっ汗。
「私がスカイブルーなら、せっかくだったら、一緒に並んでちぐはぐにならない衣装がいいね」
と、章子先輩が、再び私のドレス選びを始めた。
「あ、これなんていいんじゃない?」
章子先輩が、1枚のドレスを手に取り、私の体に合わせてみた。
「うん、似合うよ。璃々亜ちゃんどうかな?」
章子先輩が手にしたのは、白いドレスだった。ところどころに、スカイブルーのリボンがついている。
白……か。
私って、白が似合うような気はしないんだけどなぁ。なんせ、悪役令嬢だからね……。
ばっちりごってり化粧のときは、絶対赤とかだろうし。
ノーメイクの今は、どうだろう。真っ白じゃなくて、生成りの白ならなんとか……。純白は、やっぱり落ち着かない色だ。
なんせ、中身全然純白じゃないですからね。
腐しだらな女ですから。……。
似合わないんじゃないかなぁと思っても、だったら、どのドレスがいいのだと尋ねられても困るし……。
特に希望はないし、兄の魔の手が伸びるのも避けたい。
ので、素直に章子先輩の選んだドレスにうなずいて見せた。
「じゃぁ、これにしますね」
章子先輩は、すぐにスタッフに声をかけた。
「これで、お願いします。フルコースで」
ん?
フルコース?
なにそれ?
デザートでもついてくるの?
ごらんいただきありがとうございます。
やってまいりました。章子先輩ターン。
……あれ、兄ターンどこ行った?
もう、終わったの?




