閑話 兄と人形
人形か。
璃々亜が母上に、自分に似た人形をプレゼントすると言う。
……と、いうことはだ。
誕生日に私からは、私に似た人形をプレゼントするというのはどうだろう。
璃々亜が人形を買ったところで、私に似た人形も売っているかもしれない。
よし、璃々亜にどこで買ったのか聞こう。
と、出かける準備を終えた璃々亜に声をかけようとすると、嘉久が璃々亜を引き留めた。
「璃々亜、一つ聞きたいことが」
ん?
まさか、嘉久も璃々亜に人形を買った店のことを尋ねるつもりなんじゃ……。
「何ですの?帰ってきてからにしてくださいませ」
ほっ。
いや、ホッとしてはいられない。
人形の店に行き、私に似た人形を探さないと。
それから、璃々亜に似た人形があれば……、買い占めだ。
いや、私が欲しいからではない。誰かの手から璃々亜を守るためだ。
考えてみてくれ。どこの誰とも知らない人間が、璃々亜に似た人形を手にするところを……。ぞっとする。
だから、私が、その魔の手から助けるために買うのだ。買い占めた後は、璃々亜似の人形の製造販売をしないようにお願いしないとな。
……まずは、璃々亜がどこで人形を手に入れたのか。
ハイアーの会社に電話をかける。
「いつもお世話になっております、白川様」
「朝早くにすまないが、昨日世話になった運転手と話がしたい」
璃々亜をどこに送ったのか行先を確認すれば、その周辺の人形を扱う店を探せば見つけられるだろう。
折り返し、運転手から電話が入ることになった。
電話を待つ間に、出かける準備をする。買い占めるために必要な金額はどれくらいになるか……。
製造ロットはどれくらいなのだろうか。千?万?……うっ。千人もの人間の手に璃々亜がと思うと吐き気が。
いいや、見た感じ、それほど大量生産される人形のようには思えなかった。運が良ければ1点もの。ん?運がいいのか?
1点ものでは、私の手元には……い、いや。欲しいわけでは……。
1体いくらほどするのかわからない。それが千体ともなれば……金額はすごいことになるだろう。
貯金で足りるだろうか?
足りなければ、璃々亜のためだと嘉久に金を出させるか?
ああ見えても、私よりも株で稼いで金を持っているからな。
いっそ、製造会社を買収……。
いやだめだ。嘉久に金を出させるわけにはいかない。貯金で足りなければ、持ち株の売却。
それから……まだいろいろと資金を集める手立てはある。
作ったアプリをどこかの会社に売り込むこともできるだろう。
……まぁ、璃々亜のためだと言えば、父上が一番簡単に大金を出しそうだが……。逆に、璃々亜の可愛い人形を世に広めたいとか言い出しかねない。
和服バージョンも作れと言い出しそうだ。
と、資金繰りを考えているところに電話が鳴った。
「昨日、璃々亜を送って行った場所を知りたい」
という私の質問に、運転手は答えた。
「新宿駅です。駅の近くで降ろしてくれと言われて降ろしました」
「新宿駅の前ではなく、近く?」
店の前だろうか?
いや、朝早くに出て行った。開店前の時間だろう。
誰かと待ち合わせをした場所の近くで降ろしてもらったということだろうか?
そうか。その誰かに聞けば店のことが分かるか?
「璃々亜は、降りてから誰かと合流したか?」
「申し訳ありません、すぐにその場を離れましたので……見ておりません」
「そうか」
確かに、いつまでもハイアーが止まっていては邪魔になるからな。仕方がない。
「ああ、そういえば……」
ん?
「ちょうど同じような時刻にハイアーで新宿駅にいらした人を見かけました」
早朝の新宿駅にハイアーで向かう人物はそう多くない。
確かに、璃々亜と待ち合わせしていた人物の可能性は高いが、タダの偶然の可能性も十分ある。
「三笠蔵様のご子息がご利用だったかと……」
何?
三笠蔵だと?
子息と言えば、同じ学校……璃々亜と同じ1年生……。
ただの偶然で、同じ日、同じ時刻、同じ場所に、同じ学校の生徒が向かうか?
その可能性は?
一体どういうことだ……。
三笠蔵……。璃々亜とどういう関係なんだ?
ご覧いただきありがとうございます!
やばいっ、まさかの人形からの、誤解が加速!
兄が、三笠蔵の存在に気が付いてしもうた!
どうなる、これから!
( ^)o(^ )




