閑話 嘉久と人形
「璃々亜、一つ聞きたいことが」
朝食を終え、出かける準備をあわただしく終えた璃々亜に声をかける。
「何ですの?帰ってきてからにしてくださいませ」
璃々亜は、そう答え、さっさと行ってしまった。
くっ。
聞けなかった。
あの人形をどこで買ったのか……。
べ、別に、俺が欲しいわけじゃないからな?
人形をかわいがる趣味とかないからな……!男だし!
ただ、その、本当に居間に飾ってあった青い目の人形を、爺様が婆様の形見だと自室に持って行ってから何も飾ってないから……。
そこに、人形を飾るにちょうどよい場所がぽっかり空いてるからな。
そろそろ新しい人形を飾るのもよいかと……。
だが、青い目の人形の代わりになるような品はなかなか見つからないのだ。
なんせ、あれはずいぶん古くて価値のある物だからな……。
だが、さっき見た人形であれば……。璃々亜を孫のように可愛がっている爺様も、納得するんじゃないかと思うんだ。
だからだぞ?
決して、決して、俺があの人形が欲しいとか、敦也兄より先に手に入れて自慢したいとかそんなことじゃないからな?
璃々亜に、どこで買ったのか聞けなかった。探さないと。
「敦也兄、昨日、璃々亜が使った……いや、何でもない」
だめだ。敦也兄に尋ねれば、俺が何をしようとしているのか、すぐにばれてしまう。
そのまま、今を出て、白川家の従業員宿舎へ。
「蜂川さん、少し教えて欲しいことがあるんだ」
「おや、嘉久様、どうなさいました?」
白川家の運転手蜂川さん。優しそうな顔で僕を出迎えてくれる。
そういえば、学校の送迎を別になってからこうして顔を合わせる機会もぐっと減ったな。
「昨日、璃々亜が使ったハイアーが分かるか?」
「ええ、それはもちろんですが。どうかしたのですか?」
うっ。
ううう、何と言えばいいんだ?昨日の璃々亜の足取りを探って、人形を買った店を突き止めたいなんて言えるはずもない
「ちょっと探しものを……」
「璃々亜お嬢様が、ハイアーに忘れ物でもなさいましたか?でしたら、こちらから問い合わせて」
「い、いや、そうじゃないんだが……その、ちょっと出かけて探したいものがあるんだが、呼んでもらっていいか?」
蜂川さんはすぐに首を傾げた。
「どこかへお出かけなら、私が送りましょうか?」
「い、いや、いつまでかかるか分からないからな。昨日璃々亜が使ったハイアーなら、信用できる運転手なんだろう?」
「ええ、それはもちろんですよ。分かりました、何時に来ていただけばよろしいですか?」
ほっ。
何とか、第一関門突破だ。
時計を見ると、まだ朝早い。
店の開いているような時間ではない。
「そうだな、9時に来てもらえるだろうか?」
それまでに、情報収集したいところだが……。あ、早間さんが人形に詳しそうだったな。
聞いてみるか?
いや。
男なのに、人形遊びでもするのかと思われてはまずい。
……早間さんはなんと言っていたか?
人形を預かるけど、着替えさせたり、写真を撮ったりしてもいいかと尋ねていなかったか?
き、き、き、き……。
着替えさせる?
人形の服は脱がせたり着せたりできるのか?
婆様の形見の人形はそんな作りじゃなかったと思うけれど……。服もがっちり人形と一体化していた気が……。
人形も種類があるということか?
あの、璃々亜にそっくりな人形の服を着替えてさせる……。
服の下はどうなっているんだ?
あっ。
俺はなんていうことを!
駄目だ!
考えてはダメだ!
想像とか……。
すまん、ごめん、悪かった、俺は、何も考えていない。想像していないからな?
大きく頭を振る。
「は、蜂川さん、やはり出かけるのはやめにするので、ハイアーも必要なくなりました」
「おや?どうしました、嘉久様。顔が赤いようですが、熱でも?」
いつもご覧いただきありがとうございます。
……書いちゃった……(´・ω・`)




