閑話 弟視点。
口に出したとたんに、再び白川璃々亜への憎しみが溢れてきた。くそ、悪役令嬢め!
「邪魔された?」
「……新宿駅で、僕を探している同じ学校の女子を見かけたんだ」
「そ、それって……」
「昨日も、偶然を装って外食した場所に現れた」
同じ学校の生徒を見かけただけでは邪魔された理由にならないかと、昨日の出来事も付け加える。
「まさかと思ったけれど、今日は……新宿駅周辺で車の窓からキョロキョロとしている姿を見たんだ。どこから僕が新宿駅に向かったのか情報を得たのかは知らないけれど……。見つかるとまずいと思った」
あれは明らかにストーカー行為だと思う。
「だから、荷物をロッカーに入れ、伝言を残してすぐに新宿駅を後にしたんだ」
「そっか……大変だったね……弟は、モテるんだね……」
え?
姉の言葉にドキンとする。
そうか。ストーカーされるほどモテるっていうことになるのか。
……。あの、周りでいつも騒がしい女子たちにも、モテているということになるのだろうか。
世間から見ればそうなのかもしれない。
僕にはモテているとは思えない。
あえて言うならば狙われているという感じだろうか。捕食しようと舌なめずりをしているようにしか思えない。女は怖い。
「姉さん以外、女は嫌い……モテたくなんかない」
「あ、あのさ、弟……その……どれくらいモテるの?」
え?何、何なの?
もしかして、僕がモテることを心配して……嫉妬?
ドキドキと胸が高鳴る。
どう答えればいい?モテると言って、嫉妬心と独占欲をあおることができる?
それとも、モテる男なんてチャラい感じがして嫌だって思う?
黙ったままでいると、姉が口を開いた。
「ねぇ、弟は、カッコイイの?」
「姉さんは僕がカッコイイ方がいい?」
姉もイケメンが好きなの?
それとも、モブオタク顔が好きなの?
そんなことより、こういう質問をするってことは、もっと僕のことが知りたいってこと?
……僕のことを何もかも知りたいなら……。
「見たいなら、見てもいいよ……」
顔を近づける。
「私、弟を手放せないよ……だから……顔は見ない」
姉、姉、僕だって、姉を手放す気はないよっ!
姉が僕を手放したくないと言ってくれたことの喜びのあとに、不安が胸を突き上げる。
顔の造形次第では、僕とは距離をおくってことじゃないよね?
「学校で会っても、お互いが分からない方がオタバレする危険が減るから……このまま、顔は知らないまま……」
ほっ。
そっか。うん、そういうことだね……。
「うん」
僕が顔を見せたら、姉も顔を見せてくれるかもって期待も少しはあったけれど……。
「顔は知らなくても……いい。姉さんが姉さんとしていてくれるから……」
顔を知ることで、姉との関係が終わってしまうなら……。
一生顔を知らないままで構わない。
僕は、姉の手のぬくもりを知っている。
僕は、姉が優しいことを知っている。
僕は、姉が、僕のオタク趣味を責めたりしないのを知っている。
僕は、姉といると、幸せな気持ちになれる。
ご覧いただきありがとうございます。
えーっと、あと10日で書籍発売だというのに、弟続きます。明日も弟視点でごめんっ!
しかも、明日はちょっと閲覧注意。やだもう。
弟怖さに拍車が……。近寄っちゃだめだよっ!




