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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第355話 ファンらしい

 弟の顔を知るわけにはいかない。

 そうだ、私。

 たとえ攻略対象でも、兄とは縁を切れないし、嘉久ともきっとこのまま幼馴染として接触していくのだろう。

 それと同じように……。たとえ弟が攻略対象だったとしても……。

 ずっとこうして一緒にイベントに来たい。

「だから……顔は見ない」

 曇った眼鏡の向こうで、弟が瞬きしたのが見えた。長いまつ毛。目の形は分からないけれど……、なんか綺麗な目をしてそう。

 攻略対象だったら、ねぇ、オタ友の私も破滅に追い込むことがあるの?

 このまま仲良くイベントに行く仲だったら、攻略対象でも、私を破滅に追いやることなんてないよね?

 ……信じてる。

 オタクの結束を信じてる。

 だから、私……。

「学校で会っても、お互いが分からない方がオタバレする危険が減るから……このまま、顔は知らないまま……」

「うん」

 弟が、コツンと、私の額に、自分の額をくっつけた。

「顔は知らなくても……いい。姉さんが姉さんとしていてくれるから……」

 と、そんなこんなしてる間に、列がじりじりと進んでいき、そろそろ販売物が見えてきた。

「きゃぁっ!ファンなんですぅっ!」

 ちょ、今の声、私じゃないよっ!

 ファンだからサークル列に並んでるんだから、いちいち作家さん本人が販売で立っていたってそんなこと言ったりしないもんっ。

 頑張ってくださいとか余裕があれば声をかけることもあるけど……。

 さすがに、書き入れ時で、客をどんどん裁かなければならないこんな時に無駄な時間をいただくようなことはしないです。

 誰ですか、常識知らずにファンですぅとか声かけたのっ!

「あの、あ、握手とかしてもらっていいですかっ」

 あー、ずうずうしいファンがいますよ?

 だめでしょ!握手会じゃないんだからっ!そういうことしたいなら、せめて、本が完売した後とか、もう少し落ち着いてからとか……。朝の開場してすぐの一番忙しいときは控えなさいっ!

 と、思考を忙しくしつつも、販売物を遠目でチェック。次の次の次くらいにはもう私の番だ。買うもの決めないと。

 新刊セットは……。

 おお!京×都本が2冊!それから、ユーキの本がさっそく出てる!

 カップリングは……さっき見た動画でいいなぁって思ってた二人だ!さすがです、先生!私と魂がつながってるみたいですっ!

 新刊セットは買い!それから他は……。あれ?

 私、持ってるのと同じのが並んでる?前世の記憶の本と同じにしかみえない……?

 似ているけど非なるものかな?違いを確かめなくちゃ。

 と、買うもの決まった。

「あのぉ、姉さんも握手していただいてもいいですか?」

 ん?

 は?

 私?

 握手?

 ひゃっ、ひゃぁーーーーっ!

 蔵皇先生っ!

 テーブルの向こう側。サークル小蔵屋の蔵皇先生っ!BL界のカリスマ同人誌作家様が、私に向けて手を伸ばしているとか!

 ゆっ、夢?

 っていうか、何度も前世のイベントで蔵皇先生の姿を拝見したことあったけれど……似てる!本人?

 あれ、言い方おかしいな。

 どちらも本人だけど、そうじゃなくて……同じ人?前世の世界と、今の世界と同じ人?……なわけはないか。さすがに……。だったら、どこかにみっきゅんもいて、私の前世の親もいてってことになっちゃう。でも、みっきゅんの家は芽維たんの家になってたし、会社だってもうなかった。

 ほぼほぼ同じなだけ?それとも、有名人や私と関係ある人以外は……一緒?

 とか考えてる間に、蔵皇先生の手が、私の手を握った。

「あ、あの、私、ずっとファンですっ!頑張ってください」

「嬉しいです、姉レイヤーさんにそういってもらえて!」

 っていうか、なんで、どうして、蔵皇先生って、BL畑なのに、姉ファン?

「全部一つづつください」

 って、弟がその間に買い物済ませてるしっ!

 って、全部買うの?

「ひゃー、ありがとうございます。そ、そうだ、えっと、これ!別名義のサークルで明日売る新刊ですっ、おまけで差し上げますっ」

 つって、なんと、おまけをいただいてしまった!

 っていうか、別名義サークル?

 いつの間に!チェックしてないから全然最新情報わかんなかったよっ!

 おっと、いつまでも先生と交流を図りたいのはやまやまだけど……。後ろにいっぱい人が並んでいるので、お礼を言って急いで立ち去る。

 弟は、持っていた紙袋の中に買った本を入れた。

「びっくりしたね、僕達のファンだって」

「え?うん。人気のあるコスプレイヤーがいるのは知ってたけど、弟も人気があるね」

「何言ってんの、姉さん。僕が人気があるんじゃないよ。僕と姉、二人で一つだよ?」

 そういいながら、弟が紙袋から、おまけにもらった同人誌を取り出した。

 タイトル「ファビュラス姉弟」。

 蔵皇先生らしい美しいラインで描かれた、姉と弟が艶めかし……18R自主規制。あ、しまった!

 いつもの調子で何にも考えてなくって、18Rの本も並んでるの気にしなかったけど……。

 今の私は、18歳未満……やべ。弟もだよっ!

 私はいい、私は!

 でも、弟はだめ!まだ早いっ!いや、いいよ、別に。健全なる普通の18Rならね!でもBLだとか、中身わかんないけど同人誌の18Rは地雷が埋まってることがあるから!もし、今後の弟の成長の妨げになるようなことになっては大問題だっ!

「みっ、みちゃだめだからね?18歳になるまで、18Rはだめだからね!」

 弟にくぎを刺す。効くかどうかは微妙だ。

「分かった。姉さん。18歳になったら一緒に見よう」

「そう、18歳になったらね!」

 あれ?

 一緒に?

ご覧いただきありがとうございましゅる。

全然壁BLサークルが分からない……(´・ω・`;

今回の元ネタサークルさんは、友達の友達……。


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