第332話 個室に通されるらしい
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
「次は、清水寺の予定だったな」
嘉久が、三十三間堂を見終わって簡単に組んだスケジュールの確認をする。
「あ、だがもうこんな時間か。思いのほか時間をかけて回っていたようだ。こうして、時間を決めずにのんびり見るのもいいものだな」
こんな時間?
「あら、そろそろお昼ですのね」
時間を確認すると、12時になろうかという時間だった。
「何を食べましょうか」
お昼を取ってから移動かなぁ。
おいしいもの食べられるといいなぁ。
「ああ。緑寿庵青水の近くの店を予約してあったんだが……キャンセルして、どこか店を探そうか」
え?
嘉久が、店を予約?
お昼ご飯のために、予約?
「キャンセルするなんて、申し訳ありませんわ!私たちの予定なんてあってないようなものです。回る順番を変更すれば済みますわ」
嘉久が予約したんだよっ!
グルメ番長嘉久が選んだ店だ!おいしいにちがいない……。
「うん、まさそうだな。予約のみでしか食べられない店だから、キャンセルすると食材を無駄にさせてしまう……確かにお金を払えばいいという問題でもないな」
な、ん、で、す、とぉーっ!
予約しないと食べられない、一日何組か限定とかの店!
そりゃ、行くしかないっしょ!
京都になんて次にいつ来られるかわからないんだもんっ!
「場所は緑寿庵青水の近くだとおっしゃいましたわよね?でしたら、まず、お食事をしてからお土産を買い、それから清水でらに足を運べばよろしいですわ」
食べる。絶対食べるんだっ!
嘉久の唯一といっていい取り柄、味覚、その味覚センサーにひっかかった店に行かずして、何のための京都旅行だ!
……あ、手土産を買うための京都でした。
「さぁ、遅れても失礼ですわ!急ぎましょう!」
嘉久の手を引いてバス停へ。
あ、電車移動のほうがいいだろうか?
回る順番を買えたのだから、バスをちょこちょこ乗り継ぐより、電車で移動した方が……。
なんて、悩んでいたら、嘉久がぐいっと手を引っ張った。
「確かに、一番おいしい状態で食事を出すために、時間を計算して調理してくれているはずだ。遅れては申し訳ない」
ほうっ、グルメ番長が本気になりましたっ!
で、バス停近くのタクシー乗り場へ直行。
迷わずタクシーに乗り込んで行き先を告げる。
あ、バスでも電車でもなく、タクシーという手がありましたか……。
あいにくと、私、タクシーは乗り慣れていないので……。全然思いつきませんでした。
タクシーのメーターが回るのがびくびくです。
ひゃー、いくらかかるのっ!ドキドキ……。
いや、りりあである私も、嘉久もタクシーのメーターを気にするような立場じゃないんだろうけど……でも、でも、メーターがぐるぐる回っているのを見るは心臓に悪い。
見ないようにしよう。
別のことに気を反らそう。
「嘉久様、予約したのは、どのようなお店なのですか?」
「ああ、開店1年でミシュラソで星を獲得した店だ」
ぐおっ、ミシュラソ!
やっぱり、普通にそういう店を利用するんだ、セレブゥっ!
っていうか、開店1年でミシュラソとかすごくない?
「りりあも好きだったろ、残念ながら閉店してしまったが『椿屋』で修業をしていたお弟子さんが開いた店だよ」
つ、椿屋?
知らない。
私が好きだった店?
うーん。大丈夫かな。昔おいしいって食べていたものを、同じようにおいしいって言えるかな。
味覚は変わってないとは思うんだけど……。ただ、ジャンクフードへの思いも増えただけで……。
「とにかく、水へのこだわりはすごいそうだ」
はい?
水?
えーっと、京都へ水を飲みに来たの?
「あの、椿の澄んだ吸い物、それをこだわりの井戸水を用いて作られたと考えると……どれほど素晴らしいものがでてくるのか楽しみで仕方がない」
あ、そうでした。こだわりの水で料理してるのね。そうよね。料理を食べに来たんだもん。
って、食べ物について語る嘉久の口元は、今にもよだれがたれそうだ。
いや、よだれを垂らすような真似はしないのはわかってるけど。おいしいものを想像するだけで、これほど恍惚とした顔をするなんて……。
こういうところを全面に押し出せば、友達とかすぐにできるんじゃないかな?
轟くんとかと、気が合いそうじゃない?
いや、だめだ!
轟くんは、大切なクラスメート!ってか、友達だもん。いや、まだ友達と呼べるレベルか微妙なのだが新入生歓迎会で同じグループだったし、クラスの中では仲がいいほうだ!
嘉久にはあげませんっ!
それからも、嘉久は今から行く店の情報をいろいろと話してくれた。
今の季節だと、旬は何だから、料理には何が使われるのかと、いろいろと想像もしている。
はー、すごい情熱ですね。
あんまり期待値あげすぎて、いざ食べてみたらがっかりとかしても知りませんよ?
タクシーが止まったのは、小さな店構えの「孤久」という名前の店の前だった。
店の暖簾をくぐると、落ち着いた雰囲気の店内。カウンター席がいくつか目にはいった。
寿司屋みたいだなぁ。
「2名で予約した高円寺です」
嘉久が慣れた風に出迎えてくれた女将さんに名を告げる。
「ようこそおこしやす。高円寺様お待ちいたしておりました。どうぞ、奥へ」
カウンターに通されるのかと思ったら、奥にある個室に案内される。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
いつもありがとうございます。
(*'ω'*)
とっても素敵な店のモデルは……いえ、実在のラノベ作家、そのお兄様のお店とは一切関係がありません。
フィクションです。ええ、フィクションですから……




