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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第300話 あれだ、らしい

 クレープを受け取ると、手がつなげない。

 もう片方の手にはお互いに荷物を持っているからね。

 うんと、こんな時、姉ならどうする?

 そうだ。手をつなげないなら、腕を組めばいいじゃなぁい?

 というわけで、弟の腕に腕を絡ませて、クレープを口に運……べないっ!

 マスク、マスクがあるんだった!

「弟、どうしよう、マスク……。外して万が一知り合いに見られると困るし……」

 壁に向かって立って食べるか?

 ……怪しい。

「あっちで食べよう」

 弟に腕を引かれて路地に入った。路地から、今度はビルとビルとの隙間に入る。

「あっ」

 あまりの暗さに、足元にあったゴミバケツが見えずにケッつまずいてしまった。

 そうだ。サングラスしてるから、まるで夜みたいに暗く見える。

 少しだけサングラスをずらして、裸眼で周りの様子を見ると、見えなくはない。だけれど、ビルの隙間から路地に視線を移し、向かい側にあるビルの隙間をみたら、ほとんど見えなかった。

 明るいところから暗いところを見るとよく見えないっていうあれだ。

 ってことは、きっと私と弟がいるここも、路地を歩く人からは良く見えないはずだ。そもそも、路地もあまり人通りはないわけだけど。

「ここなら、人目を気にしなくてもいいよ?」

「そうだね」

 腕を外して、荷物は地面に置いて、両手でクレープを持つ。

 人目は気にしないけど……。

「弟も、あんまり見ないでね?」

「……わかった……」

 弟が、横を向いたので、マスクを顎の下にずらしてクレープにかぶりつく。

 おいしいっ。

 何、このふわふわしたの。あ、確かスポンジケーキも入ってるやつだったよね。

 もぐもぐ。

 ふと顔を上げると、弟がこちらを見てた。

 あ、半分ずつの約束だったっけ。もう、弟は半分食べたのかな?

 暗くて弟の表情がほとんど見えない。

 けれど、輪郭や距離感は見えるわけで。

 弟の顔が私の顔に近づく。

「クリーム」

 え?と思う間もなく、弟の唇が触れる。

 柔らかい感触が、私の唇のすぐ上に触れた。それから、そっと唇の上を舌でなぞられ。

 うわっ、何これ……。

 き、き、キス手前。えっと。

 クリームついてたって、ついてたからって……。

 そりゃ、「弟」のキャラならやりそうな行動だといえば、そうとも言えなくはないけれど……。

 だけど、ダメだ!やっぱり私は「姉」にはなりきれない!

 すんなりと受け入れるとか無理!

 キスじゃないにしても、これ、距離ちかすぎるよっ。唇と唇との距離近すぎるよっ!

 うぎゃーっ。

 頬も目も耳も真っ赤になってる自信があるよ!

 えーっと、早く離れてっ!

 ま、まだついてるの?

 つっと、最後に弟の舌が少しだけ唇と唇の間をつついて離れた。

 なーーーっ!

 声にならない声!は、は、恥ずかしすぎるっ、何なの、この羞恥プレイっ!

 弟は平気なの?うううっ、表情見えないしっ。顔色さえ見えないっ。

 こんなに動揺してるの私だけとかっ!

 にゃーっ!

「はい、半分」

 半分パニックになっている私の目の前に、クレープが差し出された。まだ数口しか食べてなくて全然半分より大きい。

「まだ半分じゃないよ?」

「上半分食べて、下半分渡されても、半分じゃない気がして」

 あー、確かに。

 うん、そうだ。クレープって、円の中心部分にはあんまり具を入れてないもんなぁ。つまり、折りたたんだ下半分はクリームと少しの具があるだけ。

「はい、じゃぁ、交換」

 クレープを差し出すと、弟が顔を寄せてパクンと食べた。

 えっと、チェンジしないの?

 弟がどうぞとばかりに持っているクレープを私の口元に持っていく。

 ……。

 パク。

 ふ、ふわぁー、おいしい!

 キャラメルナッツ生クリーム&バニラ。

 名前を裏切らないおいしさだよっ!

 香ばしいナッツがたっぷりで、甘いキャラメルソースと、甘さ控えめの生クリームが口の中で混ざり合っておいしいっていったら。

 そこに冷たいバニラアイス。

 もぐもぐ。

 ふわー、幸せ。

 もう一口。

 パクン。

 もぐもぐ。

「クリーム」

 おいしい。

 ん?何?

 何か言った?

 ぺろりっ。

 うひゃっ。また、弟に口元なめられた。

 ん?あれ?

 これ、知ってる。あれだ。

 犬だ。犬って、飼い主の顔ぺろぺろなめるよねぇ。そっか。犬と一緒だと思えば、気も楽だ。

 楽だけど……。

「弟、食べにくいよ」

 と苦情はいれとく。


ご覧いただきありがとうございます。


オタク歴の長い主人公。基本は「私がモテるわけがない」です。

さらに悪役令嬢だし、ヒロインの邪魔することはあってもモテるわけがない、です。なので恋愛事には鈍い。いや、鈍すぎる……のです。

いくらなんでも気が付け!って思いますよね。私もそう思います。


というわけで、本編300話達成しましたー。わーい。皆さまのおかげで続けてこられました。

えーっと、それから、10月23日に投稿スタートしてますが、執筆開始はもう少し前のはず……と、ファイルのプロパティみたら、途中でパソコン買いかえてデータを移動させたのでその時点の記録しかない。いつ書き始めたのかは謎でした。てなわけで、1周年は投稿開始日ということにします。

なので、23日までカウントダウン。

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