第257話 おばさんらしい
改めて場所を変えた。
校舎を出て中庭に移動する。ここなら、人が近づいてくれば逆にすぐに分かる。
田中くんと中庭の中央あたり、何もない所で立ち話だ。
「先ほど、図書委員3年生の動きを文芸部から教えていただきましたわ」
相原さんから聞いた、本100冊寄付の話を田中くんに伝える。
「なるほど」
田中くんが小さく頷いた。
「一応、他のメンバーにも伝えようか?お昼休みに会議室に集まる?食堂で買った物を会議室に持ち込むことは可能だったよな……」
「まぁ、ランチミーティングですわね!」
私の言葉に田中くんの顔にクエッションまーうが浮かんだ。
え?
もしかして、こっちの世界ではない?
「お昼ご飯を食べながらの会議のことですわ」
「ああ、なるほど。聞いたことがあるな。社会人みたいだな、会議とか」
田中くんがふっと笑った。
し、しまった!
そうか、社会人としてはごくごく普通の単語だけど、高校生には聞きなれない単語なんだ……。
うっかりしてた。こっちの世界とあっちの世界で常識が違うとか、そういうことには気を付けるようにしてたけど……。
でもって、目いっぱいオタがバレないように気を付けてたけど……。
……。
もう一つ、ばれないように気を付けなくちゃいけないことがあったんだ!
中身が高校生じゃないってこと!
そうだよ、私、中身おばさんだもんっ!
おばさん臭出さないように気を付けないと。
しっかり社会人もしてたから、社会人っぽさとか出さないようにしないと。
だってさ、社会に出て何年かすると気が付くんだけど、やっぱり高校生とじゃ色々と考え方や感じ方、行動に差があるんだよ。
……イベント行っても、社会人と高校生じゃ色々と違うんだよねぇ。
まずは、夏コミや冬コミがどんな日程だろうと、高校生なら即友達と行く約束ができる。
社会人になると、予定表をめくる。会社のお盆や年末の休みを確認。
会社が休みじゃなければ、どうやって休みを取ろうかと考える。
……休みが取れないなら、仕事辞める!って過激な考えする人も少数だけどいるっちゃぁ、いる。
逆にある程度仕事を任されるような立場な人は「休めないんだよなー」って頭抱えて、知り合いに買い物を頼む準備をする。
あ、いや、違いって、それだけじゃないよっ。なんか、色々ともっとあるんだけど、あれ?どうして、私って、いつもオタ関連な例えになっちゃうんだろうか!
えっと、違い、違い……。
高校生なら、平気なひざ上20センチも、25歳過ぎれば痛い人。自然と遠のく……みたいな、そうそう、がんばる。ひざ上20センチも、女子高生として躊躇してちゃだめだよね!
あと何だっけ?
と、とにかく!
私、中身はおばちゃんだから、いや、若い、まだ若いけど、高校生からすれば立派におばちゃんだから……。
気を引き締めないと。
「じゃぁ、他のクラスの委員に伝えに行くか」
「では、私は会議室の予約をしに行きますわ」
二手に分かれた。
あれ?
若者といえば、メールでなくてライン。
そういえば……。
図書委員でライン使えば、こういう連絡ってあっという間なんじゃない?
わざわざ教室を回らなくたって……。
あうっ!
しまった、こういうところでも、ラインを使い慣れてないおばさん臭が出てたか!
いや、まて!璃々亜のボッチ臭だ、それは。うん。おばさん関係ないから!
璃々亜のスマホにラインを使った形跡が見当たらなくて、うっかりしてただけだから……がくっ……。ボッチ再認識とか……。
あれ?でもさ、田中くんとか芽維たんとか皐月たんとか皆ラインとかあんまりーだったし、別にボッチだからライン使ってないとかばかりじゃないよね?
うん、高校生でもライン使ってないのは普通と。よし。
ただ、図書委員消臭連絡……って、おばさん臭を消すための連絡じゃないってのっ!招集連絡とかは、ラインとか便利そうだよね?
相談内容な誰に見られるか分からないけど、ランチミーティングとか早朝会議の日時や場所連絡なら問題ないよね?
立ち止まり、スマホを取り出す。
ラインってどうやるんだろうか。後で調べるとして。
田中くんのアドレスを出してメール。
「図書委員でラインとかしませんか?一斉連絡とか楽になると思うのですが……」
と、打とうとして、こんなの会議の時に言えばいいじゃんと思って消去。
おっと、メールが来てる。
弟からだ。
なになに。
「夏はフランスに行くの?」
そうそう、昨晩は同志に「お盆といえば、フランスではなく日本だよね!」とメールしたんだった。
それだけで、私が夏休みにフランスへ行くことを予想できるとは……!ちゃんと日本って言葉に夏コミ的なニュアンスも組んでくれたってことだよね!
流石、同志!
ツーと言えば、カーと帰ってくる!
弟がいてよかった!
うふふっ。
えーっと、返信……学校に居る間は控え用と思ったけれど、丁度周りに誰もいないから、メールしちゃおうっと。
「まだ分かりませんが、家族旅行になりそうです」
兄と嘉久は少なくとも一緒そうだけど……。そもそも、兄は家族だが、嘉久は家族じゃない。
家族旅行と言ってもいいものかどうか……。いや、もう、嘉久は家族と一緒か。
嘉久が家族……。
うん、お兄ちゃんではないな。弟だな。璃々亜のが、絶対嘉久より精神年齢は上だよね?ってことは、あれだ。嘉久がちょいと面倒なこと言い出しても、年長者として温かい目で見守らなければならないってことか……。
うん、無理。
嘉久は幼馴染。それ以上でもそれ以下でもない……同級生だ。年齢的な差はない。
いつもありがとうございます。
おばさん……。なんかさ、高校生って残酷だよね。二十歳過ぎたらもうおばさんって呼ぶとか……。




