第254話 スパイ合戦らしい
「ごきげんよう、璃々亜様」
「ごきげんよう、相原さん、相良さん」
今日も昇降口で2人にばったり。じゃなくて、待っていてくれたのかな?
「璃々亜様、少しお時間よろしいでしょうか?」
相原さんが声を潜める。
「ええ、もちろんですわ」
何だろう、内緒話っぽいこのこそこそ感。
むふっ。秘密を共有するのは友達の証拠!いいね、いいね!このこそこそした感じ。
ドキドキワクワクです!
移動教室が並ぶ廊下に相原さんが進んでいくのについていく。奥まった陰に潜む。
相良さんは、私たちの会話が聞こえないように少し距離を取った。
そして、誰か来ないか見張りをするように廊下の向こう側を監視している。
ふおっ、なんだか、厳重な警戒態勢ですな!
相原さんが、人がいないのを再度確認すると、小さな声で話始めた。
「文芸部へ、図書委員の3年生から相談がございました」
お、図書委員の3年生と言えば、他の図書委員に協力するなと文芸部に行った人達のことかな?
「どうやら、図書委員の3年生のあるグループは、本をどこかへ寄贈するようですわ」
「本を寄贈ですか?」
なるほど。
社会貢献になるよね。文化的に価値ある行動だろうし。
読んだ本でまだ綺麗な物を図書館に寄贈するとか、古本屋に二束三文で売るよりも多くの人に読んでもらいたいという人いるもんね。
「ええ。どのような本を贈れば喜ばれるのか、文系部に尋ねに来たのですわ」
ん?
読んだ本を寄贈するわけじゃなくて……。
「喜ばれる本の調査ですか?購入して寄贈するということですか?」
「ええ。合計100冊購入して贈る予定だそうですわ」
そういえば……。
費用は一つのグループで10万円までというのがあったっけ。
……10万円って、結構な額だよね。1冊1000円の本なら確かに100冊買える。
いや、古本屋で200円平均で買えば、10万円あればもっとたくさんの本が買えるけど……。
古本で買うなんて発想あるかな?
無いよねぇきっと。
ってことは、もしかして予算の10万でサクッと本を買い集め、それをどこかに寄贈しておしまいなのかな?それって、委員長のグループ?
社会貢献は社会貢献だけど……。なんだか、金さえあればだれでもできる簡単な……。
あ、いや、そうでもないか?
嘉久とか漫画を本屋に選んで持って来させてたよなぁ。
まだ、自分たちでどんな本がいいのかあちこちにリサーチして選ぶだけ「社会貢献のために動いている」んだよね……。
……。
文芸部に本の選択丸投げってことはない、よ、ね?
「一人10冊ずつ本を選ぶノルマが課せられましたわ……」
丸投げかよっ!
ってことは、3年生のどっちかのグループは10万出すだけ……。
いや、案と金を出すだけ……。ふっ。
よく考えれば、そのお金も元はと言えば図書委員の?ん?
お金の出所ってどこ?
10万が、6グループで60万。そんな大金、図書委員が使えるの?
え?もしかして、グループ内でお金を出す必要とかあるの?
全然分かんないんだけど?
……って、今更だけど。
とにかく、10万と言えばずいぶんな大金。人に選ばせて自分の思い入れもない本を買うために使う金額じゃないよっ!
私なら、いくら流行りだからとか、いくら面白かったからって、東×京の同人誌なんて買わないもんっ!
絶対、絶対、絶対買わない!京×都の本以外、見たくない!
だって、京様は、都キャプテンのモノだから。
あ、でも……まてよ?
一端、東先輩と京が結ばれる。それを奪い取る都キャプテンみたいな話の流れの、1冊だと思ったらどうだろう?
……。
いや、無理!
だめだ!
一瞬でも東先輩にメロリンコな京様なんて、見たくないっ!
ぶはー。
そんな同人誌には1円たりともお金を使うわけにはいかないのだ!
いいか、もう一つ重要だから言っておくぞ!
「璃々亜ちゃん、璃々亜ちゃんって、BL好きだったよね?これ、友達が面白いって言ってたから、あげるね!」
ってな、BL好きっていう中途半端な情報でな、東×京本とかもらってもな……。
こーまーるーんーじゃぁーーーーーーっ!
私の好きなのはこれじゃないっ!
こんな本いるかっ!
とか、言えないじゃん。
好意でせっかくくれたのに……。でも、でも、喉から言葉が飛び出しそうになるんだよっ。
私が好きなのは京×都だーっ!って。たぶん、言われてもわかんないだろうけどさ。
つまり、何が言いたいかって言うと……。
その道に通じた人間に、知識もない人間が「好きでしょ?」って本をプレゼントしてもさ、相手が喜ぶかどうか分からないって話。
「どんな本にしようか、皆頭を抱えています……」
「それぞれ、好きな本をお選びになればよろしいのではありませんか?」
むしろ「これ、私の好きな本なんだ、璃々亜ちゃんも良かったら読んでみて」ってプレゼントしてもらった方がいいだろう?
興味のない分野の本でも、それによって知識や見識が広がり、新しい趣味にたどり着くかもしれないじゃん。
うん。
私のストライクゾーンからずれたBL本をプレゼントされるよりも、鉄の本とかもらった方が絶対にいい。
ん?
あれ?
「私の好きな本ですか?ですが、相手が喜ぶでしょうか……」
そういえば、璃々亜(前)って自分の好きな本を、兄と嘉久にプレゼントして微妙な目に遭わせてたような……。
璃々亜(前)の乙女チック少女小説は、うん、えーっと、流石に私でも理解不能だったんだから、殿方に至っては……。
「差し上げる方の年齢性別などを考慮したのち、その方たちを対象とした本の中で、好きだなぁと思った本をお選びになればよろしいかと……」
うん、今度は、男性向けラノベの中から面白いの見つけてプレゼントしよう。
あれ?
ラノベじゃダメなのか?
いや、そもそも、ラノベを読むのもダメか?そういえば図書館にラノベ……並んでなかったよな……。
がくっ。
いつもありがとうございます。
変な方向にすすんでいる気がしてならない




