第212話 財布の色はいろいろらしい
「璃々亜、前から欲しがっていただろう?」
ん?
朝食が終わると、兄が何やら包みをくれました。
「私に?」
何で、このタイミングで?
まさか、誕生日?
あ、いや、待て待て。璃々亜の誕生日は流石に知ってるよ。財布の中に入ってた保険証に生年月日書いてあったもん。
受け取るのをためらっていると、兄がにこっと笑った。
「嘉久が言っていたことも一理あるからな。貰ってばかりじゃ悪いからな」
え?
やだ。兄まで、私は1位を取れない前提で話をしましたね?
そして、自分は1位を取る気満々。
ちっくしょー!絶対1位取ってやる!……とは、なりません。はい。
身の程知ってます。ああいう模試は、1位を取る人はちょいと次元が違うのです。しかも、模試マニアっていう人がいて、受験とか関係なしで1位を取ることを目的とした社会人が紛れ込んでるらしいです。趣味は模試みたいな。
成功体験を模試に求めてるのかなぁ?塾の先生とかが実力試しにっていうのもあるみたいだけど……。何にしろ、そういう人に受験生が勝つのはなかなかにして難しいらしい。
あ、別に1位を取れない言い訳をしてるわけじゃないよ?だって、1位なんて言い訳しなくたって、全然手が届かないって知ってるもん。私の目標は別にあるもん。
「金曜日、楽しみにしてるよ。璃々亜の作ったお菓子はとても美味しいからね」
ん?
金曜日?
お菓子?
あ、お菓子部で作ったお菓子をあげてたっけ。貰ってばかりっていうのは、それのことか!
「ありがとうございます」
美味しいって言ってもらえると嬉しい。こうしてお礼の品をくれるのも嬉しい。
「開けてもよろしいですか?」
兄に手渡された包みを開く。
「お財布……」
かわいいミントグリーンの財布が出て来た。
二つ折りの財布。
中を開けると、内側はパステルイエローになってる!
そして、タグ発見。
CELINEN……。なんだっけ、これ、確かこれもブランドだよ。高い財布だよ。
お菓子のお返しに、こんな高い財布……。
っていうか、私が欲しがってた?
兄の顔を見る。
「これじゃなかったかな?璃々亜が言っていた風水財布。外が緑で中がパステルイエローかピンクがいいと言っていなかったかい?」
風水財布……。
それって、金運を呼び込むとかいうやつだよね?
おい、璃々亜(前)……それ以上お金を持ってどうする気だったんだ……。
「ありがとうございます!嬉しいです」
でも、私はありがたく使わせてもらうよ!
今使ってるピンクの財布も可愛くていいんだけど、ちょっと大きさが大きすぎてこてこてした飾りも邪魔で、重たいんだよね。
兄にもらったミントグリーンの財布はシンプルなデザインで、二つ折だから長財布よりも小型。
「早速今日から使わせていただきますわ!」
部屋に戻って、財布の中身を入れ替える。
コロン。
あ。
財布の小銭入れから、地球が出て来た。
弟に買ってもらった、ガラスの地球のストラップ。
何度見てもきれい。
でも、気が付いて良かったー。このストラップは学校に持って行かない方がいいよね。
身に着けてるのをうっかり弟に見られたら、正体バレちゃうもん。
コロリ。
「あ、大切なストラップを落としちゃった」
拾おうと伸ばす手。一足先に、ストラップを拾い上げた手があった。
「これは……あなたの?」
「ありがとう」
ストラップを受け取ろうと伸ばした手を、ぎゅっと握られる。
「姉さん……姉さんなんだね……」
「え?もしかして、弟?」
「姉さん……僕、会いたかったんだ。もう、正体バレちゃったんだから、いいよね?」
いいよねって?
弟の手が、私の手と恋人つなぎした。
ちょっ、どういうこと?
「弟、あの、今、姉の格好していないんだけどっ!」
「どんな姿をしていても、僕にとって姉さんは姉さんだよ」
って、ちょっと、これはまずいって!
校内で手をつないで歩くとか、なんたる公開処刑!
いやいや、せっかく見つけたオタク友達を離したくないのもわかるけど……。
弟の脳内、すっかりあのコスプレのせいで”弟キャラ”に洗脳されてない?
私は、コスプレ脱いだらただの人なんだけど!
「姉さんは、僕と手をつなぐの、嫌?」
かっ、可愛い顔しておねだりするなよっ!
そこまで妄想して、顔を知らないので妄想が途切れた。
可愛い顔とは限らないよな。
……。口元あたりはシュッとしてイケメン系だったが、目が細いとか小さいとか実は地味顔かもしれない。
……って、どうでもいいけど!と、に、か、くだ!
うっかりストラップを落として正体バレるとか、無いから。そんなベタな展開!偶然拾った相手が弟とか、世の中ありえないから!
いったい、校内にはどれだけの生徒がいると思ってるの!
いつもありがとうございます!
はいな!ストラップフラグは先延ばしですにゃ。




