第206話 白川の名前をご存じらしい
「家柄は関係なく、優秀な人が委員長になるべきだよね。君もそう思うだろう?」
2年の特待生男子生徒、わりとイケメンが、私を君と呼んだ。
家柄でなく、優秀な人が委員長に。
「ええ、もちろんですわ。よりよい委員会運営のためには、無能な者よりも有能な者が委員長になった方がよろしいと思いますわ」
ありがとう、特待生。
攻略対象というめんどくさい人間だったとしても、構わん。
今の発言は大切。
私が3年生になったときに、委員長にならないようにするためにはとっても大切。
私みたいに上に立つ能力のない者が委員長になるべきでない。
ああ、もちろん、BL同人誌を作るリーダーに抜擢されたら、頑張りますよ!
全身全霊を掛けて、ええ、長年の知識(前世含む)を活かして、それはもう、寝る間も惜しんでがんばりますとも!
……。それ以外では、がんばれないです。
だって、前世では後輩の指導さえ苦手だったもん。……とはいえ、小さな会社だったから、数年の間にできた後輩は一人だけだったけどね。
温かい人たちばかりの会社だったから、人の入れ替わりが少なかったのよね。
……私、そういえば突然死んじゃったんだよなぁ。会社の人たち、どうしてるかなぁ。
「む、無能っ……!」
3年生が顔を赤くしてる。
あ、失言か?
やばい、今の委員長を無能って言ったようなものか?
違うんだ!誤解なんだ!
「私、高等部から入学したものですから、鳳凰学園の方々について知らないことも多いのですわ。ですので、申し訳ありませんが、図書委員長を務めていらっしゃる先輩についても詳しくはありません。ですから、無能であるか有能であるかも存じ上げませんので……先輩のことを言っているわけではございません。誤解させましたら謝りますわ」
ぺこんと頭を下げた。
「そ、そうなの、仕方がないわね。私のことを知らないのであれば……」
ボスが口を開いた。
うお、そうか、ボスが図書委員長だったんだ。なるほど、知らないにもほどがあるね。私ってば、マジ失礼だ。
……っていうか、初めの委員会とかで紹介あったよね。うん、忘れてる。
人の顔も名前も覚えるの苦手なんだよなぁ。
「知らないからと言って、1年の分際で少し出しゃばりすぎではありませんか?」
と、ボスの取り巻きが口を開く。
あ、いや、取り巻きじゃないのかな。単に委員長の仕事を補佐してる忠実なる図書委員の一人なのかな?
確かにいくら2年生に発言を促されたとはいえ、意見をはっきり言いすぎたかな。
私の信条は「めだたない」だし。めんどくさいことには巻き込まれたくないし。
もう少し、言い訳しとこう。
「申し訳ありません。私が3年生になった時のことを考えてしまって……。家柄で委員長を選ぶとしたら……私がなる可能性が高いような気がして……。私のような無能な者に委員長が務まるはずはございませんから、つい……」
「貴方が、委員長に?」
ボス改め委員長が首を傾げた。
「まぁ、そうなるでしょうね。今の1年生のメンバーを見る限り、白川さんで決まりですしょう」
2年特待生がニッと人の悪そうな顔で笑った。
ですよねー。
何か、噂で聞く、すごいお家柄の人って、他に嘉久と三笠蔵って人だもん。
あ、私、嘉久とか三笠蔵とかと同じ委員会に入れば、委員長とかやらなくてもいいんだ。3年のとき、いざとなったら……って、あいつらきっと生徒会だよ!
てか、近づかない!絶対に近づきたくないってばよっ!てばよっ!
「1年の白川さん?」
ボスの顔が、青くなる。
何で?
あ、そうか。委員長なのに、メンバーの名前知らなかったとか恥ずかしいよね。っていうか、むしろなんで特待生は知ってたんだろう、私の名前。
「そうですよ、白川さんが家柄じゃなく、有能な人を委員長に選ぼうと言っているんですよ?」
特待生の言葉に、委員長が小さく言葉を返した。
「そ、そうですわね、有能な人間が長をするべきですわね……」
ほっ。
よかった。これで、私は3年になった時に委員長にならなくて済みそうだ。
一件落着。
「では、委員長を決めるために、誰が優秀なのか勝負しましょう」
むぬっ!
一件落着じゃないとな!
「委員長は3年生というルールもありませんからね、先輩。一番優秀な図書委員が、図書委員長になるべきでしょう?」
「何をいっていらっしゃるの?委員長は、すでに決まっているではありませんか」
「一度決まった委員長が交代してはいけないというルールはありませんよね?でしたら、誰が一番優秀なのか、分かりやすい形で能力を示した者が委員長になるべきではありませんか?」
あー、なんか、めんどくさいことになってる?
ま、いいや。
要は、2年生特待生男子生徒VS3年生現役委員長って話でしょ。
関係ないし。
「まさか、あなた、成績がいいからって、成績順にとか言い出すつもりじゃないですよね?」
取り巻きが、特待生を指さす。
え?もしそうならちょっとずるいよね。
っていうか、それじゃぁ、家柄順と変わらないじゃん。成績順にしても、図書委員としての能力とか関係ないし。
「まさか」
あ、そう。じゃぁ、何で勝負するつもりなんだろう?
「丁度いい物差しがあるじゃないですか。K3ですよ。図書委員としての貢献度を生徒会が判断してくれるんですから。貢献度が高い案を出した点数の合計で競いませんか?」
ああ、またKHTがらみか。
「あら?それでよろしいのかしら?私はすでに、希少本の公開案で一歩リードしていますけれど?」
ふふんっと鼻を鳴らす委員長。
特待生は、敵対心むき出しの目で委員長を睨み付けた。
「勝負にはルールが必要です。そうでしょう?」
ルール?
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