第196話 何かを忘れているらしい
手描きのメルアドを交換。
「じゃぁね!」
と、手を振って更衣室に向かおうとすると、腕をつかまれて、ぎゅっと抱きしめられた。
え?
別れのタイミングで感極まって抱きしめるとか、もしかして弟って、外国生活とかしてた?
あかん、色々弟について考えちゃうと、そのうち正体に行きついちゃうから考えちゃだめだ。
きっと、上流階級では海外の方とのお付き合いも多いから、ハグ程度当たり前に違いない!
「絶対、絶対、絶対、また会ってね。連絡もしてね」
「うん。もちろんだよ。イベントのこととか言えるの、弟しかいないんだもん」
「もし、連絡してくれなかったら……。調べちゃうかも」
え?
「学校で聞いて回るの?」
「ううん、学校では調べないよ」
ちょっと、学校で調べないで、別のところで調べるって、探偵でも雇う気ですか?
「ごめん、あの、違うんだ、その、あの、僕……連絡くれるっていっていてずっと連絡がなかったら、病気とか、何かあったのかって心配になっちゃうから、あの、だから、ストーカーとかそういうのするつもりとかじゃな……く……て……」
ふふ、そっか。
メールしか連絡手段がないと、唯一の連絡手段であるメールが途絶えたら、生存確認でいないもんね。
あったなぁ、生前も。
いつもツイッターで呟いてる同人作家が1週間姿を現さない、生きているのか?って大騒ぎになったことが。
定期的な連絡は大事。
「ふふ、じゃぁ、土曜日には毎週メールするね。日曜にイベント行けそうかどうか」
「分かった。メール楽しみにしてる!それで、僕、何とか我慢する」
我慢?
そんなにイベント行きたかったら、私と一緒じゃなくて一人で行ってもいいのに。我慢するくらいなら……。
いや、まだ、一人だと不安なのかなぁ?
前世の私も、高校生のころに一人でイベント行ったことなかったもんなぁ。
そうして、手を振って別れた。
更衣室で、ジャージから私服に着替え、前髪をピンでとめる。
マスクは念のために白のでかいやつから、ピンクの少し小ぶりな奴に変更。メガネは外す。髪型も変える。目元の化粧も印象が変わるように少しいじる。
さ、帰ろう。
イベント楽しかったなぁー。
あ、遊具王の本!
弟の紙袋に入れてもらっていたんだ!まぁいいか。きっと一緒にロッカーに入れておいてくれるよね。
「更衣室の使用は30分まででーす」
おっと、スタッフが退室を促すアナウンスを始めた。
荷物をもって、立ち上がる。靴も履き替えた。
さぁ、帰ろう。
えっと、いったんまた百貨店によって、前髪ウィッグと化粧と髪型を変えないといけないな。
百貨店の化粧室で、いつもの璃々亜に戻る。
百貨店で化粧室を利用したんだから、何か買い物しないと。
んー、何がいいかな?
そうだ、靴!学校指定のマークが入ってないローファー。次にコスプレするときに履くのにいるもん!
時間を確認する。
ああ、夕飯までもう時間がない。
百貨店まで蜂川さんに迎えを頼もう。
百貨店まで迎えに来てくださいとメールする。
ん?何でこんなところに居るのかって思われる?
皐月たんの家に行って、一緒にランチするために外に出て、そのままウィンドウショッピングしてたくらいな感じ?
百貨店でウィンドウショッピングなんてするかな?高校生が……。
そ、そうだ!
その後、兄にお土産を買おうと寄ったとかどうかな?
兄も嘉久も、私がお菓子部で作ったお菓子をとても楽しみにしてくれてるから、スィーツが大好きなんだよね?
何時ごろ到着する予定ですって蜂川さんからの返信を確認して、デパ地下へGO!
スィーツ、何がいいかな?
うーん、こんな時璃々亜の記憶がないと不便だわ。
兄の好みとか嘉久の好みとか全く分からない。
よし。そんな時は、何種類か買って、どれがいいですか?って手段を取ればいいのだ!
……うん、単に、私が色々食べてみたいんだけど。
宝石のように輝くフルーツがたっぷり乗ったタルト……。新鮮玉子と濃厚牛乳で作った瓶入りプリン……それから。
えっと、3人分の、何日分?っていう量を買ってしまいました。
大丈夫。今日の食後と、明日の分にしましょう。
私、でも、何か大事なことを忘れてる気がするんですが……。
明日、月曜日に何があったんだっけ?
!そうだ!模試!
模試があったんだ!忘れてた!もうすっかり、さっぱり、これっぽちも覚えてなかったよ!
うわー、今何時?帰ったらもう夕飯の時間だ。
ご飯食べたら勉強しないと!
えっと、模試だけだっけ?忘れてるの?
え?
身体測定?
ちょっ!
ダイエット!
やだ、私、この手に持ってる大量のスィーツ、どうしちゃったの?
……。
ほ、ほら、勉強して頭を使うと、脳がエネルギーを必要とするし……。
疲れたら甘い物がいいって言うし……。
ええーん。
いろいろ食べたいよぉぉぉぉぉ!




