第189話 写真を撮影するらしい
「あ、あのさ……」
弟の少し上ずった声。
間違いなく、弟も同人誌見て焦ってる。
「弟と姉のコスプレですよね!」
救世主!
「あ、はい、そうです」
声を掛けられ助かった。
「今から、NARUKOコス合わせがあるんですけど、よかったら、参加してください!」
合わせって、NARUKOレイヤーさんたちが集まるってことだよね?
集合写真とか撮るんだよね?
えっと、写真に写るのはちょっとまずいよねぇ。
どうする?
弟の顔を見る。
表情は見えないけど、なんだか行きたそうな雰囲気だよね?ソワソワした感じが、ちょっとした動きで感じるんだけど。
ふふっ。こういう意思疎通みたいなの、本当に双子みたい。くすっ。
「弟、行く?」
尋ねたらこくんと頷いた。
よし。じゃぁ、行きますか。今日は弟のイベントデビューだもん。
満足して、また行きたいと思えるような素晴らしい日にしてあげなくちゃ!
写真は……、また後姿とかで映るか、顔を目いっぱい下に向けて前を向かないとか、カメラに顔が映らなければいいよね。
声を掛けてきた人は、部長のコスプレしてる人だ。
コスプレメイン会場となっている西館屋上の、トイレ周辺で集合していた。
「うわー、すごい人数だね!」
「全部NARUKOコスプレ……」
何と、鳴子を手にもって、実際に踊っているグループまである。あれって、何話かしらないけど、祭りの時の衣装だよね?他の学校の祭りのときの衣装のコスプレもいる。
途中までしか知らないから分からないけど、鳴子を手にした衣装コスプレが結構多い。
見栄えするもんねぇ。
とはいえ、私と同じ黒ジャージの姉レイヤーさんも何人かいる。
「弟集合で写真撮りましょう!」
と、声を掛けられ、弟は連れていかれた。
弟人気だなぁ。弟コスだけで、20人近くいるんじゃないか?祭り衣装とか制服とか、色々なバージョンがあるが、前髪、黒縁メガネ、マスクで顔を隠した集団……。ぐおっ、怖っ。コスプレじゃなければ、変態集団にしか見えない。
……。黒ジャージ弟も10人ほどいる。でも、あれ?
何だろう。
私の弟につい目が行ってしまう。
って、まてまて、今、私、何を考えた?
私の弟?
いや、違う、違うって。
私のじゃないから。
えっと、私と行動を共にしていた弟ね。
弟が、何やら私にジェスチャーしてる。ん?スマホ?
ああ、写真を撮ってほしいのか。
他の人に頼んでもいいのに、やっぱり弟も、一緒に行動を共にしていた私が特別なのね。
って、当たり前か。全くの赤の他人に頼むよりも少しは知ってる人間に頼む方が楽だもんね。
スマホを構えて、弟軍団の集合写真を撮影する。
スマホの画面越しに見ても、私の弟が一番似合ってるな。
おっと、私と行動を共にしていた弟を略して私の弟。もう、それでいいよね?長くて言うのめんどくさいからさ。
身内のひいき目?違うよね?
集合撮影が終わって「ありがとうございましたー」なんてみんなでそれぞれ声を掛けあっていると私の弟の元に、何人かの女子が寄って来た。
「あの、一緒に写真お願いしてもいいですか?」
女子の一人は、私と同じ服装。つまり、姉のコスプレをしてる。
弟が戸惑いながらも了承すると、姉は弟の腕に抱き着くポーズをとった。
うん、まぁ、姉と弟といえば、そんなポーズもあるもんね。
……。いや、まぁ、そうだよね。いいんだよ?別に……。
弟が、私に視線を向けた。あ、スマホ、写真を撮れということなのかな?
スマホを構えて、知らない姉が私の弟の腕に抱き着いてる写真を撮る。
「姉さん、写真、一緒にとってもらいたいんですけど……」
スマホから視線を外すと、先ほどの弟集合に居た一人の弟から声が掛かった。
「えーっと、顔が映らなければ……」
「あ、えっと、じゃぁ、あのポーズお願いしてもいいですか?」
あのポーズ?
見ず知らずの弟は、知り合いにカメラを預けると私の手を取ってカメラに背を向けた。
恋人つなぎの手を上にあげる。
ああ、あのポーズって、それかぁ……。何話だかの表紙になってるって言ってたから、有名なんだろうね。
……。
手を挙げたまま、数秒。
まだ撮影終わらないのかな……。
恋人つなぎをしている手……。
違和感。
何、この違和感。
……。
ああ、そうだ。私の弟の手と違う。
ずっとつないでいた弟の指はもう少し細くて、節もこんなに手に当たらなかったよ……。
この人の手の平は、ざらざらしてて……。
なんだか、少し……。
ちょっと嫌だ。
この手は、弟の手じゃない。
いつもありがとうございます。
本日遅くなりましたー。なんか、初めての恋人つなぎに刷り込み現象が起こったらしい。大丈夫か~




