第145話 禿なんてありえないらしい
おはようございます。璃々亜です。
朝5時です。今日も朝から勉強なのですが……。数学、本当に煮詰まってます。
昨日、夕食のあと兄に少し質問したのですが、また難問と出会ってしまいました。……うん、難問じゃないんだけどね。
私にとって、中学の勉強は、すんごぉーーーーーく昔に習った内容だから、思い出すのに時間がかかるし、細部は思出せないのよっ!
そんな状態で、それを元として高校の授業が進むものだから「ま、ま、ま、待って、私に時間を頂戴!」ってなもんよ。
時間さえあればどうにかなるわけでもないが……。時間さえあれば、多少はマシになると思うの。もちろん、数学なんて将来何の役にたつの?とかそんなこと考えたくなる気持ちもあるけど。いや、違うんだ。
勉強するとか、分からないことを理解しようと努めるとか、その過程が大事なんだよね。
社会に出ると、その連続。できません、やれません、しりません、おぼえてません、ならってません……仕事ではそんな言葉は言い訳にならない。
とはいえ、中高生のころって、そんな社会に出てからの話されても右耳から左耳だったりするんだよなぁ……。だから、分かりやすく「受験のため」って思わせた方が早くて。でもって、受験する気がない子は、じゃぁいいやって投げ出しちゃうんだよなぁ。
そもそも、小学校で分からないことがあると、それを元にした中学の勉強も分からなくなっちゃうのが算数や数学の怖いところ。
頭のできが云々だけじゃないんだよね。ちょっとインフルエンザにでもなって1週間学校休んじゃったとか、そんなきっかけで分からなくなることもあるわけで。
親がその部分を教えてくれるとか、学校の先生がちゃんとフォローしてくれるとか、塾で教えてもらうとか、そういう取り返すチャンスがあればいいけど……。
ないと「分からない」「私はできない」「どうせバカだし」と、自分の限界値だと思い込んじゃうこともある。
やればできるっていうのは、幻想でも何でもない。
もちろん、やってもできないことだって世の中にはたくさんあるけど、そのたくさんと同じくらいやればできることっていうのはあるんだよね。
あれ?
そうすると、もしかして……。
私にはできないと思い込んでいたけれど、やれば、私にもできるんだろうか?
BL漫画……。私にも、もしかして描けたりしちゃうんじゃないだろうか?
漫画家になることは無理かもしれないけど、もしかして同人誌を出すことは、できるんじゃないの?
あー、なんてこと、なんてことなの!そうよ、やりもしないで私、あきらめてたけど、同人作家に私もなれるかもしれない!ほ、ほら、脳内には兄と嘉久のおいしいボイスがいっぱい録音されてるから、それを都キャプテンと京様のセリフとして漫画を描くことができれば……。
きゃはーっ!超楽しそうだわ!
生きる希望が湧いてきた!
うふ、うふ、うふふっ!
あー、でも、この環境では描くなんて無理だよねぇ……。大学行ったら、一人暮らししよう。
一人暮らしをするためには、自宅から通えるエスカレーター式の大学に進学するわけにはいかないよね。ってことは、外部受験だ。
そして、鳳凰大学よりもレベルが上の学校を受験するのではなければ「なぜ外部受験をするんだ」と言われるわけで。
鳳凰大学よりも上の学校で、なおかつ自宅から通えないとなると……。医大系?いや、医学部はやっていけそうな気がしない。
東大なんて入れないだろうし、そもそも自宅から通えちゃうからなぁ。あとは、京大、阪大、名大、北大?やばい、どこも無理そうな気がしてならない。
どんな大学があるかなんて、全然分からない。ちゃんと調べておかないと。学部も考えないとなぁ。もし、破滅ルートに乗ったとしても、将来自立して働ける学部がいいな。とにかく今は、受験にそなえて勉強を頑張ろう。
……目の前の数学の問題にくじけそうだけど。
兄に質問したいけど、またジョギングだろうなぁ……。
一汗かいたからと、その後兄はシャワー。なんとさわやかな朝の習慣でしょう。
私、いくら時間があっても、前世でも今も、朝シャンなんてしません。ちゃんと夜に洗ってるからね!朝まで洗うと洗いすぎ!
あんまり頭を洗いすぎると、はげるんだって知ってる?
あ、あれ?兄、大丈夫かな?
思わず、朝食の時間に、兄の頭部に注目しちゃったよ。
「ん?何だい、璃々亜?もしかして、癖でもついてるかい?」
兄が髪を軽く手でなでつける。
「い、いえ、なんでもありませんわ」
兄の毛は、柔らかい猫毛系だ。猫毛系って、禿やす……ごにょごにょ。
乙女ゲームの攻略対象に禿キャラはいませんわ!ええ、いませんとも!
朝食に集中だ。
今日の玉子料理はブロッコリーのキッシュ。うわー、オシャレ!
なんだろう、卵料理の中で、オムレツ以上にオシャレな感じだよね!
まるで、ケーキのように三角にカットされたキッシュが、白い皿の中央に乗っている。そこに、緑鮮やかなソースが掛けてある。白い皿にもソースがくるりと円を描いている。オシャレ。盛り付け方もオシャレ。
ナイフとフォークを使ってキッシュを一口サイズに切り分け、ソースをたっぷりとつけて口に運ぶ。
あ、このソースおいしい。青臭いというか、すっきりした野菜の味はアボカドかな。マヨネーズと、あと香辛料の……なんだろう?ブロッコリーにも玉子にもよく合う。
添えられていたプチトマトにもソースを付けて食べる。うわー、ハンバーガーが食べたくなった。パンにトマトとハンバーグはさんでこのソースかけて食べたらおいしそう!
って、嘉久パンにプチトマトとキッシュとソースをはさんで食べてる!
な、何?もしかして、私と食の感性が似てるってこと?
ああ、口の周りにソースついた。ナプキンの端で乱暴にふき取る。
ぐぐ、何ておいしそうに食べやがる!
私は……同じように食べたいけれど、さすがに、お嬢様が手づかみで大口開けてパンを口に入れるなどするわけにはいかない……。ちぇっ。
仕方がないから、まだトマトとソースの味が口の中に残っている間に、急いでパンをちぎって口に入れる。
やっぱり、間違いない味ですね!
もぐもぐ。はー、おいしい。
ゆっくり咀嚼してごくんと飲み込むころには、嘉久は半分ほど食べ終わっていた。速いな!
「ところで、璃々亜のクラスは、K3のクラスポイント獲得に何か動き出したかい?」
K3……。うふふ。京様の隠語を、都キャプテンボイスで聞ける日が来るなんて、璃々亜、幸せ。ほにゃーん。
「ん?幸せそうな顔してるけど、何をするんだい?」
はうっ!
い、いけない。私のポーカーフェイスさん、帰っておいで!
「いえ、お食事がおいしくて、幸せだなぁと思っただけですわ。クラスでは、まだ何も決まっていませんわ。次のクラス会までに各自考えてくるということになっています」
「そうか。私のクラスも同じだな。とりあえず、全国模試開けに動こうということになっている。嘉久のクラスはどうだ?」
「ああ、うちもそんな感じだな。いや、むしろそれよりも消極的かもしれない。他のクラスの動向を見てから考えようという意見が出たくらいだからな」
猪突猛進の嘉久がいるのに?いや、もしかしてお茶会部の掃除で手一杯なのかな?なんか嘉久って意外と不器用そうだから、あれもこれもって無理なのかもしれない。
ということは……。
「では、1年では5組が今は一番話が進んでいるということでしょうか。もうすでに2つ、案があるそうですから」
「何だと?もう、2つも!こうしてはいられない!ごちそうさま!敦也兄、璃々亜、お先に失礼する」
嘉久は、残っていた野菜ジュースを一気に飲み干すと、席を立ち早足で去っていった。
あ、猪突猛進スイッチが入った模様。
負けず嫌いだなぁ。……3組のクラスメートさん頑張ってね……。私のせいじゃないからね?私が、うっかり5組の話をしたせいじゃないからね?
恨むなら、嘉久を恨むがよい。
「璃々亜は情報通だね。5組の話まで知っているのかい?」
「5組のクラス委員が仰っていたのを耳にしただけですわ」
「5組のクラス委員というと、確か須賀グループのお嬢さんだったね」
そうそう、確かに須賀とかいう名前だった。
「確か、璃々亜は面識がなかったと思うけれど、仲がいいのかい?」
仲がいい?
……どちらかと言えば、険悪な感じだよね?相原さんの本を踏みつけたし!本を雑に扱う人間とは仲良くなれる気がしない。
おっと、眉にシワ寄っちゃったかな。ポーカーフェイスセット完了。
「いいえ、特に仲がいいわけではございませんわ」
「何かあれば、言いなさい」
兄が氷のような声を出した。
さ、寒い。背筋が寒い。
何かって、何だろう?兄、ごめん。何を怒ってるの?
はっ、もしかして、将来禿げるかもって覆ってたのバレた?
いつもありがとうございます。
えーっと、一見無駄なようで、つながっている部分もございまして……。
もちろん、無駄な個所もたくさんありますが、必要な部分だけ書くと、先が見えちゃうので、隠す意味合いも込めて、色々押し込んでるのでございまして、ごにょごにょ。
何が言いたいかといえば、
兄の将来禿疑惑は、書かなくてもいいような話なのですよ!
乙女ゲームのキャラクターに、将来禿るかどうかの心配なんてしないもんね。
財力あるし、すんごい高性能でまったく分からないづらくらいこっそり作っちゃうだろうし。
璃々亜は、兄のづらを発見して「もしかして、兄はコスプレするつもりなんじゃ!」とか勘違いしてひゃほーって喜びそうだとか、誰も気が付かないのに、母だけが気づいちゃうとか、そういうのは話の流れで必要な……げふんげふん。
すまん、兄、お前、どうやら将来はg




