第135話 チケットの活用方法で悩むらしい
「ふふふ、驚くのも無理はありませんわ」
皐月たんが、右上で綴じられたプリントの束を一つ手にした。
「漫画を資料として作られた、チケットの活用方法ですわ」
「チケットの活用?」
あー、あれか。
あの大量の漫画を読んで、資料にまとめたのか。
って、まとめたにしては、プリントの枚数多いな。一人分で50枚は重なってないか?……それほど、チケットの活用法を広めたいのか!
「ええ、なんでも新入生歓迎会で、ネズニーを貸し切りにしなかったの予算が余ったそうですの。余った予算をどのように使えばいいかということで、ネズニーのチケットを配布することになったのです」
皐月たんの言葉に、芽維たんが目を輝かせた。
「え?本当?嬉しいー!」
芽維たんが小さくとびはねた。
「ふーん、いいんじゃね?この間行って、また行きたいという人も多いと思うよ。立花が私も行きたいって騒いでたし」
そうか、田中くんは今度は妹の立花ちゃんと行くんだね。
芽維たんは誰と行くんだろう?
「立花ちゃんと行くの?私も一緒に行っていい?」
「ああ、もちろん。立花も喜ぶよ」
え?芽維たんは、田中くんと一緒に行くんだ……。
えっと、それって……。
イベントだよね?ヒロインと攻略対象が近づくための……。
私も一緒に行きたいなんて言ったら、二人の邪魔になっちゃうよね?
だって、ヒロインの邪魔するなんて……、悪役令嬢みたいじゃないの……。
「芽維様は誰をお誘いするのですか?」
皐月たんも、今の話を聞いていただろうに、芽維たんに尋ねた。
「ペアチケットが配られるようですよ。もう一枚はどう使われるのですか?」
「えー、ペアなんだ!わー。どうしよう、え、え、えー。皐月さんや璃々亜さんはどうするの?」
あー、そういえば、私はどうしたらいいのかな?ペアチケットってことは、誰かを誘って一緒に行くってことだよね?
……私の友達といえば、芽維たんに皐月たんに、相原さんと相良さん。ふっ、どうだ、増えたよ!相原さんと相良さんも友達だよーっ!私、ボッチじゃない!
っと、話を戻す。
皆この学校の生徒だから、同じようにチケットもらうわけでしょ?そうしたら、チケットを渡す必要なんてないよね?
あれ?私、チケットを渡す相手がいないの?ボ、ボ、ボ、ボッチじゃないよ!ガクブルッ。
黙り込んでしまった私に、皐月たんがプリントの束をパラパラとめくって見せた。
「璃々亜様は驚くかもしれませんわね?」
皐月たんの言葉に芽維たんが声を上げた
「え?何で驚くの?」
「貴方のために、チケットを用意しましたというのが普通の世界もあるんですわよ。貴方には貰い物のチケットで十分でしょうと、軽く見られていると感じる人もいるのです」
芽維たんが、んーと、額に手を当てて考えた。
「貰ったチケットで、枚数が限られてるんだから、逆に誰を誘おうかなーって悩んで、その人に決めるわけだから、全然軽く見てないよね?そうだよね?」
と、芽維たんに同意を求められた田中くんが返事をためらっている。
「いろいろな考え方がございます。ですので、今回生徒会ではこのような資料を用意したのですわ。貰ったチケットの活用方法例が載せてあります。璃々亜様もこちらを参考になさってはいかがでしょうか?」
皐月たぁーーーん、どれだけ参考にしても、私、誘う相手が……相手が……。
ぐちゅんっ。
パラパラと皐月たんに差し出された資料をめくる。
ふと目に留まったのページの漫画。
『ペアだからって、誰かと行くって考えがそもそも間違ってるんだよ!』
『は?あんた何言ってんの?』
『見てみろよ、ペアチケットって書いてあるけど、中身は2枚のチケットだ。何も二人で行く必要なんてない』
『は?他にも誘うってこと?』
『バーカ、誰が誘うかよ!一人で2回行けばいいだろ?』
『え?』
『せっかくもらったんだから、2枚とも自分で使うんだよ!』
こ、心が、心がえぐられました。
ボッチでネズニーを2回とか……。
ボッチでネズニーを2回とか……。……。……。ぐっ。コミケならボッチだって平気なんだけどな……。
実際、みっきゅんが仕事が休めないときは何度か一人で行っている。
そうだよ、社会人は時にはコミケを犠牲にしてまでも仕事に行かねばならぬときがあるのだよ!
ぐすっ。辛い。
だって、年末のさ、仕事納めの最終日とコミケが重なるとさ、休みにくいんだよ!掃除とか特別な行事があったりして……。
「コミケいけないから仕事辞めた」ってフリーターになった人間って、マジでいるから。
そんな人に比べたら、私もみっきゅんも、まだまだ常識人なんだなって反省した。いや、そこ、反省するとこじゃないから!
常識から逸脱した人間がえらいわけじゃないから!
っていうか、ボッチでネズニー2回なんてありえないだろう!誰が実行するんだ!
ん?まてよ?
ボッチの皇帝とまで呼ばれた男がいたな。
奴ならやりかねん!
ボッチだろうとなんだろうと、ネズニーに行くに違いない。それも「全アトラクション制覇」を目標に突き進むに違いない……。
哀れな。
ま、待て、待てよ?
土日になると、嘉久は決まって私に付き合わせようとしてなかったか?
「璃々亜、お前もチケットもらっただろう?じゃぁ、明日はネズニーな!」とか言われたりなんか……。
うわー、やだ。絶対やだ。
食事も忘れてアトラクション制覇でネズニー内をただ回るなんていやすぎる。しかも、きっと、途中で暴走した嘉久は私を置いてく。
あ、いっそ置いていかれたほうがいいっちゃあいいんだけど……。ネズニーをボッチで回る女子高生……。どんだけ友達いないんだよ!って涙を誘うわ!
キャストの皆にも気を使わせちゃうわ!
迷子だって思われるわ!
ナンパされまくるわ!
……、はい、最後のはないですね。失礼しました。
やばい。早々に、チケットの使い道を確定して、嘉久の誘いを断れるようにしておかなければ
ありがとうございます。
おかしい、この場にいない嘉久がどんどん哀れな状態に……




