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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第115話 歓迎会の予算が浮いたらしい

「璃々亜、少し時間あるかい?嘉久も」

 朝食のあと、兄に話があると言われ、3人で居間に移動した。


「まず、璃々亜にはお礼を言うよ」

 ふえ?いきなり、なんのお礼?

「歓迎会だが、帰りのバスで2年3年に簡単に聞き取り調査をした結果、大変好評だった」

 兄が、A4サイズの紙を数枚取り出した。

 ええ?帰りのバスの中で、そんなことしてたんだ。

 私たちのクラスはなかったよ?


 受け取った用紙に目を通す。

「昨年度と今年度を比較して」

 というような文字が目に入る。

 ああ、そうか。貸し切りだった時と、今回の優先パスを使ったものとの比較意見が必要だったんだ。だから1年生には調査してないのか。

 おおむね、貸し切りよりも雰囲気を楽しむことができたというような内容だ。

 中には、黒い感想もあった……。並んでいる愚民たちを嘲りながら優先パスで入るのは気持ちよかったって……。

 誰だ!そんな感想を持った奴は!いや、感想を持つのは勝手だが、それを口に出すなyo!

 ぐお、人込みで迷子にならないように固まって行動していたので、友達との結束が強まったですって。

 貸し切りじゃないときに行く練習になった。並んだときの対策を講じる必要性に気が付いたって、なるほどねぇ。

 楽しかったと単純な意見ばかりではなく、役だったっていう意見もあるだ。

 どちらにしても、肯定派が多くてよかったよ。


 貸し切りにならなかったのは、私のせいだと責められても困るのです……。

 ああ、でも否定派も少数ながらいる。

 人込みが苦手だから疲れた……か。そんなんじゃぁ、コミケに行けないぞ!

 ネズニーなんて比じゃないくらいの人込みだから!しかも、夏は臭いんだからね!冬はトイレは長蛇の列なんだからね!すんごい覚悟が必要なんだからね!

 ……あ?別に、コミケには行かない?

 そ、そうですね……。うちの学園の生徒は、行かないでしょうね……。ぐすん。


「これだけ好評だと、逆に去年までの貸し切りがどんな様子だったか気になるな」

 嘉久の言葉に頷く。

「それでだ、璃々亜、貸し切りしなかったおかげで、満足度が上がった上に、予算がかなり安く済んだ」

 そうなんだ。っていうか、貸し切りにするのって、どれくらいの予算が必要なんだろう……?

「それでだ、浮いた予算を何に使ったらいいと思う?」

 

 はい?


 えーっと、何でそれを私に尋ねるかな?

「生徒会でお考えになってはいかがですか?」

「ああ、もちろん最終的には生徒会で話を詰めるつもりだよ。ただ、もともとこの予算は1年生の歓迎会のためのものだからね。1年生として、浮いた予算で何ができればうれしいのか参考までに聞かせてほしいんだ」

 あ、そう。別に1年生限定で使う必要もないと思うけど……。

 んー、何がいいかなぁ。


「嘉久様は、どのようにお考えなのですか?」

 分かんないときは、丸投げぽーい。

「そうだな、もう一度ネズニーに行ってはどうかと思うんだが」

 ……。

 全部制覇できなかったわけですね。

 もう一度行って、全部のアトラクション制覇を狙っているのでしょう?

「わざわざ学校の行事で同じ場所に行くのはどうかと思いますわ。各自、次はデートでも友達同士ででも行けばいいと思いますわ」

 そうでしょう、お兄様という顔を兄に向ける。

「そうだな、各自、家族で出かけて楽しめばいい」

 家族か。

 あの父や母と一緒に……?たまにしか帰ってこないのに、そんな時間あるのかな?

「璃々亜、一緒に行こう!」

 嘉久が誘ってくるが……断固断る!

 嘉久、お前にと一緒に行っても疲れるだけだろう!全部のアトラクション制覇の野望に付き合う気はない!


「璃々亜と行くのは私だ」

「敦也兄も誰かとデートすればいいだろう!」

「何を言っているんだ嘉久!お前こそ、クラスメートでも誘っていけばよかろう?」

 二人が、私をネズニーに誘っているが……。そんなに行きたいの?

 だったら……。

「お兄様、嘉久様、お二人で行かれてはどうですか?」


 行きたい者同志で行くのが一番だよね!いい提案したわ。

 京様ボイスと都キャプテンボイスで……。ネズニー。

「京が乗りたいものに付き合うよ」

「キャプテン……だけど……」

「ずっと来たかったんだろう?それに、今日はこの間の試合で頑張ったご褒美だ」

 薄暗い中を二人乗りで進むアトラクション。誰の目も気にせず、いつしか二人は……。

 きゃはーっ!やばい、脳内録音するために、ネズニーでの二人の会話を聞きたいですよ!

 こっそり変装して後を付けるか?

 いや、ダメだ、絶対にばれる……。

 だれかーっ!盗聴器を、盗聴器を私にください!

 おっと、やばい一線を越えちゃうところだった。あぶない、あぶない……。


 あ、そうだ。

「先ほどの、余った予算のお話しですが、ネズニーのパスポートを配ってはいかがですか?」

「パスポートなんて自分で買えるじゃないか?わざわざ配らなくても」

 分かってないな。分かってないよ、嘉久。

「太古の昔から、デートへ誘う口実の一番は、チケットをもらったんだけど一緒に行かないか?というものですわ。映画のチケットだったり遊園地のチケットだったりコンサートのチケットだったり、内容はいろいろですが」

「デートに誘う口実?」

「ええ、そうですわ。せっかくいただいたチケットを無駄にしたくないから誘ってるんであって、デートの誘いじゃないぞっていうことです。つまり、断られても精神的ショックが少なくて済むわけです」

 私の言葉に、兄が眉を寄せる。

「だが、誘われた方は、無駄にしたくないという気持ちで誘われたら、不愉快に思わないか?自分のためにわざわざ取ってくれたチケットではないわけだろう?」

 はー、金持ちはめんどくさいなぁ。

 確かに、新聞屋にもらった遊園地の券ごときで、私をデートに誘うなど10年早くてよ?っていう人もいるかもしれない。

 だけど、普通の中高生は、お小遣いの額からすれば、無料の遊園地の券はかなり魅力的なんだよ!

「不満に思うような方は、そもそもその殿方に興味がないのですわ。脈があれば、誘ってもらえたのを嬉しく思うものです。それに、誘われた方も、デートのお誘いにほいほいとのるのは尻軽だと思われてしまうかもしれないという心配がなく、誘いを気軽に受けることができますわ。見たい映画だったの!とか」

 

「璃々亜……」

 兄が低い声を出した。

 うええ?

「やけに詳しいが、そういうことがあったのか?」

「そういうこと?」

「誰かにチケットをもらったからと誘われたことがあったのか?」

 ……。

 前世も含めて、無い。

 何ということだ!

 もしかして、映画のチケットもらったんだけど、見に行かない?っていうセリフは漫画だけのお約束なのか?!

 

 あ、いやっ、待て!話に聞いたことがある。

「コミケのサークル入場チケット余ってるんだけど、いる?」

 と、みっきゅんが言われたらしい。

 サークル入場するとな、人気の大手のサークルさんの元へいち早く行けるというすばらしい特典があるのだ。しかし、その代償として「売り子よろしく!」ってなることも多く、みっきゅんは売り子として時間が奪われることの方がダメだと、チケットを断ったらしい。

 ……。

 あ、そのチケットの話じゃない?


「残念ながら、お誘いいただいたことはありませんわ」

 いや、正確には前世ではない。璃々亜としての記憶はない。

 ……だが、孤高の女帝だったわけだし……きっと、誘ってもらえなかったんだろうなぁ……。

「じゃぁなんでそんなに詳しいんだ?」

 嘉久、決まってるじゃないか。リアルに経験はないけど、死ぬほど漫画は読んだんだよ。

「漫画」

 漫画が私の恋愛バイブル。

 ……。まぁ、リアルで活かしたことなど、皆無だがな!


「漫画?璃々亜は漫画を読むのか?読んでいるところを見たことがないが……」

 兄の驚きの声。

 はうっ!

 し、しまった!

「学校で、そ、その、少し見せていただいたのですわ……」

 さすがに兄の目が届かないであろう、学校生活で目にしたことにした。

「漫画を、学校で?校則で持ち込みが禁止されているはずだが……」

 兄の目が険しいものとなった。

 ぎゃーっ、こ、校則とか、すいません、すいません。

 校則やぶって、薄い腐った本を学校に持ち込んでいました(前世)。

 もう、年齢制限やばい感じの薄い腐った本を、友達とトイレで貸し借りしてました。(前世)

 心の中で、平謝り。

「漫画が悪いといっているわけではない。だが、校則に違反して漫画を持ち込む行為は見過ごせない……。ちょっとした校則違反からエスカレートしていく人間を何人も見てきたのだ!璃々亜の周りにそんな人間がいるなど……」

 ぐあっ、兄の目が、処刑人のそれに見える。

 やばいですっ!

 架空のAさんの破滅が見えます。

 うえええっ。

 ごめん、架空のAさん!助ける、助けるよ!

 えっと、えーっと……。

「ち、違いますわ、お兄様。校内ではございません。お迎えの車が停車するロータリーですわ!そこで見せていただいたのです。あそこは、門を出た先にありますから、校内とは言えませんわよね?車を待つ間、退屈ではございませんかと、親切に見せてくださったのです!」

 兄の顔が、処刑人から、領民に好かれる領主様のような顔に戻った。

「そうか、校内に持ち込んだわけではなければ、校則違反ではないな。わざわざ車から漫画を持ってきて、待っていた璃々亜に見せてくれたのか。いい人だな。ぜひお礼をしなくては……。誰だい?」

 げっ!

「と、通りすがりの方だったので、どなたかは存じ上げませんわ……」

 汗……。

「どんな漫画だったんだ?その、チケットの話が載っていたのは」

 汗……。

 嘉久まで、私を追い詰めるな。

「タイトルとか、覚えていませんわ。少女なんとかという雑誌だったと思うのですが……」

 少女漫画雑誌なら、チケットネタの一つや二つ載ってるだろう……。


いつもありがとうございます。


ついつい、前世知識をぽろりともらす璃々亜さん。

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