第110話 アドレスゲットしたらしい
「随分と、幸せそうな顔してるね」
バスを降りると、田中くんが私の顔を見てそう言った。
うはっ。やばい。
久しぶりのお菓子三昧に、そんなに顔緩んでる?
「轟くんが、珍しいお菓子を分けてくださったのです。それがおいしくて……」
本当は、珍しいお菓子じゃなくて、懐かしいお菓子だけどね!
コアラのマートとか。まゆげチェックしながら食べるとか懐かしすぎた。あ、こっちの世界でも、まゆげコアラが見つかるとラッキーだそうです。轟くんが教えてくれた。
田中くんは、私の答えに、微妙なっ表情を見せた。
珍しくもなんともないだろうって顔?
それとも、現地に着くまでに食べすぎだろって思った?
「餌付けされんなよ」
ボソッと田中くんが呟く。
ふえ?
餌付け?
あわわっ、確かに!
今なら知らない人に「カップラーメン上げるからついておいで」と言われたら、ふらふらついていきそう……って、んなわけあるかい!
知らない人についていっちゃだめ!ってことくらい、守れる!
知らないおねぇさんに「BL同人誌見せてあげるからうちに来ない?」と言われたって、ついていったり……。
ついていっちゃ駄目かな?
ねぇ、ついて行っちゃだめ?
カップリングやシチュエーションの話で盛り上がって、すんごい趣味が合うって分かっても、ついていっちゃ駄目なの?
ううううっ。
うううううううううううううっ。
1年生歓迎会という名前だけど、全学年がネズニーランド、ネズニーシーで一日楽しみましょうという日だ。
貸切じゃないことに不満を漏らす者もいるが、多くの生徒は楽しみでワクワクした表情をしている。
先生の注意事項なんて、右耳から左耳にスルー。仕方ないよ。早く話を終わってよ!
目の前に白亜のお城が見えてるんだよ?
テンテテテンって楽しそうな音楽が聞こえてるんだよ?
ソワソワするでしょ!
そして、待ちに待った入園!
班ごとに行動するわけだが、なにやら班というには巨大な集団がいくつかある。
あ、嘉久がいる。
嘉久の回るコースが漏れたんだな。
……。番号順って情報さえつかんでしまえば、もうあとはばればれだもんなぁ。
嘉久、せいぜい団体様ご一行の旗振り役……いや、旗としてがんばれ~。
私たち2組1班は、ほかのグループがお目当てのアトラクションを目指して去っていくのを見ながら、入り口近くのショップに入る。
もちろん、テンション上げ上げアイテム購入のためですよ!
いろいろ悩んだ末、結局定番の、キャラクターの耳カチューシャにした。
リボン付の女の子キャラの耳を、私と芽維たんと皐月たんで。
小さな帽子付の男の子キャラの耳を、田中くんと轟くんと相模くん。
「みんなでつけると、結束が高まるね」
相模くんの言葉に、うんうんとみんなで頷く。まさに、結束!
「写真撮ろう!」
カメラ係の轟くんが、まずは女性陣3名で、次にカメラを受け取った皐月たんが男性陣3名の写真を撮影。で、通りすがりの人に6人の集合写真を撮ってもらう。
アトラクションに向かう途中、嘉久軍団が小走りで移動するのが見えた。
……。ああ、また嘉久周りが見えてなくて突っ走ってるな。
「うわー、すごい並んでるねぇ」
アトラクション正面には、長蛇の列。待ち時間を示すプレートには90分と書かれていた。
「90分も、待つのですか?」
皐月たんが驚きの声を上げる。
いやー、たったの90分だよ。まだ空いてる方だよ。このアトラクションは人気があるから、120分待ちや180分待ちとかざらだもん。
「今日は、これがあるから助かるな」
轟くんが、優先パスを手にする。
「ああ、あまり目立たないようにスタッフに見せよう」
並んでいる人たちの目を気にしながら、相模くんがスタッフの1人にパスを見せる。すると、並んでいる列とは別の入り口に案内された。
すんごいショートカット。
非常口と書かれたドアから出て、もう、乗り物の目の前だよ。
「あら、移動中に見られるはずのものが見られないのですわね」
並んで待っているときも退屈させないようにと、ネズニーのアトラクションはそれぞれ通路にも様々な嗜好が凝らしてあったはずだ。
「確かになぁ。待っているときのワクワク感はないな」
私の言葉を拾って田中くんが答える。
「でも、せっかくですので今日は優先パスを最大限利用させていただきましょう。ワクワク感や通路はまた来たときに楽しめばよろしいのですわ」
「また、一緒に来られるといいな」
田中くんがふっと笑った。
え?
私と一緒に?
「そうだね!また皆で来たいね!」
芽維たんの言葉に、どっと冷や汗が出た。
そ、そうだよね。皆でまた来たいって意味だよね。
あー、びっくりした。
「まだ、今日が始まったばかりですのに、もう次の予定のお話ですか?」
皐月たんが楽しそうにくすくすと笑った。
そんな会話をしていると、スタッフが私たちを乗り物に案内する。3人乗りのアトラクションだったので、男チームと女チームに分かれて乗車。
そんなこんなで、順調に予定をこなし、昼食。
うん。ないんだよ?迷子ハプニングとかね。
ヒロインがグループとはぐれて、攻略対象と二人っきりとか、そんなのないからね?
だって、あらかじめ回る順序は決められてるから、たとえ少しはぐれても次の予定のアトラクションに向かって待てば合流できるし。
そもそも、携帯で連絡とればいいわけだしね。
あ、あれ?
「田中くん、携帯の番号を教えてもらってもいいですか?」
「え?僕の?」
「轟くんと相模くんも教えてもらってもいいですか?もし、園内ではぐれた場合、知っていた方が便利なのではと思うのですが、ご迷惑なら……」
「あ、ああ、そういうこと……もちろんいいよ」
田中くんがスマホを取り出す。轟くんや相模くんも手にスマホを用意する。
「女性のアドレスを聞くのは、まずいかな?」
相模くんが紳士的なことを言ってる。
「ふふっ。合コンでアドレス交換するわけじゃないですから、気にしなくてもよろしくてよ?」
グループで必要な連絡網だからね。そもそも、メールも電話もボッチ璃々亜卒業のためには、どんと来い!ですわ!
「そうですわね、私もかまいませんわ。お互いに知っていた方が何かと便利だと思いますし」
皐月たんもスマホを取り出した。
「えへへ。皆でLINEとかもする?」
芽維たんがにこにこしてスマホを操作しはじめた。
L……LINEですって?
そ、それって、ボッチの憧れの……。
「あー、アプリ入れてないんだよね」
「あれは中学んときで懲りたよ」
「なんですの?それ?」
「おいしい?」
上から田中くん、相模くん、皐月たん、轟くん。
「LINEをしたことがないのは、私だけだと思っていましたわ……」
皆、ボッチってわけじゃないよね?
よかった。LINEしてないだけでボッチ認定とかじゃなくて……。
「そっか~残念」
ああ、芽維たんあきらめるの早い!もうちょっと誘ってくれたら、教えてくださいとか言ってはじめるのにー!
でもいいんだ。
私はスマホのアドレス帳を見て、にまにまする。
家族以外のアドレスが増えてく。嬉しい。
てなわけでですな。
迷子ハプニングなんて、あろうはずもなく。
昼食を終えて、次のアトラクションに向かう途中に、嘉久の一段を見た。
早足がさらに加速しているようだ。昼食は食べたのだろうか?
まさか、全部制覇するために食事も抜くつもりなんじゃないよね?
なんて、嘉久軍団を目で追っていたら、あ、あれ?
芽維たんは?
皐月たんは?
田中くんは?
相模くんは?
轟くんは?
皆、どこにいっちゃったの?
?
いつもありがとうございます。
た、た、田中くんが・・・。
田中くん、がんばれー!
っていうか、アドレス帳には、なんて入れたんだろう?
フルネームじゃないよね。田中、相模、轟かな?
兄のチェックはどうなる?!たぶん学校中の生徒くらい軽く把握してそうだから……。
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おかげさまで、こうしてなんとか書き続けることができておりまするるるる。




