第100話 専属スタイリストは本気になったらしい
どんなズボンを買おうかな~。
クローゼットを開けて、璃々亜所蔵の服を頭に入れる。
一応、持っている服とのコーディネートも考えないとね!って思ったんだけど……。
ズボンで一番初めに思い浮かぶ「ジーパン」と、どうあわせたらいいのか謎です。
そもそも、私、前世ではそこそこ社会人経験も長いお姉さんだったわけだよ。……高校生から見たら「おばさん」な部類なわけで。
分からない。
今時の高校生が好むファッションがまったく分からないよ。
仕方がない。専属コーディネーターの兄に相談しよう。
「ズボンを買いに行く?」
「ええ、ネズニーに行くにはズボンかキュロットが相応しいと書いてありましたので」
「絶対にズボンじゃないと駄目というわけじゃないだろう?璃々亜にはスカートが相応しいよ?」
なんだそりゃ。
やはり、兄はスカート派か!いくら専属スタイリストの意見といえ、そこは従えぬ!
ズボンを買うのだ!買うのだ!買うといったら、買う!
兄を説得するには……。
「いろいろな方がネズニーにはいますでしょう?記念写真を撮っている方も多いとおもいますの。ネズニーシーの方は、風が強いとも聞きますし、スカートがめくれてしまったところを、誰かの記念写真に写りこんでしまったらと思うと……不安で……」
まぁ、そんなことはやたらめったらないだろうけどね。
そんなことが頻繁にあるようなら、誰も観光地にスカートはいて行かないから!
「分かった、璃々亜」
おお、分かってくれたか!
「やはり、貸切にしよう!」
ちがーーーーーうっ!
全然分かってない!
「お兄様に、ぜひともズボンを選んでほしいのです!お兄様が選んでくださったのですわと、自慢したいのですわ!」
「そ、そうか。私のことを自慢したいのか……」
いや、自慢などしないがな!
しかし、兄はまんまと話題がそれたことに気がついていない。すっかりズボンを選ぶ気だ。
「急なことですし、明日はこちらのお店へ行こうかと思っていますの。ハリーウッドー女優が愛用しているそうなんです」
安かろう悪かろうじゃないよといいたくて、わざわざハリーウッドー女優愛用と言ってみたが、ぶっちゃけ有名人ご愛用には興味はまったく無い。
あ、違う……。
推し声優さんが使ってるとかツイッターで見かけたら、思わず買いに走ることがあったな……。
こののど飴がいいんだよ情報が多すぎて、一時期部屋がアメだらけになったことがあった……。
結局、会社に持っていって「アメ食べる?」って大阪のおばちゃん並に配ったっけ……。
スマホで、明日芽維たんと行く予定の店のサイトを見せる。
「ふーん、なるほど。写真じゃぁ、質までは分からないからなぁ……」
し、質?
大丈夫、こだわらないから!むしろ、上質なもの与えても分かんない鈍感な私です。
「お兄様、デザインで選らんでくださいませ。多くの人が足を運ぶネズニーに行くのですから、白川家の人間として恥かしくないおしゃれなかっこうをしたいのですわ。もちろん、過剰なオシャレをして浮いて恥をかくような真似もしたくありません」
兄が、私のスマホを片手に、服を検討し始めた。そして、おもむろに自分のスマホを手に、ネズニーでの一般的な服装や、今の流行などを調べ始める。
ああ、ズボン一つなのに、すごい大掛かりになってきたぞ?
なにやら、ノートを広げてペンでメモを取り出した。
ぐおっ、ズボンのスケッチをし始めました。
絵、上手いですな、兄……。何でもできるとか、なんてやな奴!キーッ!
きっと、アニメにはまって、自分でも同人誌作りたくなったとか言い出して、いきなり超上手く描けちゃうタイプの人間だ!
ぐぐぐっ。嫉妬。
こりゃ、いつか兄を洗脳して、私原作の漫画を描いてもらうしか、この嫉妬心を消化する方法はなさそうですよ!
えへへ。どんな漫画描いてもらおうかなぁ……。BL……を理解してもらうのはハードルが高いから、普通の少女マンガっぽいのしかないよね。
女人化決定!
ここは、いっちょ、京様ではなく、都キャプテンに女人化してもらおう。うむ。
年下の京君に恋しちゃった、ツンデレキャプテン。いいね、いいね。都って名前だから、女性だよって言っても違和感ないでしょう。
ぐふふふふ。兄、早くアニメに目覚めて同人誌描くって言い出さないかなー!
……。ないよ、きっと……。
「これはどうだ?このチュニックと組み合わせて、カバンは、海風が寒いかもしれないから、羽織るものがいるだろう。これだな。靴は」
と、兄が研究の成果を教えてくれる。
「ああ、いや。璃々亜にはやはり、こちらの色のほうが……そうすると、カバンはこちらの物にしたほうがいいな」
と、かれこれ、10案ほど。
「迷うなぁ……」
「ありがとうございます、お兄様。後は、試着して動きやすいものを選ぶことにいたしますわ!」
ズボンは、細身はきつい可能性もあるし。足が余計に太く見える色とかもあるし。
所詮、ネットの写真はモデルさんが来た見本にすぎない。
うん、璃々亜、スタイルは中肉ですもの。とてもモデル体系ではない。
中肉。上から下まで、中肉。
無駄な部分に肉がない代わりに、必要なところにも肉は無い。それが、中肉。察しろ!
「試着?色々と着てみるのか?」
「え、ええ。あまりたくさんは試着しませんが、気になったものがあればいくつかは……」
兄が私の顔と、スマホに映った服を見比べる。
「私も付いて行こう!ああ、そうだ、カメラを忘れずに持っていかねばな!」
はぁ?
くんなぁーっ!
芽維たんと私の楽しい買い物の邪魔をするな!
っていうか、カメラを持っていくとか意味が分からない!
「お兄様、生徒会のお仕事が忙しいのではございませんか?歓迎会の準備もあるでしょうし、KHT対策もまだ十分ではないのでしょう?」
本当に、くんなよ!という念をこめて口を開く。
「そうだな……。ゴミ削減とお茶会部の清掃活動だけでは、KHT対策は不十分だろう……。頭の痛い問題だよ」
よしよし。
真面目に生徒会の仕事してくださいね!
次の日の放課後、兄からメールが届いた。
「試着姿の写真をメールで送ってくれ。どれが似合うのかアドバイスをするから」
……そ、そうですか……。
お読みいただきありがとうございます。
100話目です!なぜか、通し番号を、97,95,96、とさかのぼっていて「あれ?そろそろ100話だよね?まだかな~?」というボケをかましておりました。永遠に100話に到達しないところでした。あぶないあぶない。
あ、兄よ……。そんなに璃々亜ファッション写真をコレクションしたいのか……。
ここまで続けられたのも、読んでくださっている皆様のおかげです。ありがとうございます!
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