第99話 お買い物に一緒にいけるらしい
「何着てく?」
芽維たんの質問に、首を傾げる。
「ズボンを履いていきたいのですが、あいにくと持っていなくて……」
「えー、そうなの?じゃぁ、キュロット?スカート?」
私たちの会話が耳に入ったのか、田中くんが会話に入ってきた。
「白川がスカートなら、スカートでは乗りにくいアトラクションは避けたほうがいいよな」
わー、本当に気遣いの人だな。田中よ!
嘉久なら、自分が乗りたいものをめいっぱい計画にぶち込むと思うよ。
「いいえ、ぜひズボンを買って履いていこうと思っていますの。皐月さんもキュロットの予定だとおっしゃってましたから、お気遣いは無用ですわ」
「そっかぁ。璃々亜さんズボン買うんだ~。私も、新しいズボン買おうかなぁ~。せっかくだから、少しだけオシャレしたいし」
てへへと笑う芽維たん。
そうだよね。学校行事なのに、私服ってちょっと嬉しいよね!
「二人のズボン姿、楽しみにしてるよ!」
田中くんは、にっと笑って教室を出て行った。
え、た、楽しみ?
ドキンとする。
前世では、ダサいと思われない程度の服装しかしてなかった私だよ?
最低限、見た目でいかにもオタクだって判断されない程度の服装だった私だよ?
楽しみにされても……。お、オシャレが分かりません!
そ、そうだ、こんなときは、早間さんに……って、駄目だ!ゴスロリにされる。ズボンスタイルもあるとか言い出しかねない!いや、まて。
スカートの下に履くドロワーズはキュロットみたいなもんだとか言い出したらどうしよう……。昔は下着だったドロワーズだが、見せパンならぬ、見せドロも売ってるんですよ!とか言われたら……。
専属スタイリストの兄に頼むか?いや、兄は忙しいから、買い物に付き合ってもらうわけにはいかないよなぁ。
こ、困った。
そ、そうだ!
「芽維さん、明日の学校帰りにでも、一緒に買い物に行きませんこと?」
こんなときこそ、女友達!楽しい楽しい一緒にお買い物ですわー!!ひゃほーい。
芽維たんは、言葉に詰まってから頭を下げた。
「えーっと、ごめんね。一緒には、その……」
ぎゃーっ!
断られた!
何で?
どうして?
「でも、選ぶお手伝いだけなら……」
にこっと顔を上げて笑う芽維たん。
選んでもらったり、選んであげたり、あっちがいいとか、そっちも似合うとか「そうだ!おそろいにしようよ!」とかがしたいよーっ!
はっ、もしかして……。
ズボン1本が数万とかする店に行くと思われてる?そりゃ、一緒に買うのためらうわ。
っていうか、そんな窮屈そうなズボンはいらない!汚したらどうしようとか心配したくないよ!ソースこぼして青ざめるとか楽しめないから!
だって、数万って……。
同人誌が何十冊も買えますよ!
っていうか、何十冊しか買えないのかー。そう考えると、高い趣味だなぁ。うまーい棒なら、何千本も買えるのに!……、何千本……。
す、すげっ!
「芽維さんがいつもお洋服を買うようなお店に案内してくださるかしら?」
「え?でも、それでは……」
「確か、Hアンドなんとかと言ったかしら?ハリーウッドーのスターも身に着けているそうですわね?前々から興味がありましたの。あ、それとも芽維さんは、Hアンドなんとかでお洋服を買ったりはいたしませんか?」
「えへへ、実は、私も前から興味はあったの。だけど、前住んでたところの近くにはお店がなかったから、行った事なくて……」
「そうだったんですの?では、明日一緒に初体験いたしませんこと?」
芽維たん、いつものにこにこ笑顔に戻ったよ。
「いいですね!」
ぐふっ。やったね!明日は芽維たんと学校帰りにお買い物!お買い物!わーい。
「無事に、歓迎会の班は決まったか?」
夕食時。今日はさすがにトイレの話題は出なかった。
兄の質問に、もちろんと答える。
「そうか、それは良かった。例の友達か?」
「ええ、そうですわ!特待生の鈴木さんと、クラス委員の皐月さん。それから、鈴木さんの幼馴染とそのお友達の6人グループになりました」
兄に自慢げに報告。
1人ぽつーんと余ってどこかに入れてもらったわけじゃないよ?
「嘉久はどうだ?」
嘉久は、何を思い出したのか、眉をしかめた。
「なんだか、やたらと一緒のグループになろうって誘われたな……」
な、なんだとぉ?ボッチの皇帝の異名をとる嘉久が、やたらと誘われただと?
ぐぬぬっ、わ、私だって、相原さんたちから声をかけられたもんね!
「ふふふ。女子生徒からだろう?」
と、兄が笑った。
何ですと!
モテモテ自慢か!……って、まぁ攻略対象としては当然か。しかも、世間は残念な嘉久を知らないんだろうし。
こいつ、食事中にトイレの話ばっかりなんですよー!
何かに夢中になると、連れの存在忘れて一人でさっさと言っちゃう奴ですよー!
「敦也兄はどうなんだよ?同じグループになりたい奴、いっぱいいるんだろう?」
「私は、生徒会のメンバーと一緒に巡回するからな。クラスの班には入らないよ」
「えーっ」
兄の言葉に嘉久が声を上げた。
私も心の中でえーーーーーーっと叫ぶ。巡回?せっかくのネズニーに行っても、生徒会役員って遊べないの?
うわー、大変だ。
かわいそう……。
「俺も、そっちに混ぜてくれよ!」
ぶっ!
うおっ、今口に入れたブロッコリーを出すところだった。あ、あっぶねぇ~。
嘉久、お前、変だろう?
何故に、ネズニーに行くのに、クラスの子たちと遊ぶよりも、生徒会の仕事で巡回したいと思うんだ?
……。
ま、待てよ?
京様が、都キャプテンと一緒に行動したいって、そういう話……?そう考えれば美味しい!実に、美味しいですぞ!
脳内録音準備オーケー。
「馬鹿だな。1年生の歓迎会なんだぞ、お前は楽しめよ」
「楽しめればな……」
うんうん。京様は、都キャプテンがいないと楽しめないんだよね?
ぐふぐふ。もう、二人っきりでネズニー回っちゃいなよ!いっぱい暗闇もあるよ?ぐふふの腐。
っと、兄と嘉久の話じゃないよ?京様と都キャプテンに言ってるんだからね!
「結局グループ分けで揉めて、何グループかが一緒に行動することでまとまったんだぞ?20人近い人間がぞろぞろ歩いて楽しいか?」
兄は遠い眼をした。
「嘉久、一つアドバイスだ。決して回るコースを他に漏らすなよ?」
「え?」
「20人じゃ済まなくなるからな?」
ふえっ、いったいどんなアドバイス!
それ、女性徒がぞろぞろ付いていくっていう話なの?
兄、そこまで人気なの?……人気だよねぇ……。
あー、よかった。私は普通で。
少しだけ家柄がいいだけの普通の……いやむしろ嫌われる側の悪役令嬢だった。
って、やだーっ!嫌われるのもやだーっ!
好かれすぎるのも大変そうだけど、破滅ルートに向かう悪役令嬢も、駄目だってば!
皆さん、気になりましたよね?
いつも、ありがとうございます。
兄、グループメンバーが男女混合だって思いもよらなかったみたいですよ。
大丈夫かな、巡回中に見られたときに……。
た、田中くん、逃げて!
あ、もしかして、どすこい轟くんの影に隠れて見えないとかそういう技が出るか?




