王の素質
どうもー、はい書きましたよ結構焦ってたんで見苦しいと思います、っていうか本当は今回タイトルに閑話ってつけようかどうか悩みました
回線が切れるまで一日一つ投稿しようかと思っていますのでお付き合い下さい
まだ太陽が丁度真上にある時間帯なので街中が活気溢れる中クロウベルは宿を探すべく道路を歩き回る、歩いているうちに気づいたが今のクロウベルはリティ・ヘルツとしてメイジスに来ているのであり今この瞬間だけはクロウベル・フレイムとして動くことは出来ずにいる、したがって自分の金銭の類を不用意に使うのは少しおかしいのではないかと考えながら歩き続ける。
宿代ぐらいは先程稼いだ中から使うとして極力金銭を使いたくないクロウベルは出来るだけ安上がりで済みそうな宿を探す、くたびれていてもう閉業しているのではないかと疑いたくなるようなものを探して回るが中々見つからない。
(…そういえばギルドの周辺は建物が比較的に豪華になると言っていたな、ならギルドから一旦離れてみるのも手か)
そう考えながら道を歩いていると何かに肩がぶつかる感覚がした、そちらの方を見上げると真っ赤なドレスを着たいかにも上流階級の貴族と解る女性の顔が伺えた。
その女性の瞳には力強さがあり見るからに我が強いと解るがクロウベルはそれを一瞥すると睨みつけてくる女性に平然と口を開く。
「すまない」
そう言ってまた歩き出すクロウベルの右肩を女性は力強く掴む、通常なら間違いなく肩の骨が粉砕するほどの握力で骨のきしむ音がなる、女性と共に歩いていた一人の男性が止めるために女性に慌てて声をかける。
「おいおい流石にやり過ぎだぜか弱い少女相手に何向きになってんだよ」
そういう男性は引きつった笑顔で冷や汗をかきながら女性の腕を掴みクロウベルの肩から手をどかせる、それからクロウベルの顔を見下ろすが痛々しい音がしたにしては表情が希薄なのを見て不審に思っていると女性が口を開く。
「………貴様、名を何という」
「私か? 私の名はリティ・ヘルツだ」
「そうか…その名前と顔、覚えておく」
それだけ言うと女性は踵を返して来た方向を男性と友に後戻りしていく、不審に思い見送るが特に対して自分に実害があったわけではないと思い改めて宿を探しまわる、そこで先程の二人に宿の場所を教えてもらえばよかったと思うが今更聞くのも気恥ずかしいさを感じたのでやめて再度歩くのを再開させる。
少し歩くと人気の少ない路地に差し掛かる、薄暗く明らかに治安が悪いと解る場所だがなんら抵抗を感じずそのまま突っ切って歩く、歩いて数分とたたずにクロウベルの数歩後を歩く者達が出てくる。
気づいているが無視して建物を見て回るが表通りと違い廃墟のような建物しか無い場所を見てこの場所で宿を探すのは無理があると判断しするが一応奥まで進もうと思い奥に進み始める、後ろを歩いていた者達が早足になりクロウベルを追いかける。数は十人前後といった所か、全員が男性で下卑た薄ら笑いを浮かべながら近づく。
丁度その男性達が目の前にまで着くとゆっくりと顔を上げて男性達の顔を見て口を開く。
「すまないが道を開けてくれないだろうか、宿探しで手間取っていてな…出来るだけ速く見つけたい」
そう言うと男性達は笑い出し数人が口笛を吹き取り囲む、鬱陶しく思い眉間にシワを寄せるがモデルのリティの顔が愛らしい顔立ちなのもあり恐怖感よりも可愛らしさを強調する結果になる。
周りの男達はその顔を見て笑みを深めるが丁度クロウベルの真正面にいた二人が体を動かし道を開ける、クロウベルはその二人を見ることもなくそのまま突き進もうとしているのでそれを見て男性達がその二人の行動に眼を白黒させるが一人の男性がクロウベルの肩を掴む。
しかし肩に触れたのも一瞬だけですぐに手を離してクロウベルを行かせる、その行為を見て男性達が我に返り先に道を譲った二人に向けて恫喝を始める。
「おい何で逃がすような真似をしたんだよ! あんな上玉そうそう会えないぞ!!!」
そう一人の男性が言うと後の男性達もそれにくわえて怒鳴り始める、最初に怒鳴った男性が逃した男性の胸ぐらを掴み殴りかかろうとすると大声で怒鳴り返す。
「わかんねーよ! だけど…だけどなんか凄く怖かったんだ、アレの前に立ってるのが凄く怖かった」
そう男性が言うと肩を掴んだ男性もそれに同調するように同じことを言う、混乱している男性達をつまらなさそうに一瞥しまた歩きもっと奥に進みこむ。
どれだけ歩きまわっても宿らしい建物などあるはずもなく、ましてやまともに機能している建物すら発見出来ずやはりあのままこの路地から出ていれば良かったと思っていると元は立派な建物だっただろうと解る寂れた廃墟の下で蹲る少年を見つける。
見た目からしてリティとそう年は変わらないであろう風貌で着ている服も所々破れており洗濯など一度もしたことがないと解るほど茶色く汚れていた。
足を止めてその少年を見下ろすが少年は顔を上げることすらせず小さく言葉を口から紡ぎだす、そんな様子を見るが特に気後れせずに言葉をかける。
「ふむ、済まないがここらで寝泊まり出来る場所はあるだろうか、できたら教えて欲しいんだが」
そう声を掛けられ要約少年は顔を上げる、その目は濁りきっており一切の希望を感じなかったがクロウベルの姿を見て一瞬光が戻る、だがすぐにまた元の瞳に戻り苦痛に歪めた表情で口を開く。
「迷いこんだのか………帰れよ、どうせお前には暖かく迎えてくれる親がいるんだろ」
喉を枯らしていると解る細々として途切れ途切れの声を放つと少年はクロウベルから顔を背けて地面を見つめる、その絶対の拒絶を受けてなおクロウベルは温かい笑みを浮かべて腰をその場に下ろす。
まさか居座られるとは思わず目を大きく開きクロウベルを見つめる。
「正気か? 遊び半分でいていい場所じゃないぞ」
「ふむ、いやすまん今の貴様に懐かしさを感じてしまってな、私の知り合いに貴様のような奴がいたんだ…懐かしさを感じるから少し話をしたいが良いだろうか」
「…狂ってるのかお前、良いから出てけって言ってるんだよ、鬱陶しいからさっさと家に帰れ」
そうどこか戸惑ったように口にする少年にますます優しい笑みを深めるばかりのクロウベルに戸惑いしか感じられずどうしたら良いか考えているとクロウベルは口を開く。
「そう脅さなくていい、これでも最低限身を守れる程度には私は強いからな、心配せずとも悲惨な目にはあわん」
「…チッ、一応忠告したからな」
何を言ってもこの場から動くつもりがないと解った少年は少女の顔を見つめる、ここで生きていたらまず会えないぐらいには可憐でここにいたら悲惨な目にあうのは目に見えていた。
服装も綺麗で髪も水分が豊富に含まれていると解る、表情も豊かそのもので生まれて初めて純粋な笑みを少年は見た。
「………大体俺のような知り合いっているわけないだろ、お前ら表側に俺らみたいな裏側の知り合いなんてそうそう出来るわけが無い」
「いや案外運命と言うのもはどう動くかわからんものだぞ? 今この瞬間では間違いなく底辺だった者が翌日には豪華な城で過ごしている事も起こりうる」
「………そんなの絵空事だ」
「絵空事か、上に立つ者の考える事など下のものからしたら何時も絵空事だ」
そう言われて少年は口を開くことが出来ない、自分達のような底辺で生きてる者達には到底理解出来ない事を考えるのが貴族連中なのだから、貴族の子供が面白半分で裏路地に入ってくるのも珍しい話ではない、もちろんその後には悲惨な現実が待ち受けているわけだが。
「…っと、昔ある人物に言われたことがあってな、確かにその通りだと思ったんだが、やはり説得力があるようだな」
「ただの受け売りかよ」
色々と突っ込みどころがある話だがただの子供の与太話と思えない現実味が少女の話にはあり少年はクロウベルを見つめる、自分と変わらない年に見えるが中身は相当年配なのではないかと疑っているとクロウベルは子供には似合わない大人びた笑みを浮かべた。
その表情がとても様になっていて似合っているので呆けているとクロウベルが薄く笑い声を上げたので少年は顔を少し赤くしながら口を開く。
「なんで笑った」
「クックックッ…いやなに、随分と子供らしい表情も出来る物だと思ってな………安心しろその顔が出来るなら貴様はまだ行きていける」
そう言われて顔を下に向けて黙りだす、少年の薄黒く汚れた耳が赤くなっていたがそこには触れず小さく笑うとクロウベルは少年に真面目な表情を作り声をかける。
「私は人すべてが平等とは思っていない、命には差があり重さも違う………私の命と貴様の命ではその差は歴然と言っていいだろう」
その言葉を聞き自然と少年の肩が震える、怒りを溜め込んでいると解るがそれを見てわざと鼻で笑うと少年が勢い良く立ち上がり腰をかかんでいたクロウベルの胸ぐらを掴んで無理やり立たせる。
顔は涙で濡れていて顔についていた灰を流し涙の跡だけ普通の人肌の色を取り戻していた。
「お前に何が解る!!! 俺だって好きでここにいるんじゃない! どうしようも無くて此処にいるんだよ!!!」
「運命もまた人により違う、待っていても勝手に結果を得る事ができる者も入れば努力をしても報われない者もいる」
「何が言いたいんだよ行き成り! 意味解らねぇただの自慢か!?」
「まぁ落ち着け、私が言いたいのは要はそう言った懸念は全て後でついてくる話というわけだ」
その言葉を聞いて意味がわからず目を細めてクロウベルを見つめる、クロウベルが少年の腕を掴んで手を離そうとすると驚き自分から手を離して数歩後ろに下がり距離を取る。
「私が見るに貴様は人として評価できる人物ではある、この環境下で優しさを保っていられるのは並大抵の事ではない、それが出来ている時点で貴様は精神的に強い」
「………けなし始めたかと思ったら急に褒め始めて、何がしたいんだよ」
「ふむ、貴様はやる気さえアレば成功する人物だと言いたいのだ、私は幾つか誇れる物はあるが一番自信があるのは人を見る目だ、その私が言っているのだから間違いない」
そう偉そうに宣言するクロウベルの言葉が不思議と胸の中に静かに落ちる、自分と年が違わないはずなのになぜか威厳のある年長者から言われたような気がしてならない。
初めての感覚で少年が戸惑っているとクロウベルはそれをみて薄く笑いながら口を開く。
「先程も言ったが成功や命の重さというのは後になって出てくる話しでありそれを今気にしていても意味は無い、今この広い世の中で必死に努力をしても絶対に得られない人がいる中で得られない物を貴様は得ることが出来る、それをしないのはいささか勿体無いのではないか?」
そう言われても何も言い返すことが出来ない、自分には無理だと思っていたし生まれた頃には路上に捨てられて今まで生きてきた中でも名前という物を呼んだこともないし呼んだことすらもない。
そんな自分が成功すると言われても現実味がない話であり目の前の少女のただの妄想とも思おうとしたがどうしてかそう思えない。
「貴様は何の教育を受けていない身にしては頭の回転が速く物事を冷静に捉えることが出来る、私の主観だが怒っている状況で物事を冷静に見れる者は失敗をしにくいし限りある機会を掴みとる事も増える…これは誇っていいことだ」
「…そ、それを俺に言ってどうするつもりなんだよ」
「いやなに、ここから抜けだして必死に努力すればまだ巻き返せると言いたいのだ私は」
それを聞いて少年は混乱する中クロウベルは「いかんな、どうも私は周りくどい言い方しかできん」と一人呟きはじめる、その癖が老人のように見えて子供なのに老人みたいに見えるという滑稽な姿だったが生憎とクロウベル本人はそれを理解しない。
そう一人呟くクロウベルに混乱が解けた少年は戸惑いながらも口を開く。
「…どうして俺にそんな話をしたんだよ」
「ふむ、最初にも言ったが貴様が私の古い知り合いに似ていたからな、まぁアレのほうが貴様より荒れていたが………」
そう言われて何も言い返すことが出来ない、この少女は本当に何の打算もなくただの気まぐれの暇潰しで話したに過ぎないと解り少年は笑い声を上げる、それを訝しげに見る少女に少年は笑いながら口を開く。
「ははは、何もしかしてお前って普段からこんなことしてんの?」
「むっ? そうだなまぁ私は良く気まぐれで行動を起こすぞ、クレアという幼馴染にも幾度も注意を受けたことがある」
「お前みたいなのが上にいるってのを知ってなんか安心したよ、てっきり腐ってる奴らしかいないんだと思ってた」
「………私は一介の村人なんだが」
そういうクロウベルの言葉に下手な冗談だと思い笑みを浮かべる、それで少年は元気を取り戻したのか立ち上がりクロウベルに口を開く。
「確か寝泊まりする場所が欲しかったんだったか、ここからまっすぐ進んで2つ目の路地を曲がると赤い建物があるから、そこに行けばなんとかなると思う」
「そうか、礼を言う」
そう言って踵を返して歩む姿に少年は人の上に立つ才能の片鱗に触れたと思いその背中に弱々しく手を振り見送る。
この時期パン一なのは私だけでしょうか、人によってだらしないと思う人もいると思いますが私は楽でいいと思います、やっぱ夏はパン一ですね
後読みなおしたんですけど、今回の話凄く恥ずかしいです、消したいと思う衝動が湧いてきます………