底辺と最高ランクの共同作業
どうもー、なんか最近地の文が少なくなってきている事を気にしています、もっと増やして読みやすいよう区切っていくように心がけます。
「それで、いつになったら本題を出すつもりなんだ?」
「本題…ね、僕だけじゃ難しそうな依頼があるから手伝って欲しいんだよ」
その言葉を聞き周りを見渡す、どう見積もっても目の前の女性よりも強いと思わせる人物は無く、Sランクの称号は伊達ではないと解るがそれを踏まえた上で女性に視線を戻し問いかける。
「…いやここだけの話ギルドの依頼じゃ無くて個人的な依頼だからさ、どうしようか迷ってたんだよ、君が乗ってくれなかったら師匠と行く所だったよ」
そう言うとくたびれたような皮肉った笑みを浮かべる、しかし目の前にクロウベルがいることに気が付くとそれを急いでやめてまた人のいい笑みを浮かべると言葉を続ける。
「と言っても危ない話じゃないから大丈夫だよ、偉い貴族の人を護衛する依頼だからさ」
「………なるほど、要するに政治がらみでギルドに依頼を出せない立場の人間というわけか、教会よりの人間か?」
「細かい説明をしなくてすんで良かったよ…」
力量を測るように目を細めてクロウベルを見つめるがそこらの子どもとほぼ同程度の力量しか感じられず苦笑混じりにクロウベルを見つめる。
クロウベルは無言で顎をティムの方に動かし続きを催促する。
「………全く恐れ入ったよ、擬態能力だけでも僕が見てきた中でも君はずば抜けてるからね」
「当たり前だ、私は人類最強を目指しているからな」
「………君じゃなかったら笑い飛ばしてる所だった」
笑顔でその言葉だけ威圧でも殺気でもない巨大な力を含ませながら言い放つクロウベルにティムは顔を引きつらせてそう返した、もう今この瞬間にでもそう言えるかも知れないと思ったが絶対強者とどちらが上なのか一瞬考えるがすぐに無駄な推測だと思い直しクロウベルを見つめなおす。
先程のダリアのような獰猛な笑みを、しかしダリアとは格が違うそれを見て笑みだけで此処まで恐怖を与えられるのかとティムは思いつばを飲み込む。
(今までも笑顔で怖いと思ったことはあるけど、これは………)
「そんなことよりももう少し依頼の内容を事細かに教えてはくれないだろうか」
そういうクロウベルに右手を軽く前に突き出し「まぁまぁ落ち着いて」と言って再度コーヒーを注文する、冷えてぬるくなったコーヒーを一気飲みし給仕に渡すと気分を落ち着かせる為に注意深く目の前の少女を見つめなおす。先程の笑みをやめて不敵な笑みを浮かべる少女に恐怖心を感じず見た目相応なものになっていて落ち着きを取り戻すとゆっくりとした動作で話を続ける。
「…相手が孤高の遠吠えの可能性があるんだけど、彼女のことは知ってるかな?」
「一度あったことがあるな、中々に面白い相手だった」
「………解った君はあれだ、一々することに驚いてたら体が持たなくなるタイプの人だ」
そう言って体を浮かせて深く椅子に座り直すと椅子にもたれかかり目元を手で抑える、そうしているとどこか落ち着かない様子の給仕がコーヒーを持ってきて机に置く、ティムが給仕にありがとうと言うとそれに左手で手を伸ばし口元に運ぶと唇を付けて口に含ませていく。
小声で「熱っ」と言うと机の上に置いて右手を目から話してコーヒーを見る、そうすると白い湯気が上がっていて見るからに熱いとわかり自嘲気味に頬を釣り上げる。
(何でこう強い人って灰汁が強いかなぁ…)
自分も強者に入るがそれは置いておき、自分とほぼ同等、もしくはそれ以上に強い人物に何人か心当たりがあるが全て普通とはかけ離れた人物ばかりなのを思い浮かべて目の前の少女に目を向け口を開く。
「えっと依頼の内容だよね…イヌカイって聞いたことあるかな、メイジスの中では上流貴族なんだけど、そっちでいうグランみたいな」
「…初耳だな」
グランもイヌカイも初耳だがそれをあえていう必要は無く一人どう説明しようか悩んでいるティムを見つめる。
(私の認識からするとクレアのようなものか…)
「そっちのグランは王国派だけどイヌカイは教会派なんだよ、それでユウキ・イヌカイの娘アカリがここから離れた所にある中等部の学園に入学することにしたんだよ」
「…ある程度権力のある親なら暗殺などの危険が無い限り子供を離れた所に置きたくないだろうに、仲が険悪と見た」
「…なんかリティってそういうの詳しいね、もしかしていいところの子供かな」
「私など一介の村人にすぎん、それに考えればすぐに解ることだ」
そう言うと懐かしむような表情を浮かべるクロウベルにわざとやっているのか解らず訝しむ目で見ているとクロウベルが口を開く。
「放任主義の可能性もあるが娘が襲われる可能性があるにも関わらず送るなどありえん、親の言うことを無視出来る程度に自我があり盗賊に襲われても逃げ出せる程度の力量はあるのだろう? まぁただ頭がまわらない子どもという可能性もあるが、それはない」
「…いやそれもあるかもしれないよ?」
「それならば貴様は受けないだろうからな、金のために命を投げ出すようには見えん、それにアレは強者しか狙わないのだろう?」
「………まっ、確かに僕じゃあ足手まといを守りながらあの人と戦うのは無理があるかな」
その言葉を聞いてどこか満足気に首を縦にふるクロウベルにティムは確実に目の前の少女がアトラスの秘密兵器であることを悟った、アリス以外にもこれほどの戦力を持っていながら今まで出さなかったことに戸惑いを少し感じているとクロウベルが手をティムの顔の前で右と左に数回降る。
それで我に返るとどこか呆れたような目線をリティに向けて口を開く。
「それで何時にその依頼は行われる?」
「えっ…と、二日後かな…何か用事でもあるのかな」
「特に用はない、依頼金は5:5で良いな?」
「まぁうん、それぐらいで良いかな君にも働いてもらうしね」
その言葉を聞いて顔の笑みを深めて突然席から立ち上がる、トイレに立ち上がったのかと思いクロウベルの背中を目線で追いかけるとギルドのAランクボードから紙を一枚剥がしてティムの所に戻る。
笑顔で戻っていて端から見ているととても可愛らしいものだったがそれを向けられているティムは嫌な予感が止まらない、その自分に近づいてくる一歩一歩がたまらなく恐ろしい。
先ほどのように椅子に座ると先程取ってきた紙を机の上に出す、見間違い無くそれはAランクの依頼でありそれを持ってくるということは自分にもついて来いと言っていることなのは目に見えていた。
「お互い力量を完璧に把握し連携を取る練習のためこの依頼を達成しようではないか、金の取り分は私が4で貴様が6で構わない」
「………普通僕はもっと貰ってもいいところなんだけど僕も手伝ってもらうし強く言えないかな、解ったやろうか」
そういって依頼の内容を確かめる為に手に取り内容に目を向ける、それを見た瞬間顔を歪ませる、面倒臭い相手でまず疲れが残り後に大事な依頼があるときはまず手に取らないような内容だったが目の前の少女がそれを理解しているのか一応問いかける。
「あー…リティ? 一応聞くんだけどさ、この魔物のこと解ってる?」
そう聞くとクロウベルは鼻で笑いながら常識だと言い放つ、元とは言え歴代最強の魔王と言われていた男に言う事がではないがティムは解っていないのであまり強く言わない。
「安心しろ、私がその気に慣れば一瞬で肉の塊にしてみせる」
「いやそれ連携の意味無いんじゃ…とにかく解ってるなら良いよ」
そう言ってティムは〈Aランク討伐目標:ケルベロスの群れ〉と書かれた依頼書を持って受付に渡しに行く。
2日前当たりから妹が風邪に掛かって大変でした、私が今日起きた頃にはすっかり元気になってたんですけど、いやぁ手を焼きました