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◆書籍化◆【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第四章

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85 ルルアの朝食

「…………」


 むくり、と起き上がって小さな空間を見回した。

 うっすら視界が確保できつつあるのは、きっと草原の向こうにお日様が顔を覗かせようとしているから。

 ……隣には、寝袋を出した形跡すらない。

 僕は、静かに両手で顔を覆って突っ伏した。


「うう……どうしよう。僕、ディアンに合わせる顔がないよ」 


どうして寝ちゃったんだろう。僕は仮眠をとっていたのに。

鬱々とそう考えながら、そりゃあ寝てしまうだろうなという気もする。

僕、今こんなに筋肉痛になってるもの。

朝から緊張しながら歩き続け、極めつけに幽霊茸狩りと冷えた水。疲労のフルコースだ。

でも、だからと言って……僕だけ、こんな。


しょんぼりしながら、そろりそろりと足音を忍ばせて出入り口から覗いた。

……やっぱり、ディアンは起きている。

ごく小さな灯りとなった火の側で、ゆったり座って何か手元で作業しているよう。

カリ、カリ、と微かな音がする。暁の薄闇の中、わずかな灯りにナイフがきらりと小さく光った。

普段の威嚇するような表情はなりを潜め、ただ、静かな横顔が珍しい。


削っているのは、木の棒だろうか。ふと見ると、傍らにはいくつも完成品らしきものが並んでいた。

どうやら、手の平ほどの長さの細い杭を作っているよう。野営道具か、それとも投擲用かな。

案外器用に動く手は、もう僕のように丸みを帯びていない、大人の手だ。

一通り削り終わったらしいディアンが、ふっと吹いて木くずを飛ばし、くるりくるりと杭を回して出来を確認した。

カチャリ、と軽い音を立てて完成品の中に放り込むと、後ろへ手を着いて――


「うぜえんだよ、見てんじゃねえ」


ばちっと視線が合って跳び上がった。一足早い朝焼けの橙が、きらりと閃いて見える。

もう、いつも通りのガルガルしたディアンだ。

どうしてバレたんだろう。おずおずテントから出て、ディアンの側へ駆け寄った。


「お、おはよう……。あの、ごめんね……昨日はありがとう」


じろり、と僕を見たディアンは、何も言わずに視線を逸らして舌打ちする。

こういうところ、やっぱり師匠に似ているな……なんて、絶対に言えない。


「ディアン、全然寝てないよね。ごめんね、せめて――」

「ッ?!」

 

そっと背中に張り付くと、思いのほかビクっと揺れる。冷えた服の向こうに、しっかり熱を感じてホッとした。

勢いよく振り返った鋭い瞳が、流し始めた魔力にゆるりと和らいだ。


「……てめえ、いつか酷い目に遭うぞ」

「えっ? 何の話?」


脈絡のないセリフにきょとんとすると、僕を見る目が眇められる。


「こういうヤツに寄ったら危ねえって、見て分かんねえのか」

「こういう……? ああ、ガルガルしてる?」

「ふ・ざ・け・ん・な」


青筋を立てたディアンにむいっと両頬を潰され、ジタバタして逃れた。

何もふざけてないですけど?!


「大丈夫、ディアンにしかしないよ! あと師匠」

「俺にもすんなっつってんだよ!」


師匠はガルガルよりも、ツンツンだろうか。

ガルガルツンツンしている二人を脳裏に浮かべ、ふっと吹き出したのを睨みつけられた。

慌てて視線を逸らし、場の空気を変えるべく朝ごはんを取り出した。


「きっと朝ごはんはゆっくり食べられると思って! オムレツパンだよ!」

「……ピクニックじゃねえ」


ぬるい視線を寄越されたけど、持って来ていけないことはないでしょう。

そぼろを閉じ込めて分厚く焼いた卵を、パンで挟んだボリュームたっぷりの朝ごはん。トマトのソースが目にも鮮やかだ。

無言でかぶりついたディアンににっこりして、僕もはむっとやった。


「うん、美味しい!」

「……」 

 

瑞々しい卵としっかり味付けしたそぼろ。噛みつくたび染み出すエキスを、硬いパンがしっとり吸い込んだ。既にほとんど食べているディアンが、じっとパンを見ている。


「どうかした?」

「知らねえ味がする」

「あ、僕が作ったから? ごく普通のものしか入れてないと思うよ」

「てめえが?」 


ディアンの舌はきっと、ミラ婆さんやローラの味に馴染んでいるのかな。

好き嫌いはないと言っていたから気にしていなかったのだけど。


「好みじゃなかった? どういうのが好き?」


もう一つ、パンに手を伸ばすのを見て、苦手というわけではなさそうだとにっこりする。


「別に……何でも食う」

「そう? じゃあまた作る?」


くすくす笑いながら、そう言ってみた。きっと、返って来るだろうセリフと顔を浮かべながら。

だけど――しげしげパンを見ながら食べていたディアンは……こくり、と頷いた。

 

「!!」


思わず上げそうになった声を、パンで押さえて飲み込んだ。

あっと言う間に食べ終わったディアンが、指を舐める。


「僕……半分で十分なんだけど、ディアンいる?」


無言で差し出された手に、残ったパンを渡した。

がぶ、と大きな口。わずかに膨らませた頬。険のとれた顔に、気付いているんだろうか。


僕は、大いなる達成感と感動を味わいながら、その気持ちのいい食べっぷりを眺めていた。

 


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とっても可愛いルルアとグリポンをぜひご覧ください!
ディアンかっこいいですよ!師匠もね!!

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― 新着の感想 ―
古来より、胃袋を掴んだ方がつよい ルルアよかったね!
オムレツパン美味しそう。 そうだルルア、ディアンを餌付けすればいいんじゃない!
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