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【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第三章

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75 危ないやつ

「お・ま・え・はぁ~~~俺に嫌がらせしてえのか?! あァ?」

「ひてない! ひてないよ?!」


ちゃんと説明したらしたで、こうやって怒るんだから! もう次から言わないよ?!

ほっぺの手をなんとか振り払って、腫れた気のするそこをさする。


「大丈夫、目立ってるのは僕じゃなくて商人さんたちだから! それよりほら、早く食べよう!」


説教が再開されないよう、素早く串焼きを一本取って、はむっと齧りつく。


「わ……おいしっ?!」


相も変わらず定番のゲルボのお肉と比較してしまうと、やっぱり雲泥の差。

あの少しばかり過剰な歯ごたえと鼻をつくワイルド臭は、おいしいの分類ではなかったのだと、しっかり理解できてしまう。

そ、それでも、お安い塩漬けの保存肉よりは、ゲルボの方が美味しかったよ?!


「うま……」


ひとくちで大きな塊を頬張ったディアンが、思わず、といった風にそう零した。

にっこり笑って、僕も口いっぱいのお肉を噛みしめる。

ふとディアンの咀嚼に合わせてみようと頑張って、随分早いなと感心した。一生懸命追いつこうと頑張っていたのに、ごくん、と動いた喉仏に思わずあっと声が出る。


「……なんだ」 

「ふふっ、なんでもないよ。楽しいなと思って」

「はぁ?」


まだ少々飲み込むには抵抗のあるそれを、ごっくん! とやって笑う。

そうだ、ディアンの訓練しなきゃいけないんだった。

なぜか胡散臭そうな顔をするディアンに、鍋蓋のようにコトコト笑いながら、まっすぐ外からぶつける。

 

「ディアンと一緒に食べてるの、楽しいね! 僕、こうやって食べるの好きだよ」

「……は?」


なんでそんな地の底を這うような声を?! 眉間のシワがすごいことになってるんだけど?!

僕、何も悪いこと言ってないよね?!


「なんでそんな顔するの?! 楽しいって言ってるのに! 楽しいと思わないの?」

「思わねえ」

「ひどい?! 美味しいお食事があるのに?!」

「それは『美味い』だ」

「だから! おいしいお食事を二人で食べるのが『楽しい』になるでしょう?」

「ならねえ」


どうして?! 盛大にむくれたものの、かぶりついた総菜パンが美味しくて頬が緩む。

……まあいいよ。だってディアンはまだまだヒヨッコだもの。

初心者中の初心者なんだ。僕みたいなベテランが、腹を立てるべきじゃない。


「しょうがないね、ディアンはまだまだなんだから。僕が大人にならなきゃ」

「うぜえ……何の話か知らねえけど、とりあえずうぜえ」

「ひょっと?! ひたい!」


懸命にも、肝心な部分は口に出していなかったのに! ちっとも優しくない指が、また僕に襲い掛かった。


 

……ディアンは、僕のほっぺを何だと思っているのか。

耳とか髪とか、もっと引っ張りやすいところがあるだろうに。むしろ、喧嘩なら髪を掴む方が様になるんじゃないの?

遠慮なく引っ張られて、そろそろ伸びてきそうな気がする。

密かにぐいぐい内側へ押し込んでいると、もりもり食べていたディアンが、ちらっと僕を見た。


「なに?」

「いや……お前、どうせギルドで何か言われただろ」

「何かって?」


そりゃ、色んなことを言われたけれど。

でも、怒られはしていないはず。首をかしげて見上げると、何か口に突っ込まれた。

ちゃんと食べてますけどぉ?! ……まあ、美味しいからいいけど。

不貞腐れながら、何か分からない美味しいものをもすもす咀嚼していると、ディアンがさらっと言った。

 

「他のパーティに入れとか」

「ああ、勧誘はあったよ。どっちかと言うとギルド員さんの方に」

「行けよ、てめえはそっちの方が向いてんだろ」

「行かないよ? せっかく冒険者になったのに」


僕も、サラっと返す。

あったよ。ディアンと組んでいると知った人が、他を勧めてくることは。心配してくれる人も。

でも、それがどうかした?

鋭く僕を見下ろしたディアンが、ややあって深々と溜め息を吐く。どうやら、正しく伝わったようで何より。


「僕、ディアンと一緒に討伐行けるように、なるべく早くランクアップするからね!」

「てめえ……それで目立ちやがったのか」


あっ、バレてしまった。

笑って誤魔化しが通じるはずもなく、橙の瞳がじとりと僕を睨む。

だけど、ふとその鋭さが緩んだ気がした。


「……どうせ冒険者するなら、早くランク上げろ」

「え、うん!」

「てめえ、言っても聞かねえんだろ。なら、置いて行く方が危ねえ」


僕は、ぱっと顔を輝かせて身を乗り出した。

それは、つまり――


「一緒に行こうって言ってる?!」

「どういう耳してんだ! 言ってねえ!!」

「そういう意味でしょう! やった!」


がくり、と天井を仰いでのけ反ったディアンが、『めんどくせえ……』なんて失礼なことを呟いている。


「でも、危なくないよ? 町なのに。僕、喧嘩だって強いよ?」


ふんっ、と拳を突き出してみせると、鼻で笑われた。


「てめえの心配じゃねえ、トラブルの心配だ。明日、ギルドへ行くぞ」

「うん! でも、僕は討伐に行けないよね?」

「討伐じゃねえ。てめえ、ギルドのシステムから変えるようなことしたんだろが。強請りに行くぞ」

「ええっ?! なんで?」

「ランクアップしてえんだろが」


にやり、と笑うディアンに、僕もきゅっと唇を結んで頷いた。

そうか……頑張ろう。ギルドを相手にだなんて、そんなこと考えてなかったよ。


「分かった……! 僕、効果的なものを考えてみる。そうだ、ギルドの綱領に使えそうなものがあったはず! でも待って、それならあの商人さんシステムが根付いてからの方がいいかも。それなくしてはギルドが潰れる、となった頃に――」

「待て。待て待て待て。早まるな」


がしっと片手で頬を潰され、ぱちりと瞬いた。早まってないけど……むしろ、もう少し待ってからと言ったのに。


「冷静にギルドを潰す計画を立てるな」

「潰さないけど、でも、潰せる手立てがないと強請れないよね? 切り札は必要だよ?」

「……分かった。お前は何もするな。俺が言う」


そ、そう? 僕も一緒に頑張ろうと思ったのだけど……。

せめて必要な魔道具なんかは……と尋ねて、僕は心底ディアンに引かれたのだった。


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― 新着の感想 ―
ルルアったら恐いよ(^_^;) ディアン頼んだよ!
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