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9-8

久しぶりの全力。


それは今まで意図的に使っていなかったとあるスキルを解禁する事。


このスキルを使うと地力強化にならないので使ってませんでしたが、相手の方が技術も身体能力も上なのですから仕方がないです。


なので久しぶりに使いました、身体強化スキルを、魔力操作スキルで魔力を全力で込めながら。


突然パワーとスピードがアップした事で翻弄されたのか少女人形も戸惑いを見せ、その隙を逃さずに私が持つ最大の攻撃魔法を撃ちました。


「サンダーボルト!」


相手を包み込むほどの太さの電撃を至近距離から放たれた少女人形は回避する事も出来ずに直撃。


流石に大火力の魔法をこの距離で受けては耐えれなかったようで、まるで人形のように吹き飛んだ。


「ま、まさか、雷魔法なのですか!」


クロードさんが何か言ってますが、幾ら雷魔法でも倒せるとは思ってないで私は空魔法ストレージでヴァルキリーレイピアを納め、ガントレットとグリーブに雷魔法サンダーボルトを魔法剣で込めた。


吹き飛んだ少女人形は宙返りして両足で着地し、自身の状態を軽く確認して異常がないと分かると私に向けて突っ込んできた。


そこからは私と少女人形だけの激しい格闘戦の幕開けで、身体強化スキルによって力こそまだ負けるけど、器用さと素早さで優った今の私なら技術の差も埋まる。


ほぼ互角の戦いへと至った私たちですが、相手は人ではなくゴーレム。


私が至近距離から魔法を放てるように、至近距離からビームを放つ。


光魔法で曲げるなんてこの距離では出来ませんから大きく避け、風魔法エアウォーカーで空を駆けて反撃です。


流石に少女人形も空中で足場何て形成出来ないから私のアクロバットな動きに翻弄され、完全な互角な状態へと持ち込めた。


「空中を足場に? まさかエアウォーカーまで使えるのですか!」


だからクロードさんの発言は以下略です。


正直魔法で視界を飛ばすとかやっている余裕がないので確認できませんが、大怪我をした二人は大丈夫なのでしょうか?


そしてクロードさんも驚いてないで魔法を撃ってきてください。


「くっ、早過ぎて割り込めない」


説明セリフをありがとうございます。


いや、まあ、魔法がほとんど効かないので意味がないのかもしれませんが、それでも援護ぐらいしてくださいよ。


「アルミラージュさんの怪我は治せました! でも意識が戻りません!」


「ミゥさんも早く! クロードさんは二人の武器を回収して渡してください!」


「「はい!」」


指示だしをしていた隙を突かれて至近距離からビームを食らい、ちょっと吹き飛ばされましたが、凄く痛いです。


久しぶりの一撃での大ダメージです。


受けた感じからするとビームは光精霊と火精霊が大きく関係する攻撃のようですね。


以前光魔法でビームが撃てないか試しましたが、どうも火魔法が関係しているようで、私には使えそうにありません。


それに聖魔法のホーリーレイとかいう魔法が存在しているようですし、私には無理でも誰かに使ってもらえるかもしれないので、今後に期待ですよクロードさん!


それにしてもこの少女人形、私の戦い方を真似しているという割に、体術のみですね。


ビームも使ってきますが魔法が使えないからか、ちょっと違和感を感じます。


私だったら拳と拳が打ち合った時に、魔法剣技とかして相手のバランスとか崩しに掛かるのですが。


などとちょっとでも思ったのがフラグだったのか、右手と右手が激突しそうな瞬間に、少女人形の右手に魔力が集まりだしました。


「っ!? 魔法剣技!」


インパクトの瞬間、私の右手から雷魔法サンダーボルトが放たれ、少女人形の右手から魔力のようなものが放たれる。


お互いに大きく吹き飛び、少ないながらもお互いにダメージを受けました。


い、今のって魔法剣技?


いや、もしかしたら体術系統のスキルなのかも知れません。


何せ女将さんは相手の防御力を無視した攻撃とか出来ますし、もしかしたら手から圧縮魔力を放つ攻撃とか出来そうです。


それ、どこの戦闘民族ですきゅぃー!?


と、驚いている場合ではないので、右手に改めて魔法剣を使いながら激突再開です。


「痛かった! すっごく痛かったー! 死ぬかと思った!」


「ミゥさんも回復できました!」


「アルミラージュ嬢も意識が戻りました!」


私が時間を稼いでいる間に朗報が舞い込んできました。


全力を出して正解でしたね。


しかし、まだ私は切り札が幾つかありますので、それを使う時間が欲しい。


そして全力を出しても互角な相手との戦いでどんどん職業レベルが上がってるので、覚えたクラススキルも使えたらもっと有利に戦える。


だからせめて数秒でも良いから誰か押さえてくれないでしょうか?


「誰でも良いので変わってください!」


「「「「無理!」」」」


こんな時まで唱和は要らないです!


と、いいますか、皆さん本当に息がぴったりになりましたね!


「1分、いえ、10秒で良いので時間を、って、わ、わ、わ」


会話していたら隙が生まれるのでビームの直撃再び。


大きく吹き飛ばされた私は地面を転がり、何とか体制を整えた。


「ちょっと、サクラちゃん!?」


ミゥさんが叫びましたが返す余裕もないので、すぐさま突撃。


だってそうしないと少女人形はミゥさんたちに駆け寄ろうとしてましたし。


そして切り札その1を使う事にしました。


先ほどの感じからしてあまり効果は望めませんが。


「解放、魔法剣技! 魔法剣技! 魔法剣技! 魔法剣技!」


「れ、連続で使うなんて非常識ですわ!」


非常識だなんて、使えるのですから常識です。


左右の手足に込められた計4発の雷魔法サンダーボルトを全て叩き込み、少女人形を大きく吹き飛ばす。


「やりましたね、サクラさん!」


ちょ、それ、効かないフラグですよ、リリーさん。


まあ、フラグも何もなく、倒せるとは思ってませんでしたが。


吹き飛んだ少女人形は、吹き飛びながら連発で雷魔法の直撃を受けて転がり、俯せ状態で倒れた。


体中から煙が出てますのでダメージは与えたようで、所々に罅が入ってます。


見た目だけで言えば倒したぽく見えますが、見た目は少女人形でもゴーレム。


核を潰さなければ倒せない。


「ま、まさか、雷魔法を4回も受けて倒せないのか」


罅割れが修復されていき、少女人形は静かに立ち上がった。


そして体の状態を確かめるように両手を見、異常がない事が分かったのか私目掛けて駆けてきた。


やっぱり無理でしたー、きゅぃー。




私の最大攻撃魔法である雷魔法サンダーボルトを魔法剣技でパワーアップして4発撃ち込んでも倒せない。


最後の切り札である魔法少女スキルの限界突破(魔法)を使えば行けるかも知れない。


でも、これは使った後に気絶するので倒せなかったらかなりまずいですし、倒せる算段が付くまで使えません。


後1つ、2つだけ攻略にピースが足りないのです。


まあ、ともあれ、雷魔法がダメだったので、次はもう1つの大魔法である氷魔法アイスアローを魔法剣でガントレットとグリーブに込める。


これで何とかなれば良いですが、正直あまり変わらない戦いが続きました。


それからしばらく、体感では5分くらい戦ってますが、完全に千日手状態です。


私がアクロバットな動きをしてるので割り込めないのかアルミラージュさんとミゥさんは参戦せず。


リリーさんとクロードさんはもっと前から入り込めないので、私と少女人形の2人だけの世界になってます。


流石にこのままではいけないとは思いつつも、誰も変わってくれないのでどうしたものか、と考えてましたら、またもや堪え性の無いあの美少女さエルフんが!


「もう、黙って見てられないですわ!」


「だ、ダメだよアルミラージュちゃん。今行っても邪魔になっちゃうよ!」


「でも!」


「そうです。私も先ほどから隙を突こうとしてますが」


「クロードさんは気にせず魔法を使ってください! できればファイヤーボールを!」


「はい!」


我慢できなくなったのは私でした、すみません。


ダメージを与えられなくても爆発して吹き飛ばし効果のあるファイヤーボールなら、多少は意味があるはずです。


なので使ってもらいたくて言いましたが、そこでちょっと思い出しました。


どんなに硬い物でも急激な温度差を受けると脆くなる、という科学知識です。


折角の転生者なのですからハイファンタジー世界の住人としてだけじゃなく、チートな知識を活かした方がお得じゃないですか。


「ファイヤーボール!」


だからクロードさんの魔法が放たれた瞬間に、私も攻勢に出ました。


「解放、魔法剣技!」


「今度は氷魔法ですの!?」


右足で蹴るフェイントを入れつつ、左手で魔法剣技を使い、至近距離で氷魔法アイスアローを放つ。


フェイントを入れたのに、相手の動きをよく見てフェイントにならない体術使いには意味がなく、少女人形は十字受けで至近距離からの十数発の氷の極太杭を受け止めた。


そして背後から10個ほど迫る拳大の火炎球を直前で避け、少女人形に炸裂。


避けたといってもこんな距離だと爆発の衝撃からは逃げられず、いえ、避けた分だけ私は吹き飛んだ。


そして堪え性の無いアルミラージュさんが掛け寄って来ていて、十字受けの姿勢のまま後退していた少女人形に魔剣を振う。


「食らいなさいな、魔法剣技!」


だからそれだとダメージが与えられないと言ってるでしょ、とか思ってましたが。


「え? うそ」


今まで一番ダメージを与えた本人であるアルミラージさんが一番驚く結果をもたらしました。


最大火力の4連発を受けても罅しか入らなかった少女人形の体、そのミスリル製の両手が肘の上から砕け散ったのです。


これは好機、と思って私も魔法剣を使う余裕はないけど走り寄って攻撃を加え、腕が完全じゃないから顔に綺麗な右ストレートが入る。


でも、罅も入らず金属同士がぶつかり合う音が響いただけ。


だれうま、とか言ってる場合じゃなく、私はアルミラージュさんを回収して飛びのいた。


「きゃ!?」


「わ、わ、わ、わ」


だって目が光ってビームを放ってきたんですもの。


「何でミスリルが砕けちゃったの?」


少女人形はビームを放った後、壊れた両手に視線を向け、どんどん修復していく。


「クロードの魔法が効いたのですね」


「いえ、流石にファイヤーボールでミスリルは砕けないかと」


「ああ、あれは急激な温度変化に耐久性を著しく落としたんですよ」


「直前に氷魔法を使ったのはこの為でしたのね」


「はい、そういう事です」


取り敢えず、金属疲労させればアルミラージュさんの攻撃でも少女人形を破壊できると分かりましたし、これで全てのピースが揃いましたね。


さあ、討伐のお時間ですよ!




「打ち合わせ通りにお願いします」


「りょう~か~い。じゃあ、いっくよー、ウィンドブレス!」


少女人形の腕が元に戻るまでの短い時間で倒すまでの算段を付け、私たちは動き出した。


まずは足止めにしかならない、いえ、足止めになるミゥさんの必殺技な竜魔法ウィンドブレスから始まります。


暴風を受けて再び足を止めた少女人形。


止めていられる時間は短く、2度目の暴風だけに反撃もしてきます。


「コンセントレーション!」


放たれたビームはリリーさんが光魔法で上方へと逸らし、皆を守る。


クロードさんは最大火力の火魔法を撃つ為に集中力を高め、アルミラージさんも出来る限り魔力を込めて魔法剣を使う。


そして私は減ったMPをポーションを飲んで回復し、ここまでの戦闘で妖精騎士のレベルが上り覚えた新しいクラススキルを使う。


まずは魔法纏いという身に着けた防具に魔法を込めて防御力を高めるクラススキルで光魔法ライトを込め、至近距離でのビーム対策を。


そして次に使うのは順番を前後させて最大限に魔力を込めた氷魔法アイスアローを魔法剣でガントレットとグリーブに込める。


最後に使うのは覚えたばかりのクラススキル精霊降臨というSP消費が激しくなるけどSPが続く限り精霊を体に宿し、宿した精霊に関した能力値が大幅に上昇するもの。


「もうすぐ切れるよ!」


「精霊降臨!」


暴風が切れるその瞬間に使い、少女人形に向けて飛び出した!


「早っ!?」


「動きが見えないですわ!」


「どう動いてるのか私には見えないです!」


「私でも辛うじて見える程度ですね、動体視力に自信があったのですが」


その動きは私が知る中で一番速いハヤテさんに迫るもの。


動きがちょっとでも見えているなら及ばないにしても今の私なら確実に少女人形を翻弄できる!


稼ぐのはクロードさんが魔法を撃つまでの時間。


多分後数秒の事だけど、SP消費が激しいから丁度良いはずです。


私の動きに付いて行けない少女人形は、なすがまま私の攻撃を受け続けてその場に強制的に留められる。


今の私の敏捷の能力値はSにまで到達してそうですが、体の方が付いて行けずに体中が痛くなってきました。


このスキルを使っての全力は、あんまり使いたくないですね。


数秒が既に経過してると思うのですが、クロードさんまだですか!


と、思ってちらっと視線を向けたら、何だか信じられない大きさの火炎球がクロードさんの頭上で輝いてました。


「爆炎撒き散らす業火よ、汝の力で我が敵を破壊せよ、ブレイズバースト!」


ふっ、とでも言ってそうな笑みを浮かべて右手の指を鳴らして発射された2m級の火炎球。


ブレイズバーストって確か火魔法4レベルで覚える魔法ですから、この戦闘中に魔法レベルを上げたのですか、クロードさん!


あなたはどこぞの主人公魔法使いさんですかー、きゅぃー!


とか言ってる場合じゃないですね、私も行きましょうか!


「限界突破! 解放、魔法剣技!」


魔法少女スキルである限界突破は全SPを消費して、消費した分だけ魔法の威力を上げる必殺技。


その状態で繰り出す4発の魔法剣技による氷魔法アイスアロー。


もはや杭どころかランスとでも言いたげな大きさの氷の槍が百近い数になって少女人形を襲う。


これでも倒せないでしょうけど、全身に霜が付くほど冷やされた後、高火力の魔法を受けてただで済むと思わないで下さいね。


私は勝利を確信して笑みを浮かべ、反撃で飛んできたビームを受けて吹き飛ぶ。


ダメージこそ魔法纏いで軽減させたけど至近距離からの反撃にはどうする事もできず、ブレイズバーストの爆発も相まって宙を舞った。


「止めですわ! 魔法剣技!」


でも最後は私やクロードさんじゃなく、爆炎に身を焦がすのも構わず突撃してきたアルミラージュさんのもの。


魔剣たちの刃が両腕に食い込んだ瞬間に魔力弾を解放させ、脆くなっていたミスリルの体を吹き飛ばした。


上半身が砕け散った少女人形は、まるで黒ひげさんみたいに首が飛び、SPが切れて身動き取れずに宙を舞う私と視線が合った。


目が光ってますね、しかも今までよりもぴかぴかと。


このタイミングで今までしてこなかった連続発動ですか。


まさか首だけになってもまだ動けるとは、そういえば核を潰さなければ動き続けるんでしたね、うっかりきゅぃーです。


どうやら核は頭部にあったもよう。


まあ、もう私にはどうする事もできないのですが。


「いやぁ、つめておいて良かったよ」


私が意識を失う最後に見たのは、ミゥさんに短剣を突き立てられた少女人形の顔。


お互いの健闘を祝福するかのように、無表情だったその表情を笑みに変えていた私そっくりなものでした。




「「「かんぱーい!」」」


こん、と木製のコップが3つ合わさり、小気味良い音を鳴らす。


現在私はネルルの安らぎ亭の酒場でアルミラージュさんとミゥさんの3人で祝勝会です。


厳密には酒場中に酔っ払いさんたちが屯してますが、一応私たちだけの祝勝会です。


他の人たちはお祭り気分を味わう脇役です、とか酷い事を言うつもりはありませんが。


さて、王選の勝利条件である5階層の主を討伐した私たちは、気絶した私を担いで急いで転送陣で1階層までも戻りました。


担いでいたのはアルミラージュさんで、ちゃんと背負って運んでくれました。


何故急いでいたかといえば、主を討伐すると扉が開くようになり、締め出していた王子さんたちが雪崩込んで来たら大変だからです。


なので怪我の治療は後回しにし、気絶した私をアルミラージュさんが、走れないリリーさんはクロードさんが背負っての逃亡帰還劇でした。


案の定、討伐直後に扉が開くと同時に駆け込んできて、中々主が現れずに討伐されたと分かった王子たちは転送陣で1階層に戻って追い駆けて来たそうです。


怪我をしてるし背負った状態でしたから差をどんどん詰められて、私たちがダンジョンを出て管理者であるギルド職員に報告した時にはかなり接近されていたとか。


不正だー、とか、無効だーとか騒ぐ王子を無視してそのまま5階層の主を討伐して得た人の心臓ほどある巨大な魔石を提出し、主討伐を証明して終了。


晴れてリリーさんの王選勝利が確定して、新女王誕生となりました。


その後即座に新女王誕生の発表の場となり、最低限の身支度や治療を終えた私たちはそのままギルド前広場でお披露目。


この時には流石にリリーさんも背負われておらず、気絶中の私だけはアルミラージュさんの背中です。


この件に付いては気絶していた良かったのか悪かったのか、判断に迷うところです。


いえ、迷う必要もなく気絶してさえなければ!


ごほん、そして新女王誕生発表セレモニーがいよいよ始まるという時に、トチ狂った王子が魔剣ダインスレイブを抜いてリリーさんに襲い掛かったそうです。


流石に気が緩んでいたメンバーたちは庇えず、まさかこんなタイミングでと思っていた他の人たちも動けず、リリーさんの命もこれまでと思った時、動いた人がいました。


それはリリーさんの貴族としての後見人をしていた女将さんで、突撃してきた王子の顔を全力で殴り、鎮圧したそうです。


魔剣で防ごうとした分、命こそ落としませんでしたが公衆の面前で新女王を殺害しようとした罪は落とせず、そのまま逮捕。


リリーさんの温情で死罪にこそなりませんでしたが、重犯罪者奴隷として裁かれる事になりました。


そう、ざまぁです。


気絶していたのが本当に悔やまれますきゅぃー!


その後、何とか落ち着きを取り戻してセレモニーは続けられ、新女王となったリリーさんは城で祝賀会です。


私たちも誘われましたが城に行きたくないアルミラージュさんとミゥさんは断り、ネルルの安らぎ亭に戻ってきたそうです。


私も一緒に連れて来てくれたのは感謝です。


だって、城になんて行きたくないですからね。


そして気絶から回復したのは既に夕方で、そのまま盛り上がる酒場で私たちの祝勝会となったのです。


「と、いう事があったのですわ」


「なるほど。城での祝勝会とか勘弁してほしいので助かりました。ありがとうございます」


「いえいえー。まあ、サクラちゃんならそういうかな、と思って。後、アルミラージュちゃんが放そうとしないし」


「なっ!? そ、それは」


「アルミラージュさん、ありがとうございます」


「あ、あなたの為ではないですわ! 同じエルフとして、そう、同じエルフとして人間に頭を下げさせる訳に行かなかっただけですわよ!」


はい、美少女エルフのツンデレ頂きました、ごちそうさまです。


その後私たちはダンジョンでの出来事を振り返りつつお互いを称え合いました。


本当に色々な事がありましたしね。


「そういえばサクラちゃんはこれからどうするの?」


「何がですか?」


「ほら、念願の魔法道具は手に入った訳だしさ」


そうそう、女将さんから報酬として魔法ポットを頂きました、何故か2つ。


有っても困らないのでありがたく頂きましたが、物欲しそうにしているアルミラージュさんに1つ渡しましたよ、貸し出しって事で。


「そうですね、一度家に帰ろうかと」


「家ってどこなの?」


「中央地域でもかなり中央にある森ですね」


「あの辺りにエルフの森があったかしら?」


あ、これはまたうっかりさくべーだったかも。


「まったくー、サクラちゃん気を付けなよ。聞いた私もアレだけどさ」


「きゅ、きゅぃー」


「じゃあ、お別れだね。あ、借りてた短剣返すねー」


「ああ、それはそのままお貸ししておきます。次会った時にでも返してくださいね」


「え? いいの? ラッキー。代わりの短剣探すの大変だし、買ったら報酬が吹っ飛んじゃうからねー」


「う、わ、私も」


「ああ、アルミラージュさんに貸していたものですね」


私がアルミラージュさんに右手を差し出すと、何か言いたげに丈夫なだけの妖精鉱製の魔剣を渡してきました。


受け取った私は鞘から抜いて刀身を撫でるように指を這わせ、傷が無いかを確かめる。


「うん、刃毀れどころか傷もありませんね」


「あ、当た前ですわ。私の腕はそれほど酷くありませんもの」


「そのようですね、はい」


「え?」


「今度からは気を付けてくださいね。封印を解いたので切れ味鋭い剣になってますから」


「えっと、良いの?」


「はい。あ、でも貸すだけですから大切に扱ってくださいね。後売ったりしたらダメですよ」


「し、しませんわよ!」


「「ふふふ」」


私とミゥさんは、顔を真っ赤にしながら剣を丁寧に帯びるアルミラージュさんを見つつ、ニマニマするのでした。




それから数時間、私は暗くなった王城の中を歩いていました。


メイドスキルの隠密と闇魔法ハイドシャドウの効果で誰にも見つからずに侵入し、とある場所に向けて移動中です。


侵入当初は目的地が解らなかったので、取り敢えず歩き回って探しておりましたら知り合いに出会いましたので場所を聞いて辿り着きました。


こっそりとその場所、とある人物の寝室に侵入し、様子を伺いました。


「はぁ、私が女王かぁ。やって行けるのかな?」


「この国は官僚制だから王は飾りなので大丈夫では?」


「ひゃ!?」


「こんばんは、リリーさん。あ、リルレッタ女王とお呼びした方が良いですかね?」


「さ、サクラさんでしたか。脅かさないでください。あ、呼び名は今までと同じでお願いしますね」


「分かりました、リリーさん」


「所でどうやってここまで? 後何かありました?」


「私、実は優秀なメイドでもありますので気配を消すのも得意なのですよ」


「そ、そうですか。本当に何でも出来ちゃうのですね」


「それで来た理由は、リリーさんに女王就任の贈り物を届けにですね」


「え? 本当ですか!?」


夜間に警戒している城に侵入してきた相手にその態度で大丈夫なのでしょうか?


自分でやっておいてなんですが、リリーさんが心配です。


なのでリリーさんの身の安全を守れる物をプレゼントです。


女王になるのですからその位を表す物と思って、短杖、略式王冠、マントの3つです。


それぞれに魔法を込めてありますから、所謂魔法道具ですね。


「この杖は光魔法の効果が上がり、王冠は身に着けていると集中力が高まります。そしてマントは身に着けていると矢などを弾きます」


「そ、それって魔法道具なのでは? 凄く高価な物だと思うのですが」


「まあ、リリーさんなら他の人にばらさないでしょうしお教えしますが、私が全部作りました。なのでお金は掛かってませんよ」


「ええ!?」


「あ、手入れは特に必要ありませんから。汚れた場合には魔力を込めれば自動洗浄されますので」


「す、凄過ぎです!」


「あ、それと私は明日にでもこの国を出ますので、挨拶に来ました」


「ええ!?」


「では、そういう事で。リリーさん、お元気で。何かありましたらまたお手伝いしますよ」


「え、あの、その。サクラさんありがとうございました」


「いえ、どういたしまして」




こうして、私のこの国での用事は全て終わりました。


冒険者の国と呼ばれるリファール王国での過ごした時間は1ヶ月ほどでしたが、中々濃い内容だったと思います。


コンテラクト王国に続いて良い出会いがあったなぁ、というのが私の感想です。


また是非遊びに来よう、そう思うのでした。















なお、寝室を出た私は扉を少しだけ開けて部屋の中を覗きました、クロードさんと共に。


私たちが見守る中、私がプレゼントしたマントを羽織り、略式王冠を被り、短杖を右手に持ってくるくる回るリリーさんを堪能。


まるで魔法少女アニメに出てきそうな杖ですし可愛い系の美少女であるリリーさんにとても似合っており、私たちは大満足です。


あ、クロードさんにもプレゼントを渡しましたよ。


私は国を出ますので、光精霊の加護を得ていると思われるリリーさんを守ってもらう為、妖精鉱製の指輪を1つ。


指輪に魔力を込めて相手に触ると傷や状態異常を治してしまう、そんな魔法道具です。


取り敢えずこれから直接狙われる事はないでしょうが、間接的に狙われる事はありそうなので、その対策にです。


是非、これからもリリーさんを守ってくださいね、クロードさん。


私がそう言うと、執事だから当然です、と返した時の表情は、やっぱりイケメンさんでした。


だからどこの黒い執事さんなのかと。

お読みくださってありがとうございました。


この話で冒険者の街編は終了です。

次は魔法王国編を予定していますが、現在プロットを組み直し中の為、投稿が遅くなりそうです。

気長にお待ちいただければと思います。

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