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8-2

「魔法主体ですのね? この距離でそれは!」


美少女エルフさんはその言葉を合図に襲い掛かってきましたが、それなりの速度だったのでちょっとびっくりです。


正直動きだけなら先日出会ったランク5冒険者のアレックスさん並みではないでしょうか?


その動きを見たギャラリーたちも更に歓声を上げました。


でもごめんなさい。


「良く避けれましたね、でもこれはどうですの!」


最初の突きを躱し、横薙ぎ、振り下ろし、振り上げと連撃を繰り出してきますが、その剣速だと体捌きだけで躱せちゃいます。


周りの反応を見る限りかなりの剣速なのでしょうが、足を止めた剣戟だったら手足でいなす必要はないのです。


美少女エルフさんもしばらく攻撃してきてましたが、このままでは当たらないと分かったのか足を使いだしました。


相当訓練を積んでいるのかその動きは剣舞と呼ぶに相応しい綺麗なものですが、どうも対人戦に成れていないのか正直過ぎて簡単に見切れます。


フェイントも混ぜてくるのですが視線誘導とか足捌きでの誤認とか、そういうものではないのでフェイントがフェイントになってません。


「なっ!? きゃあ!?」


なのでちょっと手で木剣を押すだけでバランスを崩しました。


序に風魔法ウィンドで押したら転んでしまい、スカートが。


「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」


この戦い一番の盛り上がりです、本当に男の人ってすけべーさんです。


でも、安心してくださいね、ちゃんと光魔法で肝心なところは見えないようにしておきましたから。


白く眩しい腿は諦めてくださいね。


「な、な、な、な」


「えっと、見られたくないならもうちょっと丈の長いスカートの方が」


「う、うるさいですわ!」


「あ、まだやります?」


「もちろんですわ!」


転倒した時に手足を擦りむいたのか痛そうな擦り傷が出来てますので聞いてみたのですがまだやるようです。


立ち上がった彼女は木剣を左手に持ち替え、腰の剣を抜きました。


どうやら本気は二刀流のようですね。


「これを使う気はありませんでしたが、あなたもやるようですし仕方がありません」


使う気がなかったのなら最後まで抜かないようにしましょうよ。


しかもその剣、妖精鉱製じゃないですか。


多分一族の宝剣とかじゃないんですか?


そんな武器まで使っちゃって大丈夫なのでしょうか。


こんな衆人環視の中で見せてしまったら後から面倒事に巻き込まれちゃうと思いますよ。


「本気で行きますわよ!」


そんな私の心配は関係ないとばかりに仕切り直しで突撃してきましたが、左手を突き出しての突きから始まるようです。


そして木剣に魔力を集めているようですから、おそらく妖精魔法で形状変化させる作戦なのでしょう。


念の為、風を纏っておきましょう、えい。


「食らいなさ、なんですって!?」


やっぱりそうでした。


木剣に花を咲かせて花粉攻撃を仕掛けてきましたが、私は風を纏っているのでそれらを弾き飛ばし、連撃で放ってきた妖精鉱製の剣を下から突き上げて払いました。


「なっ!?」


「面白い技ですけど同じエルフに見せ過ぎです。もうちょっと工夫した方がよいですよ」


「きゃあああああああ」


右手の剣を突き上げられてバランスを崩した彼女の懐に潜り込み、腕を取って背負い投げ。


そのまま地面に叩きつけようと思いましたが、美少女エルフさんは空中でバランス取ってまるで体操のムーンサルトのように体を回して足から着地しました。


「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」


再び歓声が上がったのは華麗な宙返りと、スカートがひらひらしてすけべーな男性陣から。


私も思わずおー、とか言っちゃいましたが単純に凄いと思ったからです。


やっぱり踊り子さんなだけあってボディバランスが優れていますね。


「まさかあそこから立て直すとは思いませんでした。まるで猫ですね」


「だ、誰がにゃんこですって!」


猫をにゃんこと呼ぶ可愛い美少女エルフさん、お友達になりたくなりました。


「まさかこれを初見で見破るだなんて・・・これは全力で行かなければならないようですわね」


「さっき本気で行くと言いませんでした? 後、その手の事をするなら目の前で木剣を作るとかやめておけば良かったかと」


「う、うるさいですわ! 今度こそ、目にもの見せて差し上げますわ!」


そう叫んだ美少女エルフさんは両手に、いえ、厳密には両手の武器に魔力を集め妖精魔法、これは多分魔法剣を使うのでしょう。


妖精戦士なのですから使えて当たり前だと思いますが、流石に洒落になってない手段を使いますね。


職業から精霊の力を基にした魔法は使えないはずですが、妖精術師の魔力弾を込める気かな?


木剣の方はそれほど影響なさそうですが、妖精鉱製の剣で魔法剣なんか使われたら風の防御を突破され、私が作った衣服でも切り裂かれて大怪我しちゃいそうです。


「えっと、そこまでするなら私も少しだけ本気を出しましょう」


「まるで今まで手を抜いていたみたいに言いますわね」


魔法剣が完成して再び構えを取った美少女エルフさんに向かって右手を突き出して宣言しました。


「だって私はあなたが言うように魔法主体ですよ。ですから魔法をお見せします」


「今から魔法を使っても私の方がはや、って、何ですのそれは!?」


私の右腕の周りを回る10個の球体。


それは一瞬で現れた魔力の塊、妖精魔法の魔力弾。


威力は攻撃魔法の中でも最低ランクで拳程度の大きさの石を投げた程度のもの、それでも十分痛いですが。


勿論魔法ですから込める魔力を増やせば威力は上がり、カボチャぐらいの大きさの石を投げるような強力な攻撃魔法に代ります。


ただし魔力弾は魔力効率の悪い魔法ですし、これだけの数を発動してしまうと膨大なMPを消費します。


それにそんな事をしたら確実に美少女エルフさんはスプラッタな目に遭うでしょうから、最低レベルの威力でいっちゃいます。


でも十数と投げられたらかなり痛いですから頑張ってくださいね!


「じゃあ、いきますよ、きゅぃー」


「ちょ、ま、きゃ!?」


まるで機関銃のようにどんどん魔力弾を発射して、踊れ踊れーをやってみましたが、美少女エルフさんは本当に踊っているかのように避けちゃいます。


幾つか剣で切り裂いてますし、剣舞のように見える回避行動ですが、余裕がないのかかなり必死です。


「おお、これを避けますか。では、お代わりは如何ですか? それ、きゅぃーっと」


「ええ!? そんな連続で!?」


右手の分を撃ち終わるやいなや左手を突き出して同じく10個の魔力弾を発動して発射。


「お、おい。流石に洒落にならないぞ、これ」


「ああ。余り強い魔法じゃなさそうだけど、それでもあの数を連射って凄いな」


「そっち!? いや、それも凄いけどこれじゃあイジメぽくないか?」


何て外野の声が聞こえますが、今は戦闘中なのでスルーしましょう、スルー。


そして現在剣舞に集中している美少女エルフさんも聞いていないようですし、問題なくスルーです。


「がんばりますねー。まだまだお代わりは必要ですかー? きゅぃー」


「ま、待ちなさい!」


「嫌でーす」


「「「「「「「「「「ひでぇ!?」」」」」」」」」」


外野が何か言ってますが、絶賛スルー中なので気にしません。


そして決闘中なのですから待ったなしです。


降参するなら待ちますけど、あ、避けきれなくなってきましたね。


1発当たっただけでは顔を顰めただけですが、2発3発と当たればバランスを崩して避けれなくなりました。


合計50個の魔力弾の内、9割近くを避けた美少女エルフさんに思わず拍手したくなりましたが、流石にそれはやりすぎだと気付いて反省です。


軽症状態という鑑定結果からいえばまだ戦えそうですが、見た目はボロボロというか何とか立っている状態に見えるので、状態には現れない程度の軽い失神状態なのかも。


ちょ、ちょっとやり過ぎちゃったですきゅぃー。




「えっと、そろそろ降参してくれませんか?」


「な、何を言ってます、の。まだ、私は戦え、ますわ」


いや、私を含め、ギャラリーたちももうやめてーって顔をしてますよ。


唯一根性あるじゃないかと言わんばかりに頷いているのは女将さんだけです。


女将さんは鉄拳姫なんて二つ名がある脳筋淑女さんですから除外しちゃいますけど。


「続ける前に聞きたい事があるのですが」


「な、なんです、の?」


「あ、でも今のままでは話難いですね、きゅぃー」


「え? 痛みが消えていく。まさか回復魔法?」


「リザレクションです。それで質問してよいですか?」


「え、ええ」


決闘の最中に会話をしたいと言い出して怪我を治すとかされたら混乱してしまいますよね。


落ち着いてもらいたいからそうしましたが、本当なら光魔法リラックスも使った方が良いとは思います。


でも光魔法まで使えるとばれると面倒そうですから、周りの人たちに。


普通は複数属性の魔法を使えないみたいですし。


既に風の魔法を使ってますから今更な気がしますけど、って、それだったら光魔法のヒーリングとリラックスで良かったじゃないですきゅぃー!?


あ、すみません、混乱して噛みました。


「それで聞きたかった事なのですが何で決闘する事になったのか、というそもそもな疑問です」


「あ、あなたが人間と同じように」


「あなたも冒険者ですよね? 冒険者も人間の真似事では? 確か冒険者の祖は人間だったはずですし」


「う」


「まあ、真似じゃなかったとしても、私が酒場で働いていたからと問題はないはずです」


「エルフが人間の下に付くだなんて」


「あ、私も冒険者ですから依頼でやっているだけですよ」


「え? うそ?」


「本当です。それで働いていてダメというなら冒険者自体がダメになりそうですが、アルミラージュさんはどう思いますか?」


「え、えー、その」


私の論破にぐうの音も出ないようで、えー、うー、と唸っているだけの美少女エルフさん。


その姿を見て私は女将さんに視線を向けました。


「勝負ありだね。サクラの勝ちだよ」


アレだけ戦っておきながら、決まり手は舌戦による論破でした。




「あなたが同室だったの!?」


はい、そうです。


私が同室の妖精さんなサクラです。


決闘騒ぎが終結した後、美少女エルフさんはネルルの安らぎ亭に泊まる事となりましたので案内し、私が同室の許可を出しました。


その時点で私が同室者だった事が判明したのでびっくりしてましたが、まあ、それはさておきましょう。


この宿のルールなどを説明し、何時まで宿泊予定なのか等々従業員としての仕事をしました。


しっかり説明して質問を受け付けた後、私は宿の方は対象外だと気が付きましたが、後の祭りです。


女将さんからよろしく頼むとお願いされた時点で気が付かなかった私の落ち度なのですが、おのれ。


「ふう。それにしてもあなた強いのですね」


「それなりだとは思いますが、まだまだですよ私なんて」


「それって嫌味に聞こえますわ」


兎も角、今日から美少女エルフさんとの共同生活の始まりです。


「あ、ベッドはそちらが良いですわ」


「お湯を運んでくださる?」


「部屋で食べたいわ、運んでくださる?」


きょ、共同生活ですよね?

お読みくださってありがとうございました。


今日から三日連続で投稿する予定です。

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