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かわいい幼馴染が仕掛けてくる

心機一転、再スタート。

そう思いつつ、海で釣り竿の仕掛けを投げ入れ、

気長に魚の反応を待つ。

塩屋の漁港でよく釣ることはあるが、明石の潮は

速いので、船だとなかなか難しい。

となりには美空のおじさんがいる。

「おじさんって、学生の時モテた?」

ふいに質問されたおじさんがむせた。

「なんでそんなこと聞くんだい?」

おじさんは美空の親だけあって、なかなかの

イケメンだ。きっと告白されたりしたことも

あったのではなかろうか。

ふいに気になったのだ。

「まぁ、なんというか…それなりに」

雑だな。含みのある言い方ではあるが。

「なんでおばさんを選んだの?」

「そりゃな。いろいろあってだな」

だからそこを聞きたいのよ。

おばさんだって、今でこそ漁協関係のお手伝いを

しているものの、少し年の離れた美空のお姉さん、

と言われても遜色ない。

美空はふたりの結晶だと言っても過言ではないと

思っている。

「なんというかモテ期があったんだけどな」

おじさんにモテ期があったのか…

「ただ、積極的にこられてなし崩し的に、みたいな」

何、おじさん。落とされたの?何があった。

「何かにつけて待ち伏せされて、お世話がな…」

おじさんはそこで少し言葉を濁した。

おじさんに何かつらい記憶を呼び起こしてしまった?

なんだか辛そうに見える。

甲斐甲斐しいお世話?あれ、それって誰かに

似ているような…。

…いや、やめておこう。

少し話も聞けたし、釣りもほどほどに引き上げた。

今晩のおかずくらいは釣れたかな。


夏休みも明け、ケガも治ったこともあり、

新鮮な気持ちで新学期を迎えていた。

サッカーでは、夏の大会でチームは予選敗退。

自身が出場出来ていないため、悔いは残るが、

チームに迷惑をかけた分、また仕切り直して

頑張っていくつもりだ。

その代わり、夏祭りはにぎやかに過ごせた。

和也だけでなく、咲良や水無瀬先輩、そして

美空もいっしょに出かけられて、みんないい

思い出になったのではないか。


季節は変わり、学園祭シーズンとなった。

春の文化祭は、うちの学園と交流があるという

美空の学校から生徒会や活動メンバーがうちに

やってきていた。

その時はなぜか校内の散策をいっしょにする

ことになったのだが…

今日は外部からの参加も可能なので、関係者

という理由がなくても気軽に参加できる。

例年、かなり賑わいを見せるようだが、

当然、美空も来ることになっているため、

いっしょに回ろうと言われている。

何やら今回は友達も来るため、顔合わせの

挨拶がしたいそうだ。

気恥ずかしいので、ご遠慮願いたいところ

ではあるのだが、美空の親友ということで

あれば仕方がない。

今回は咲良も学園祭に参加するらしく、

うるさいので少し厄介だ。パリピめ。

うちのクラスの出し物は和菓子屋カフェ。

バイトの影響もあるかもしれないが、和也

のせいでこうなった。

お店の指南もあり、ジャンボパフェとかは

店の味をなるべく再現できるとのことだ。

おれはカフェのホールとして、シフトに

入ることになっている。

パフェづくりはおれも手伝うので問題ない。

こちらはタダ働きである。

「いらっしゃいませ」

愛想よく笑顔を振りまく。

バイトで培った接客で、てきぱきとこなす

姿は自分でも成長を感じている。

お店に来ていた女子高生らしき2人組に

声をかけられる。

「店員さん、パフェおねがいします」

「パフェですね、他に何かご注文は?」

「店員さんとRHINE交換はありますか?」

「…、そういうのは禁止されておりまして」

何かひそひそ話しているが、なんだろう。

「かわりに写真いっしょに撮るとか?チェキは?」

そんなやり取りを繰り返していると、となりから

ぶつかってくる輩が。うちの助っ人女性店員だ。

「シフトの時間終わりましたのでわたくしが承ります」

女子高生たちは渋々メニューを追加で注文し、

ブツブツ言っていた。

なぜかとなりのクラスなのに、咲良も店員を

応援で担当しているらしい。

芸能枠、勝手なことを言って入り込んできた。

自分のクラスの出し物を手伝えよ。

そんなことを思いながらバックヤードに戻る

手前で席の方から声をかけられる。

「店員さん、オススメは何かしら?」

水無瀬先輩だ。見るとお客としてテーブルに

座っていた。

「ジャンボパフェがオススメですが、量が…」

「あら、いっしょに食べてくれれば大丈夫よ」

「いやいや、店員がパフェ食べてるのもちょっと」

「それじゃ1日ボディーガードをお願いしようかな」

「お抱え運転手の車で安全にお帰り下さい」

お金持ちなんだから、楽に帰りなさいよ。

ケガは治ったものの、何かにつけておれに

声をかけてくる。

先輩のコンサートチケットをもらい、この前

演奏を見てきた。やはり素晴らしい音色だ。

音楽に詳しいわけではないけど、何か人を

惹きつけるものがあるのだろうかと不思議に

聞き入っていた。

演奏後の楽屋?に花を持っていったら、周囲に

冷やかされてファンより『彼氏』だと騒がれた。

花束は間違いだったのかな。

先輩、彼氏って宣言してたし…ダメでしょ。

そんなやり取りをしつつ、なんとか逃げる

ように戻ろうとしているのを、離れた席から

鋭い眼光で見つめるひとりの女性がいた。

美空だ。友人らしきもう1人とじゃれ合って

いるような気がした。

「ミク~、彼ピモテモテじゃない?盗られるね」

ピキッと何か禍々しいオーラが漂っている気配

を感じるが、気のせいだと思いたい。

おれは悪くないからね。たぶん。

「何か言いましたか?朱莉さん」

怒りあらわに嫉妬の炎を親友にぶつける美空。

こめかみをグリグリされながら苦しむ親友。

かわいそうだが、見て見ぬふりをしよう。

「彼氏さんや、この哀れな親友を助けてはくれぬか」

「…。触らぬ神に祟りなしと言いますし」

「鬼だ、ここにも鬼がいる!鬼夫妻」

グリグリがひどくなるが、これで挨拶は終了。

悲鳴は聞こえるが、そういうことにする。

そんな訳で、おれを取り巻く環境は賑やかだ。


小さい頃に見た、あの水平線。

向こう側に何があるのか気になっていた。

今、自分はどこまで来れたのだろう。

あの頃と比べると少しは大きくなった。

島につながる大橋も少しは小さく感じる。

でも――まだ足りない。色んなことが未経験だ。

自分次第で世界は広げられる。

もう自分をセーブすることはしない。

こんな自分を大切にしてくれる友人たち。

その期待に応えるためにも、これからは

色んな事に本気で向き合っていくことを

増やしていくつもりだ。

無理は禁物だが、大切な人を守るために

もっともっと成長する自分でいたい。

そう決意してエプロンを外すと、彼女の

親友の危機を少しは助けてあげるため、

美空の待つ席へと足早に向かっていった。


さて、今日は何を企んでいるのかな。

きれいな顔立ちの笑顔の裏に、今日も深い闇がある。

……深淵を覗くのは、やめておこう。

この時のおれは、まだ何も見えてなかった。

挿絵(By みてみん)

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


本作は人生で2作目となるラノベ作品です。

実は個人として初めてクラウドファンディングに挑戦し、

無事成功したあとに書き始めた作品でもあります。


当初は「2作目を書き上げること」が目標でした。

ただ、「じゆうに文庫」のCMを見ているうちに、

応募にもチャレンジできたらと思うようになり、

6月15日の締め切りを目標に、時間の合間を縫って

ひとつひとつ書き進めてきました。


よくある幼馴染ヒロインが負ける展開がどうしても

悔しくて、今回は純愛寄りの物語のつもりでした。

しかし書き進めるうちに、自然と笑いを含んだ展開

を心がけるようになり、さらに攻めの強いヒロイン

も生まれました。


もう一人の幼馴染や先輩キャラも加わり、賑やかな

学園ラブコメ作品となりましたが、書いていてとても

楽しい作品になりました。


本来はもう少し繊細な関係性を描くつもりでしたが、

この形もまた、自分らしい作品になったのではないか

と感じています。


物語はひとまず一区切りとなりますが、

まだまだ続けられそうな余白も残っています。

もし機会があれば、さらに成長した形で

続きをお届けできたら嬉しいです。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

またどこかでお会いできることを願っています。

イラストに協力いただいたMAYUさん、

いつも進捗を見守ってくれたゆうさんに、心から感謝です。

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