最終話 世は並べて事もなし! +XXXXXpt
時が流れるのはあっという間で、一瞬だったようなそうではなかったような。
少なくとも、子どもがいると、こいつらが育つだけでイベントが山盛り。
日々驚いたり、笑ったりしていると、季節がバンバン過ぎ去っていくのだ。
「おとたーん!」
カッツが上の階から降りてきて、尻尾を使ってびよーんと跳んだ。
「うおおーっ! 人竜族のバネは凄い! まだ四歳なのに俺の執務机まで飛び上がってくるとは……」
カッツをキャッチしながら驚く俺なのだ。
眼の前には、陳情に来ている商人。
「お、お子さんですか」
「ああ。もう六人いるからな。その長男だ」
「ははあ……!」
カッツを始めに、デリアとの間の娘リーファ。
ヨルカとの間にヒストリア、アイラとの間に双子でリーフとブロッサム。
で、マキナがこの間産んだのがポイク。
増えた増えた!
とても賑やか!!
ポチョは子育てユニットを装着し、ビナスもそれっぽい怪物の因子を吸収して人形になり、子育て支援におおわらわだ。
一番お兄ちゃんのカッツは、母たちが弟妹にかかりきりなのをいい事に、こうやって自由に動き回る。
「おとたんあそぼ!」
「おう、ちょっと待っててな。おーい女神! 頼む」
『はいはい』
空間から滲み出すように女神が現れて、カッツの手を取った。
『全く、女神に対するぞんざいな頼み方も堂に入ってきましたね?』
「いやもう、大家族で大変なんだ」
『四年で六人も作るからです! ウグワーッ! 大家族はもうちょっとだけ続きます! 実績・道半ば? 解除! 2500pt獲得!』
「めがみたんいこー! じゃーねおとたーん!」
「おう、いってらっしゃい。気をつけてな」
行ってしまった。
しかし道半ばか。
つまり最終的に子どもの数は12人になるってことじゃないのか?
恐ろしい恐ろしい……!
仕事を終えて、本日の騎士爵は店じまい。
「デリアとヨルカは一人で十分って言ってるしな。アイラも双子でてんてこまいだし……。マキナか……!?」
ぶつぶつ言っていると、後ろから近づく足音がした。
「あー! まーたお兄さんったら現実逃避してる。まだまだ子どもができるなら、それはあたし、クリカが産むに決まっているでしょう?」
振り返ったら、俺と同じくらいの背丈の女の子がいた。
赤毛に黒いメッシュが入った髪は、昔はツインテールだったのが今はストレート。
尻尾は黒地に赤い模様が入っている。
すっかり大人になったクリカちゃんなのだった。
「あたしも、もうちょっと背丈欲しかったなー。せめてお姉くらい……は大きすぎるから、デリアくらい欲しかったかも! アイラをちょびっと超えたくらいで止まっちゃった」
「ちょうどいいくらいじゃない?」
「そお? んふふ、お兄さんとおんなじくらいの背丈になったから、そうかもねえ」
にへ、と笑うクリカちゃん。
うーん、改めて見ると、本当に綺麗に育ったもんだ。
可愛いの権化が、可愛いと綺麗のハイブリッドになった。
「それでねえ、お兄さん。クリカ、お願いがあるんだけど~」
「わがままを言う時は、クリカちゃんは昔の可愛い時に戻っちゃうなあ」
「んふふ、女の武器を使うのだ。それでね、お姉たちと結婚した時は、なんとなーく雰囲気でくっついたでしょ? あたしはねー。どーん!! とおっきくお祝いしたい!」
「ええーっ!? ま、まさか結婚式を!?」
「そう、それー! ヨルカのデータベースを見せてもらったんだよね! 昔ってすっごい派手な感じで結婚してたんじゃん! あたしもそれ、やりたーい!!」
つまり、大々的な結婚式と披露宴を!?
いやあ、でも他の奥さんたちの手前、特別扱いは……と思ったら。
「私はいいと思います!!」
「うむ、構わんだろう」
「わしも気にせんぞ?」
「それどころじゃないですよ! ひえー、忙しい!!」
全然OKだったらしく、奥さんたちの賛同を得てしまった。
こ、これは……。
「ねえお兄さーん!」
「ううう、みんなからOKをもらった上に、クリカちゃんに甘えられると弱い……。やるかあ、結婚式!!」
ということで!
ポイントをドカンと使って、凄いドレスを買い、結婚式を行うことにしたのだった!
だが、これはクリカちゃんだけではなく……。
「私もか!? い、いや、ちょっと恥ずかしい……。うわあ、肩とか出てるじゃないか!」
デリアが恥ずかしがり、リーファがそれを見て「ママかわいー!」と喜ぶ。
「まさかわしが、記録にあるドレスを着ることになるとはのう……」
しみじみ呟くヨルカ。
ヒストリアはドレスの裾をぎゅっと握って立っている。
「あーん、ビナスありがとうー! ちび二人をお願いね!」
アイラは双子をビナスに預けたのね。
で、ポチョはポイクを上に乗せ『ポッピピー!』と子どもを預かることに自信を見せる。
頼むぞポチョー!!
「おかたんきれいだねえー。ぼくうれしいー」
「あらカッツ、女の子をおだてるのが上手くなりましたね? これは将来、モテモテかも……」
豪華なドレス姿なのに、子供のことばかりなのはマキナ。
彼女はどういう時でも自然体なんだよなあ。
そしてそして、クリカちゃん。
ミニスカートみたいなウェディングドレスに、長く長く伸びたレースの裾。
くるりと回ると裾が翻る。
見栄えがするなあ。
「それじゃあ、結婚式しよー! クリカはね、お兄さんの腕にくっついちゃう!」
奥さんたちがずらりと並ぶのは、女神の神殿。
女神が結婚の立ち会いを務めてくれるわけで、これはもう家内安全が約束されたようなもんだろ。
……おや?
女神がウグワーって言わないな。
通路街の人々だけじゃなく、貴族たちまでこの場にやって来ている。
おめでたいのと、物珍しいのと半々なんだろう。
なんだかんだで、みんな新しいもの好きだよなあ。
俺はクリカちゃんと一緒に、ヴァージンロードを歩いていく。
「ミアン!」
「ミアン」
「ミアンもよくやるのう」
「ミアンさん、なかなか様になってますよ」
「むふふ、クリカとお兄さんはやっぱりお似合いなんじゃない?」
ずらりと並んだ五人と一緒に、立つ壇上。
眼の前には女神。
彼女はゴホン、と咳払いすると……。
『ウグワーッ! ご結婚おめでとうございます! 今更ですが……ハッピーな未来を作ってくださいね! 500000pt獲得! 夫婦の愛の確認? 今更もういらないでしょそんなん!』
得意げにそう言ったのだった。
「うわっ、とんでもない量が入ってきた!! こんなん、一生掛かっても使い切れないだろ。それにま、こういうのはポイントじゃない気もするしな」
『おや? ポイ活にはもう飽きましたか?』
「俺のためだけのポイ活にはね。これからは、家族のためにだな……」
『思えば遠くに来ましたねえ。ユグドラシルの思いつきで始めたプログラムが、こんなことになるなんて。たった一人のユーザーよ、これまでのご愛顧に感謝します』
女神が笑った。
『そしてこれからもご愛用下さいね』
「もちろん」
俺が答えると、女神は誇らしげに告げるのだった。
『ウグワーッ! 世は並べて事もなし! ま、当分平和な世の中が続くでしょう。実績・繁栄しなさい、人類! 解除! ポイントは……私のお気持ちで付けておきましょう』
おわり




