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【75】竜人族の秘密。


 魔王、改めヨルムさんが身の上話を始めてくれた。


 これは、結構心を開きかけてくれているのではないだろうか。


「えーっと、ヨルムさん…でいいですかね?ということは、あの家に魔王になってからずっと1人でいるっていうことですか…?」


すると、ヨルムさんが頷く。

「そうだよ。だって瘴気を発生させるようになったらモンスターを山程生み出してしまうから。周りに誰か居たら迷惑をかけてしまうからね。


 家族は僕と一緒にいるって言ってくれたんだけど、半年前から僕は1人でここに住んでいるんだ。


 どうせ死ぬなら家族に迷惑をかけずに死にたいじゃない?」


「そうなんだ…。あれ?というか、死ぬ?どうしてそう思ったんですか?聖女に倒される、と思ったからですか?」


私がそう言うと、首を横に振る。


「違うよ。聖女に倒されるとかそういう以前の問題だ。


 君達に魔王と呼ばれている者は瘴気や魔力と一緒に自分の生命力まで一緒に垂れ流しになってしまうんだよ。


 生き延びるには聖女のデスペルを毎日かけて力を無効化するか、瘴気の元になっている臓器に出来てしまった『魔瘴石』を取り出さないといけない。


 僕達竜人にだけ発生する魔瘴結石って呼ばれている珍しい病気だ。


 まあ、もし取り出せたとしても石から瘴気は出るんだけどさ。


 人間に『魔王』なんて呼ばれてるけどさ。ただの病人なんだよ、本当は。笑っちゃうよね。」


…え!!!!


びっくりしすぎて言葉が出てこない。病気?!


 ヨルムさんは自嘲気味に笑う。


「今までの魔王は弱ってる所に聖女が来て、もうどうせ死ぬからいいやって人が多かったみたいだよ。竜人は本当はいくら聖女とはいえ人間になんて簡単にやられるほど弱くはないからね。」


…ちょっと待って。

「じゃあ今までの魔王だった人って…。」


「竜人だよ。え、人間の方では把握してなかったの?」


そう言ってヨルムさんは目を丸くする。

「そういう話は聞いてない、ですね。」


「そっか。まあだからそういう訳だから。僕、もうすぐどっちしろこのままだと死ぬから。出来ればそっとしておいてほしいな。」


何かを諦めたように、そう言った。


「…私に、毎日デスペルをかけろ、とは言わないんですか?」


私が聞くと少し考えてからこう言った。


「うーん、僕の親戚のおじさんみたいに聖女と結婚したとかならあり得るかもしれないけどさ。聖女と僕達は住む世界も基本的には違う。無理でしょ。どう考えても。」


いや、大変だけど、無理ではないよね。私、転移できるし。


「じゃあ、その病気が治るまでは私が毎日デスペルをかけるって約束します。


 というか、親戚のおじさんってもしかしてラミダスさんですか…?」


私がそう言うと、ヨルムさんは固まった。


「…知ってるの?」


「お孫さんと友人です。昨日も連絡取りましたよ。」

…まあレオナさんの自転車の進捗を聞いただけだけどね。なんとかちなみに乗れるようになったそうだ。

 サダオさんと果たして友人かは怪しいけど、敢えて友人と言っておく…。


 あ、そうだ。


「良かったらラミダスさんの所にご案内します。ちょっと夫に外出する旨だけ伝えてきます。私達が外出したら、家の中に入っててもらってもいいですか?」


そう聞くと、目を丸くした後、


「…わかった。いいよ。でもどうやって?」


と言ってくれた。


「来てくれたらわかります。じゃあ行きますね。」

そう言って玄関まで連れて行って靴を履いて貰って、『送信』を発動する。


 ブウウウウン


 目を開けると私とヨルムさんはラミダスさんとキヌさんのお墓の前にいた。


「…!!!!ラミィおじさん…!!」


そう言ってヨルムさんはお墓に駆け寄る。


「ここは奥さんのキヌさんとラミダスさんのお墓です。この岩の奥から実は私達の世界に繋がってるんですけどね。お二人は日本で農家をしていたそうです。幸せそうだったって孫のサダオさんが言ってました。」


「…そうなんだ。僕、仲が良かったんだ。昔よく遊んでもらったんだ。

 本当に、本当にいい人だったんだよ…。あの人が魔瘴結石になってからずっと心配してたんだ。

 

 自分が同じ病気になってからもずっとおじさんの事を思い出していて。


 この病気は本当に孤独なんだ。だから、辛くなった時、おじさんはどうしてたのかなって。どう乗り越えたのかなって。

 幸せに生きていて良かった…。」


そう言って嗚咽を漏らした。


 ああ、そうか。この人、きっとすごく寂しかったんだろうな。


 兄弟もいっぱいいて、家族もこの病気になっても傍にいるっていってくれるくらい仲が良くて。


 それでも迷惑をかけない為にたった1人であの島に移り住んだんだろうな。


 私が恐る恐る背中をポンポン、と叩いてあげるとヨルムさんは泣き笑いのような顔で、

「ははっ。まさか人間に慰められる時が来るとは思わなかったよ。」


と言った。


 

 ―こうして事の成り行きをlimeしてから家に転移すると、皆が待っていてくれた。



「…栄子さんと色々話した。君達のことを信用することにしたよ。ラミィおじさんの孫とも友達みたいだしね。


 さて。僕は、竜人族の族長の三男のヨルムと言います。どうか僕の病気『魔瘴結石』が治るまで宜しくお願いします。」


そう言って、ヨルムさんは皆に頭を下げた。










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