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料理好きの主婦、週末は異世界でシェフになる。  作者: 間宮芽衣


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【74】魔王と初対面。


 午前11時28分。


 あの後も順調に車を飛ばして私達は目的地付近に着いた。


「着いた…はずなんですけど見あたらないですねぇ。」


 私がそう言うと、皆もキョロキョロと周りを見回す。


「何にもねえな。」

ライゼンさんも困惑した顔で言う。

 

 彩音ちゃんもスマホで位置情報を確認してくれたがやっぱり間違いないようだ。


「どうしよう…。これは予想してなかったんだが。」

祥志が困惑した声を出す。


 ここまでせっかく来たのに何もないなんて本当にシャレにならない。


 すると、こうちゃんがチャイルドシートから

「ままー、上!うえ!」

と叫んだ。

(えー…?うえ?)

訝しげに思いながらなんとなく空の方を見てみると。


「…あった!!!見て下さい、あそこ!」

なんと空の上に島が浮かんでいて、そこに小さな家があるのだ。


「…なんだと!ということは竜人族か?」


ライゼンさんの声に少し緊張が走る。


「!!この世界って竜人なんているんですね。」


彩音ちゃんが言うと、ライゼンさんが頷く。


「気をつけろよ、ただの人間よりよっぽど強えぞ。」


ライゼンさんの言葉に不安になってグングルで検索すると、竜の好物にお酒と出て来たのでホッとする。伊勢海老も竜の好物らしいが、それなら同じ甲殻類だし蟹も好きかもしれない。


「シャンパン買っといて良かった…。」

思わず本音を漏らすと、祥志に

「そういう問題かよ?!」

と突っ込まれてしまった。


「とりあえず上に行かないとね。私が皆に結界張るから彩音ちゃんは皆で手を繋いだら浮遊して貰っていい?」


そう言うとすぐに彩音ちゃんが了承してくれたので、車をアイテムボックスに収納し、この前サダオさんとお墓に張った結界を皆に張る。


 飛んでる途中に何かあったら嫌だからね。


 私はこうちゃんを抱っこ紐に乗せて、全員で輪になって手を繋ぐ。


「行きますよ!」

彩音ちゃんの掛け声と共に全員で浮遊する。


 フワァっと全員が浮かび上がり、グングン上へと昇っていく。


「うおおおおおおお、こぇえええええ。」

祥志とライゼンさんがビビっている。


 そうだよね…。自分が浮遊の術を使えるから私は怖くないけど、もしそうじゃなかったら手を繋いで浮遊とか恐ろしいわ…。


 どんどん上に行き、やっと島の魔王の家の前に着いた。


 ゴクリと生唾を飲み込み皆にアイコンタクトをすると頷かれたので、ドアの呼び鈴を鳴らす。


「すみませーん!!タチバナと申しますー。神様のお使いで来ましたー。」


祥志と相談していた通り、まずは警戒心を持たれないように友好的に呼びかけることにした。


 暫くすると、バタバタと階段を降りる音と共に若い男の人の声がした。


「はーい。」


ダルそうにガチャっとドアを開けた男の人はなんだかイマドキの若者って感じである。金髪のツーブロックで灰色の目でお洒落な感じだ。


 20歳くらいだろうか。しかしよく見ると竜人だからか耳がとんがっている。


 私達をまじまじと見つめた後、彩音ちゃんを見て面倒臭そうにため息を吐いた。


「あー…。もう聖女が来ちゃったんだ。何。お使いとか言ってるけど僕のこと殺しに来たんでしょ?」


そう言って嫌そうな顔をした後、物凄いオーラのようなものを放ってきた。


 グオオオオオオオオオオオ


 メチャクチャ肌がビリビリする。うわぁ…。凄く警戒されている…!!!オーラの凄まじさにライゼンさんと彩音ちゃんが身構えるが、祥志が必死で宥めている。


「いや、違います!!アポ無しですみません。本当にただのお使いなんです!!!えーっと魔王様本人でいらっしゃいますか?」


私が内心冷や汗をかきながら聞くと、訝しげながらもちゃんと答えてくれる。オーラは発してるままだけど!!


「…自分で名乗った覚えは無いけどね。人間にとっては、まあそうかな。」


肌がビリビリして電気風呂に入っているような気分だが私は必死で続ける。ここで負けるわけにはいかない。


「宜しければちょっとお時間頂いてもいいですか?ほら!!!こちらに地球産のお土産も持って来ました!チョコレートというお菓子と日本で人気のあるお煎餅です。あとシャンパンというお酒も。宜しければ召し上がって頂けると…。」


そう言いながらお土産を掲げると、魔王は食い入るようにそれを見ている。


「お酒…。ふぅーん…。お酒を持って来たんだ…。」

と食いついて来た。心なしかオーラが弱まった気がする。


 お?これはいけるんじゃないかしら。


「はい。そうなんです。家に立ち入られるのも嫌だと思うんで、良かったら私達の家でお昼ご飯でも食べて行きませんか?その時に食べながら色々お話を出来れば!


 不安だったら調理する様子を見てても構いませんので。」


そう言うと、

「ご飯…?!」

と迷っている。そして、少し考えてから


「…そこまで言うなら食べてもいいかな。でも、念の為調理してる現場は見せてもらうし、調理する人以外は家の外に出ていてもらう。後ろから刺されたりしたら堪らないからね。ちなみに竜人の僕に毒は効かないよ。


 それでもいい?」


そう言いながらやっとオーラを引っ込めてくれた。


 こっわ!!!!怖かった。。。でもやったよ!!取り敢えず話す機会は貰えたよ!!


 私がみんなの方を見ると頷いてくれている。


「それで大丈夫です。ではどうぞお入り下さい。」


そう言ってアイテムボックスから魔王の家の隣に家を出す。他の人たちにはアイテムボックスから温かい飲み物とブランケットを出して庭のベンチに座って待っていて貰う。


「大丈夫か?」

祥志が心配そうに聞いてくるので笑いながら、『大丈夫だよ!』と答えて魔王と一緒に玄関のドアを潜る。


「あ、魔王様。招いておいてなんですけど、家の中にモンスターが生まれたら嫌なので、デスペルをかけさせて頂いていいですか?」

と聞くと、

「…うん。いいけど。」

と困惑した様子で言われたのでかけさせてもらった。


 サダオさんの話だと、キヌさんがラミダスさんにデスペルをかけると1日効果があったみたいだからね。

 

 家の中に入ると魔王が、

「変わった家…。」

と呟いた。

「そうですね。何せここからすれば異世界の家ですからね。」

と私は答えた。


「白魔法、使えたよね?君も聖女なの…?でも、聖女が2人とか聞いたことないけど。それに結婚して子供もいるみたいだし。」


そう言って、魔王は庭でお茶を飲む祥志とこうちゃんを見た。


「私は確かに神様に白の属性を頂きましたが聖女ではありません。ムーンヴァレー公爵家でパートで料理を作っているただの主婦です。あ、先程も申し上げた通り、私は姓はタチバナと申しまして名はエイコと言います。これから宜しくお願いします。


 宜しければ魔王様のお名前も伺ってもいいですか?」


そう言うと、魔王は目を丸くして少し沈黙したあと答えてくれた。


「…ヨルム。僕はヨルムって言うんだ。竜人族の族長の3番目の息子で兄が2人と姉と妹が1人ずついる。


 僕が魔王として目覚めて瘴気を撒き散らし始めてしまったから、この島に隔離されたんだ。」


そう言って寂しそうな顔をした。



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