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料理好きの主婦、週末は異世界でシェフになる。  作者: 間宮芽衣


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【73】いよいよ魔王の元へ出発。


 木曜日は公爵家の皆さんを見送った後ルーナ村に蟹と牛肉だけ取りに行って、金曜日は家族でゆっくりと体調を整えた。


 そして、今日は土曜日。


 いよいよ魔王の家へ行く日である。無事帰って来れたら蟹パーティーをしよう。それをモチベーションに頑張るつもりだ。


「ピンポーン!」

丁度準備が出来たところでインターホンが鳴った。


「ままー、あやねちゃん!」

こうちゃんが教えてくれたのでそのまま玄関のドアを開ける。


「栄子さん!来ました!」

そう言ってどこか緊張の面持ちで彩音ちゃんが公爵家の庭に立っていた。


 外に出ると、後ろにはずらりと公爵家の皆さんがいた。お見送りしてくれるようだ。


「達者でな。くれぐれも無理はしないでくれ。」

とケネスさんに激励を飛ばされる。

「是非和解してきて下さいね!」

シリウス君とニーナちゃんにぎゅっと手を握られた。


 ダイアナさんは笑顔で頷いてくれた。

 

 そして、後ろから知らないガタイの良い男性がぬっと出て来た。まるでプロレスラーのような風貌である。あ、でもよく見るとイケオジだ。


「紹介する。私の友人で、バルガン辺境伯のライゼンという。カーネル王国では騎士団長を務めていた。今回5人目のメンバーとして同行してもらう。皆レベルは十分だと聞いたが、戦闘経験に長けた者がいた方が良いだろうと声をかけたのだ。」


そう言ってケネスさんに紹介される。


 えええええ!騎士団長?!それは凄い。…あー…良かった。私達家族ってレベルだけ高いけど確かに全然生身で戦った覚えないんだよね。


 考えないようにしてたけど、もし車が入れないところ通らなきゃいけなくなった瞬間めちゃくちゃ不安だなー…と思ってたのだ。


「よお。ライゼンだ。ま、魔王とは戦う訳じゃねぇみたいだけどよ。一応何かあった時の為にな。子供もいるみたいだし。それに、魔王の家が俺の領地にあるって話だしよ。まあ、これからよろしく頼むわ。」


そう言ってライゼンさんが手を振る。


「それはとても心強いです。僕達も色々考えては来たんですがなんだかんだ怖いんで。宜しくお願いします。…よし!それじゃあ行きますか。」


そう言って祥志が車を出す。


「あ、じゃあライゼン様は後部座席だと狭そうなので助手席に座ってもらっていいですか?」


私がいうと、

「おう、悪ぃな。」

と言いながら嬉しそうにライゼンさんは助手席に乗った。


 よし、魔王の家へ出発進行ー!!!


 ここから魔王の家まで300キロくらいである。東京から大体福島市ぐらいまで距離だ。


 さすがに気合いを入れて行かなきゃな。


 安全的な面でもそうだけど、運転も大変である。


◇◇


 ブウウウウン。

 

 出発してから1時間ちょっとが経った。


 ただいま80キロくらい走ったところだ。信号や他の車もいないので順調に進んでいる。


 七時半に家を出たのでこの調子ならお昼前には魔王の家に着けそうだ。


「いやぁ、しかしクルマねぇ。めちゃくちゃ速ぇな。すげぇわ、こりゃ。乗り心地も最高だしよ。これに乗れただけでも来た甲斐があったってもんよ。しかもモンスターも弾くと来たもんだ。こいつぁ俺のやること本気でねぇかもしれねぇな。」


そう言ってライゼンさんがガハハ!と笑った。


 豪快でスカッとした性格の方のようだ。ケネスさんと気が合うのもなんとなくわかる気がする。


「いやー、でもどんな人なのか想像もつかないですからね。魔王がいい人だと良いんですけど。いきなり攻撃とか有無を言わさずして来たらどうしましょう…。」


私がそう言うと、彩音ちゃんが考え込んだ顔をする。


「うーん、サダオさんのお爺さんはいい人だったみたいですけどね。日本でキヌさんとずっと仲よく農家やってたわけですし。」


「まあ今回もいい奴だとは限らんからなぁ。しかも王家が今まで隠蔽してきたせいで魔王の資料とかもほとんど残ってねぇしな。魔力を持ちすぎて瘴気をばら撒いちまってる人間って事以外は何にもわかりゃしねぇ。」


そう言ってライゼンさんが難しい顔をする。


「まあ、今までの聖女だった方と伴侶の方が倒したと言えば聞こえはいいですが、殺しちゃってたってことですもんね。前の聖女のキヌさんは逃したみたいですけど。


 実は魔王がいい人でしたー、なんてことが国民にバレたら叩かれるかもしれないですし、後味悪すぎですよね。」


私が言うと、祥志が眉を下げる。


「…そうやって見ると、結構気の毒だな、魔王。いきなり家によくわからん人達が来て、『オラァ』って言われて殺されてたって訳だもんな…。」


うん。祥志。オラァって言ってたかどうかはわかんないけどね。


「あ、祥志。エンプティランプ付きそう。『急速充電』したら私運転変わるわー。」


「お、サンキュー。じゃあ一旦降りてトイレ休憩にしますか。」


そう言われたので車の窓を開けてアイテムボックスから家を出して車庫に停める。


「じゃあ、15分後にまた出発しますねー。それまでにトイレを済ませて水分補給して下さーい。」


そう言ってライゼンさんと彩音ちゃんにペットボトルのレモンジュースを渡すと2人とも嬉しそうに受け取った。


 さて、これで三分の1か。魔王の家まで何にもないといいけどなぁ。


 スヤスヤと可愛い顔で眠るこうちゃんを見て、切実にそう思った。


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