六十話 力の使い道
まだ昇り始めた朝焼けが目に入り眩しいと思う程の上空で、私は今まで戦っていた地を見渡して敵がいないかを確認する。そしてそれが終わるとソフィアがいる壁まで飛んで戻ってきた。
ソフィアは元いた場所で私が戻ってきたのを見ると、右手を軽く上げて会釈をした。私はそれに反応して右手を上げると、ソフィアの近くに来て戦いが終わったことを報告した。
「ええ、見ていたわ。凄かったわね…………それにしても、ユウカさんはスケルトン以外にも霊体を操れるのね」
「私もまだ分からないことが多くて……でも何とかなって良かったです。ああ、そういえばソフィアさんに一つ聞きたいことがあって………」
私はこの戦いを始める前から疑問に思っていた事をソフィアに質問した。
「ノアから聞きました。女神カーラの話を…………その中で謎の光がカーラから放たれた、というのを聞いて………それってまるで、私みたいだと思って……」
「……そうね」
カーラが神殿を飛び出した後に絶望し、胸の内から放たれたという光………それはまるでエレノアから聞いた神都での私と似たような……というかそのままの様な気がした。
「確かに似ている……けれど、それ以外は何も分からないわ。ユウカさんがカーラとどんな関係があるのかも、何故似たようなことが出来るのかも……」
「そう、ですか………」
ソフィアなら何か知っているかもしれないと思ったけど………まあしょうがないか。それにしてもカーラ、か…………もしかするとこの人は私がこの世界に来たのと何か関係があるのかもしれない。
そんなことを思いながら私はその場を後にし、神殿へと飛んで帰った。
そして神殿に着いた私は自分の部屋へ行こうとしたが、そこでソフィアに合わせたい人がいるからと呼び止められた。それが誰なのか聞かされないことに疑問を持ったが、私はそれに承諾してソフィアに着いて行った。
案内された部屋には見たことがない女性がいた。
私はその女性に心当たりが無かったが、その女性の近くにいた子供が見に入り驚いた。そこにいた二人の子供は、どちらも昼間に怪物と戦っていた時に私が助けた子供だった。
「ソフィアさん。この人たちは」
「ユウカさんが助けた子供と、その母親よ。その事であなたにお礼を言いたいと私に相談してきたの」
ソフィアはそういうと女性の元へいき、私が来たと教えた。
それを聞いた女性は私の側まで来て感謝の意を伝えた。
女性に感謝され、少し気恥ずかしかった私は軽く返事をした。
女性はとても疲れたような表情をしていて、子供たちも元気がなさそうだった。
「ソフィアさん、あの子たちって……」
私は三人が部屋から出ていった後にソフィアに子供の素性を尋ねた。
「あの親子はエルドレッドの妻子なの」
「そうなんですか………私の事、恨んでなかったですか?」
「なんで? 感謝していたじゃない」
私は責任を感じていた。エルドレッドが殺された原因は私なのではという。
「確かにエルドレッドは亡くなってしまった。けれどユウカさんはあの二人を救ったのよ? それなら感謝されて然るべきでしょ?」
「そう、ですかね…………」
子供たちは助けられた。けどそれがエルドレッドを守れなかった事と関係あるのだろうか。
私は今も一人の人間を死なせてしまったと後悔していた。だからなんだという話だが、私にはそれがそれがどうにも引っかかっていた。
ソフィアと別れた私はバーゼルと名乗る男に連れられ、何故か捕らえられていたアンナを連れて部屋に戻った。
部屋に戻った私は、ベッドの質感を噛み締めて微笑んでいた。霊体でいても何かに触れらるようになってからは、常時浮遊している必要もなくなり安心感がある。
しかし考えずにはいられない事もある。それはエルドレッドのことでもあり、私のことでもあった。
昼間の怪物と、アンデッドの群勢はどれ程の強さなのだろうか。エルドレッドの魔術は誰にでも出来ることなのだろうか。いや、それならもっと簡単に怪物を押さえ込めていた筈だ。だとすると結構強かったのではないだろうか、あの怪物たちは………。亡くなったエルドレッドは皆んなに慕われていたし、そこそこの地位に着いているようにも見えた。
私は窓の外にあるディアを見て思う。カーラは自分の力を使って多くの人を救っただろう。それは誰にでも出来る事ではないと思う。志はあっても力がない人。逆に力はあっても悪い考えを持った人もいる。この世界ではあいつらがどこにでもいるわけではいけど、でもいろんな脅威がある。私にはカーラのように力がある。それならば彼女のように誰かを救うために力を使った方が良いのではないだろうか。
私は頭の中で色々考えを巡らせたが、いつの間にか眠りについていた。
朝起きて外を見ると既に日が昇っていた。昨日は大変だったからか、どうやら寝坊したらしい。
(おはようございます)
(おはようノア)
私はいつもとは違う身体の重みを感じながら起き上がった。浮遊している時とは違い少し億劫ではあるけれど、地べたを踏み締める感覚といいやはりこれは大事なことだと思った。
「はッ! おはよう御座いますユウカ様!」
「お、おはよう……なんか元気だね」
「はい! 昨日はとんだ失態を晒しまたので、今日は張り切っていきます!」
「そ、そうなんだ。頑張って」
元気だな……本当に。ああ、そうだった、ソフィアさんに言わなきゃいけないことがあったんだ。
アンナの気合いの入れように少し怯えながらも、ベッドから立ちあがろうとした私はそれを見て固まった。
「あ……!」
それは服を着ていない自分の身体だった。
「どうかしましたか?」
そうだった……あの日から服を着ていなかったんだ。色々大変なことがあったから気にしてなかったけど、この姿でソフィアと話していたんだよね…………ソフィアと会いたくないな。そ、そうも言ってられないよね。なんとかして服を着ないと。けど、あの時は何故か服ができなかったんだよね。
私は羞恥心を紛らわそうと考えた。けれどあれこれ考えるより先ずはもう一度服を想像してみようと思い、取り敢えず神都の街を歩いているような女性の服装を想像した。
すると魔力の流れる感覚がし始め、徐々に想像通りの服が出来上がってきた。
「お!」
できた…………ひとまず安心だけど、なんであの時は出来なかったんだろう? 魔力を流してなかったとか? 想像力が足らなかったとか?
そんな疑問はあるものの、もう裸ではないという事実に大きな安心を得た私は、ソフィアに自分の考えを伝えるべく部屋を出た。
私はソフィアの部屋の扉前まで来ると、右手で軽く二度ノックした。
「うん?」
扉を開けたのはソフィアの母親だった。けれど私が見えない彼女はキョロキョロと不思議そうに辺りを見回していた。
「あ、私です。ユウカです」
「ああ、ユウカさん。少し待っていてね」
彼女は私に暫く待っているようにいうと扉を閉めた。中から聞こえる声からして、どうやらソフィアに確認しているのだろう。
そうして少しの間待っていると、ソフィアの母親は扉を開けて中に入るよういった。
私は部屋の中に入るとソフィアに早速夜中考えたことを話した。
「私には力がある……と思います。それを何に使うのかを考えました。それで私は、あの怪物みたいなのから多くの人を守るのに力を使おうと思います」
「………そう。まあ止めたりはしないわ。でもどんなことをするの?」
「元々ソフィアさんから依頼されていた遺跡の破壊……色々な事があって出来ていませんでしたから、それをやろうと思います」
あの遺跡から生み出されるアンデッドはロペルの住民にとって危険以外の何者でもないだろう。その危険を破壊する事で、多くの人を救える。もう私は前程弱くわない。私ならやれるはず……いや、やらなきゃいけない。
私は決意を新たに神殿を出ると、森まで浮遊して向かった。
なんとなく裏話を。
ソフィア対ネスロで、ソフィアは常に魔術を使って戦っていましたが、ティアナに祈って魔法を放っていれば一発でケリがついていました。




