2度目の結婚式です!
私は今、真っ白の上品なワンピースを着て、サロンへ入る扉の前に立っている。隣には、ルイド様。
「なんだか緊張しますね」
「そうだな」
私とルイド様はこれからやり直し結婚式を行う。
もちろんない内的にだよ!ちゃんとした結婚式は挙げているからね!参列者はフレデリクとソルディエとサフィだけだ。多いと恥ずかしいからね!
やり直しプロポーズをされて次の日、やり直し結婚式を簡単にだけど挙げようと言われた。
とりあえず驚いたよね!思わず3回くらい聞き返したもんね!ついでに抱きしめてもらった!
「どうぞこちらへ」
サロンの扉が開き、ソルディエが出てくる。
ソルディエには感謝しかないなぁ。公爵夫人としての振る舞いは全部教えてもらった。地獄だったけど。
「あぁ」
ルイド様にエスコートされてサロンの中に入る。サロンの中は少しだけ飾り付けがされていて、どことなく華やかだった。
いやまぁ、私が作ったクッションカバーをつけたクッションが目立つところに置かれているのはこの際置いておこう。うん、絶対触れないからね…!
サロンの中をフレデリクが待っている所まで優雅に歩く。フレデリクは神父役である。
フレデリクの近くにはサフィが静かに立っていた。私たちの後ろにはソルディエがついてきている。
あ、サフィ涙ぐんでない?早くない?私より先に泣いているよ?…え、なんで泣いているの!?
「ではこれよりルイド・ユースエン公爵様とフィリア・ユースエン公爵夫人のやり直し結婚式を行います」
フレデリクの元につくと、フレデリクはそう声を上げた。
それっぽいね!なんか雰囲気あるよ!
その後、この前聞いたような文言をキュッとまとめたものをフレデリクが読み上げる。脳裏に自分たちの正式な結婚式と、王太子殿下の結婚式の様子が浮かぶ。
「それでは、ルイド・ユースエン公爵様はこれから先、フィリア・ユースエン公爵夫人を生涯愛し大事にし、領地の発展に尽力すると誓いますか?」
チラッとルイド様を見る。ルイド様はしっかりと前を向いていた。その目の奥に意志の強さが見える。
「誓います」
ルイド様の声が、心の奥底に響いた気がした。
「フィリア・ユースエン公爵夫人はルイド・ユースエン公爵様を生涯愛し支え、領地の発展に尽力すると誓いますか?」
もう1回ルイド様を見上げる。今度はルイド様と目が合った。凛々しい目つきで力強く頷かれる。
「誓います」
その5文字の言葉を発すると、不思議と自分に自信が持てた。今まで公爵夫人にふさわしくないんじゃないかという考えが一瞬で吹き飛んだような、そんな感じ。もちろん、これからも立派な公爵夫人になるために日々精進するけどね!
「これにて結婚式を終了します。おめでとうございます」
結婚宣言は正式にやっているし、もう結婚しているからする必要はない。
これで、やり直し結婚式の全てが終わった。
「ありがとう、フレデリク」
「奥様、リアグランス第3弾をそろそろ作りましょうね」
祝福にお礼を言うと、フレデリクはいたずらっぽく笑ってそう言ってきた。
「わ、わかったわ」
私の鼻、終了のお知らせ。それにしても、フレデリクには色々してもらったなぁ。リアグランスは発案と香り決め以外は全部任せているし。本当にありがとうね。これからもよろしく!
「旦那様もおめでとうございます」
「すまないな、フレデリク」
「私めはユースエン公爵家の執事長であり旦那様の専属執事ですのでお気になさらず」
ルイド様とフレデリクは手短に会話をする。長年のコンビなのかな?多くを語らななくても伝わっている感じ。
…て、フレデリクってルイド様の専属執事だったの!?初知りなんだけど!執事長として屋敷全般取り仕切って、ルイド様の専属執事としてお世話して政務を手伝って、私発案のリアグランスのプロデュースもやってたの…?なにそれすごすぎない!?
「奥様、おめでとうございます」
次に祝いの言葉をくれたのは、執事長の次にこの中では身分の高いソルディエだ。
「ありがとうソルディエ。これからもよろしく頼むわ」
「お任せください」
ソルディエは力強くそう言うと、若干恐怖を感じるくらい良い笑顔を浮かべた。
うん、たぶん今後も地獄の淑女教育をするんだろうね?鬼先生だね!
「おめでとうございます奥様」
最後にサフィが声をかけてきてくれた。まだ目がウルウルしている。
「ありがとう。サフィにはたくさん心配かけてしまったわね」
ルイド様との仲でしょー、粗相即離縁でしょー、立派な公爵夫人修行でしょー、毒事件でしょー。ルイド様との仲に関しては黒いオーラが怖かったね!今もたまに出かけているけど。
「いえ、私は奥様の専属侍女ですから。奥様が幸せそうでとても嬉しいです」
「ふふ、幸せよ。これからもよろしくね」
「はい!」
サフィは絶対私からは手放さないからね!これからもたくさん迷惑と心配かけるからよろしく!とりあえず、明日は掃除をしようかな!
やり直し結婚式も無事に終わり、ルイド様と二人っきりになった。今は例のバルコニーに来ている。
「昼にここに来るのは初めてですね。なんだか夜とは違った景色に見えます」
バルコニーの手すりに手をついて、立派な庭園を見る。一望できるこの場所から見る庭はやっぱり豪華だった。
「そうか」
ルイド様も柵に片手をつき、庭を見る。その顔には、この前のような翳りはなかった。
「ルイド様」
「なんだ?」
「プロポーズもやり直し結婚式もありがとうございます」
私がそう言うと、ルイド様は小さく微笑んだ。
「あぁ」
前は冷たいと思っていたその一言。前世の記憶を思い出してからは面白かったその一言。今はなんだかとても愛おしい。気持ちってこんなに変わるんだなぁ。
それにあの頃は、ルイド様が私に向かって笑顔を見せてくれるなんて思ってもいなかった。社交の時のキラッキラの笑顔はノーカンです。
「というわけでハグしてください。頭も撫でてください」
「前後関係が全くわからないけど、いいぞ」
ルイド様は一瞬呆れた表情をして、すぐに無表情になると、私をそっと抱き寄せてくれた。そして頭を優しく撫でられる。
表情と行動が相変わらずミスマッチだね!でもそこも好き!
「本当フィリアは自分の願望を直球で伝えてくるよな」
「褒めてるんですかそれ」
言い換えればムードがないってことじゃないですかね!?でもしょうがないじゃない!前世でそういう経験してないもん。そして相手がルイド様だからね!ストレートに言わないと伝わらない気がする。
「褒めてる褒めてる。そうやってわかりやすく甘えてくるところ好きだからな」
わぁびっくりした!いきなり好きとか言わないでもらえます!?心の準備が必要なんですよ!
「なんだかんだ言って願望を聞いてくださるルイド様好きですよ」
「そうか」
ルイド様はそれだけ呟くと、抱きしめている腕に力を入れた。だけど、苦しくはない。あくまで優しい。本当、そういうところも好きだなぁ。
「ルイド様」
私はハグされたまま顔を上げる。ルイド様の綺麗な目をしっかり見た。ふわっと微笑み、口を開く。
「これからもよろしくお願いします!」
「あぁ。こちらこそよろしくな」
ふっとルイド様が優しく笑った。私の大好きな表情だ。
結婚した理由はそれこそ打算にまみれていて愛なんてなかった。だけど、そんな中でも立派な公爵夫人になれるように頑張ってよかった。いろんなことがあったけど、今こうしてお互いに愛し合うことができている。
私、幸せだなぁ。大切にされているなぁ。
今後もずっと、それこそお互いしわしわのおじいさんおばあさんになるまで幸せに過ごせますように!
私はルイド様の肩に手を置いて、背伸びをしたのだった。
これにてこの作品は完結です!
読みにくい文章だったと思いますが、ここまでお読みいただきありがとうございました!
少しでも皆さんが面白いと思ってくださったら幸いです。
たくさんのブックマーク、評価、感想、本当にありがとうございました。
執筆の励みになりました!
誤字報告もとても助かりました。
最後、フィリア夫人は何をしたんでしょうね!