(⑳)視えないバレエ
今回はホラーチックなお話です
まるで狂ったバレエを見ているようだった。
それはそれでとても可憐で儚かった。
「まだ、みていたいのですか?」
「そうだね、もう少し“みていたい”」
あまり上手くはありませんので、と彼女は謙遜していたが素人の目から見ても彼女は美しかった。
――――嗚呼、欲しい。
駄目だ、何を考えている。
彼女にとって私など自分の舞に感動した観客の一人に過ぎないと言うのに。
すると一通り踊り終えた彼女がこちらを見た。
「まだ、みていたいのですか?」
「そうだね、もう少し“みていたい”気もする」
彼女はまた舞う。
欲しい、と。
嗚呼、欲しい。
彼女に襲い掛かってまるで飢えた獅子の様に、骨の髄まで喰らい尽くしてやりたい。嗚呼、
欲しくて欲しくて堪らない。
駄目だ。
駄目なんだ。
彼女は踊り終えてまたこちらを見る。
「まだ、みるのですか?」
「そうだね、あとちょっとだけ“みていたい”んだ、きっと」
喉から手が出るほど欲しくて堪らないのに。
襲い掛かりたいほど欲しくて止まないのに。
とある作家は言ったらしい。
〈手に入りにくいものほど手に入れる為に熱籠もる〉
その作家を褒め称えてやりたい。
私は今まさにその状態になっている。
彼女が、彼女の舞が、
――欲しくて、欲しくて、熱籠もる。
そうしてまた一通り踊り終えた彼女は足の無いままにこちらを見た。
「“幽霊”のバレエなんて、みて楽しいのですか?」
「うん、とっても“視ていて”楽しいよ」
END
手に入らないと分かっていても・・・
閲覧ありがとうございました




