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最弱の王  作者: ぱるお。
3話 恋する?魔法使い
23/27

賭ける想い

 

 ツキヒと決闘することになった馬場アタル。放課後、彼と対峙していたツキヒはもちろん、大勢いる観覧の生徒、決闘を取り仕切る教師に至るまで、彼の身に起きた事態に驚愕せざるを得なかった。


 ランキング上の数字だけで言えば二人に大差は無いが、この三年間でツキヒの底知れない実力はすでに周知の物となっている。彼女の敗北は万に一つも有り得ないと、アタルの悪友三人組でさえ思っていた。


 しかし蓋を開いてみれば、ツキヒが劣勢状態にある。開始早々は彼女に分があった。だがアタルにとある変化(・・・・・)が起きたと同時に、その優劣が傾いた。


 会場にいる全ての者が驚愕している物に、その理由があった。ツキヒは肩を揺らしながら、桃色の(・・・)樹木を恨めしそうに睨み付ける。


 事の始まりは、半刻前。




 ◇◆◇◆◇◆




「MRTを前に」


 犬のような耳を頭から生やした男性教師が、決闘の為にMRTを取り出す。朧ツキヒと馬場アタル、両名のMRTと接続し、対戦情報が会場全体に浮かび上がった。



 対戦情報


 挑戦 RANK184 H1-E 朧月妃


 応戦 RANK212 H1-E 馬場当


 勝敗条件 どちらかの戦闘不能、及び降参にのみ勝敗を決する


 禁止事項 対戦者の殺害


 備考 武器・道具の持ち込みに範囲無し



 情報が浮かぶと同時に会場が沸く。一昨日に執り行われたヒノワとヤマトの決闘ほどではないが、十分すぎる生徒が集まっている。教室内であれほど大胆な宣戦を行われては、噂が蔓延するのも無理はない。渦中の人であるヒノワは、観覧席にてクラスメイト数名に取り囲まれ冷やかされていた。


『彼女さんを応援しに来たのかー?』

『黒子君も隅に置けないわね』

『白昼堂々とけしからん奴らめ!』


「そ、そんなんじゃないよ……」


 ヒノワは否定こそするものの、嫌な気はしていなかった。連日、彼を中心に決闘が多く行われているが、実力者で名の知れたヤマトを倒した後からは野次馬感覚で彼に話しかける生徒も増えつつある。彼に対して否定的な感情を持つ者もまだ多いが、それでも好意的に接してくれる生徒が増えたことに喜びを感じていた。


 そんな彼らの様子を、ヤマトは少し距離を取って眺めていた。隣に座るヒメが問いかける。


「混ざらなくて良いの……?」


「柄じゃないからな。それにお前は人見知りだろう?」


「そうだけどぉ……」


 もじもじと下を向くヒメを尻目に、ヤマトは周囲に目配せをする。二人から一定の距離を置いた生徒たちが、悉く目線を逸らした。


 彼らはヒメの親衛隊、所謂ファンクラブのメンバーである。彼らはヒメが舞台の主役じゃなかろうとも、ヒメがいるところにいつでも現れる。無論ヒメ本人の非公認クラブである為、活動は秘密裏に行われているが、数が非常に多いため目立つことこの上ない。しかし当の本人は人間観察を常に行っているにも拘らず、自分に向けられる視線には気付かないようだった。


「でも驚いたなぁ……ツキヒちゃんがヒノワ君に告白したなんて……」


 告白などしてはいないはずだが、噂が独り歩きしているようである。別クラスであるヒメの元に話が届く頃には、話の軸が恋愛話にすり替わっているようだった。


「確かに告白だったかもしれんが、あれは恋愛感情というより……」


「……?」


(そう、恋愛感情なんかじゃない。あれは……罪悪感、か……?)


 無粋になる、と思い言葉の続きは内に留める。疑問を浮かべるヒメを誤魔化すように促した。


「どちらにせよお熱いことで……試合が始まるぞ」


「う、うん……」


 犬の獣人である教師が手を掲げるのを見て、会場中が鎮まった。その手が振り下ろされる。


「試合開始!」


 先に動いたのはツキヒだった。前に駆け出すと同時にアタルに向けて短刀を投擲する。対するアタルは魔法障壁を張り、媒体とする金属製の杖を前に出しそれを防ごうとするが、背後に気配を感じ低く屈んだ。元は首があったその場所を、ツキヒの斬撃が通り抜ける。


 初手の投擲は目くらましであり、本命は縮地で背後に移動してからの斬撃。見切るのは困難を極めるが、ツキヒを見続けたアタルはこの動きを辛うじて読むことができた。


 空振りしたツキヒの脇はがら空きだが、それでも攻めには転じず身を翻して杖を掲げ身を守る。そこにもう一撃、振り抜いた右腕はそのままに、左手で先ほど投擲された短刀を掴みそのまま振り下ろした。


 ツキヒの短刀とアタルの杖。金属同士のぶつかり合う音が響く。


「なかなかやるね。ランキング三桁でこの攻撃を躱せる人はいないと思ってたんだけど」


「伊達に三年間ペア組んでないから、な!」


 屈んだ状態でのつばぜり合いは不利と感じ、力任せにツキヒを弾き飛ばす。ツキヒの方も、無理に逆らわずにそのまま後方へと飛び退いた。


「これならどうかな!」


 先ほどと同じように短刀を投擲しアタルの背後に周る。だが今度は更に距離を開き、もう一度投擲した。かと思えばまた縮地で移動し、次は右方から斬撃が。左方から投擲、上方からの斬撃。息も吐かせぬほどの斬撃と投擲の乱打。


 ツキヒは暗器使いである。常にローブを着込んでいるのは正体を隠す為だけではなく、暗器を隠し持つ為でもあり、短刀だけでも三十本以上は潜ませている。


 アタルは最初こそ杖で対応していたものの、気付けば障壁を固め身を守ることに精一杯になっていた。彼女の細腕のどこにそのような力があるのか、一撃が重たい。障壁越しに衝撃が伝わってくる。障壁が破られるのも時間の問題だった。


「来たれ木精、集えよ水精、土の精! 契約に従い、その恵みで以て我が敵を捕らえろ! 『蛇の蔓』!」


「!」


 彼の障壁が破られる寸前、呪文の詠唱によりツキヒの足元から蛇のような蔓が彼女を捕らえようと伸びてくる。木属性魔法の『蛇の蔓』は捕縛魔法ではあるが、当たれば鞭の如く絡みつくような痛みを伴う。ヒット・アンド・アウェイを繰り返していたツキヒは、捕まる前に離脱した。



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