演技
目の前で死んでいった。
私は結局殺すことも、終わらせてあげることもできなかった。
ただ終わったものだけが目の前にあった。
それを見て美味しそうだと思った。
それを見た彼女は笑った。
「大丈夫、君は殺さないから。」
何故かと聞き返すこともない。
目の前肉がただ美味しそう。
彼女に頭をなでられる。
受け入れていい と言う。
分らない。
なんで美味しそうなのか。
そうするべきだ と言う。
いいや、。
違う。
きっと何かどこか違う。
おかしい。おかしい?
可笑しい。
誰が?誰かが、
ちがうんだよ。
なんで、どうして今なのか
思い出した。
逃げてきたんだ。
怖くて。
人が人を食べるのがじゃない、
人を人形人食種を食べるのでもない、
ヒトがヒトを食べるのだ。
それが怖い。
幼い頃。見てしまった。
どこかで。3人がいた。
男と女と女の子。
みんなヒトだった。
知っていたけど知らなかった。
ヒトがヒトを食べる事。
みんな泣いていた。
男は泣いて、女も泣いて、女の子は泣き叫んでいた。
なのに女は笑って死んだ。
そしてそのあとは
、
後はよく覚えていない。
ただ、それを思い出した。
3人でいた。
女と男と男。
みんなヒトだった。
知っていたけど知らなかった。
ヒトがヒトを殺す事。
初めてだった。
ヒトに殺意を向けられたのは。
あそこで誰かが止めに入ってなければ、
泣いていた?死んでいた…笑った。
結局私は死ななかった。
それでも思い出してしまった。
それがどうしようもなく怖い事を。
ヒトが怖くなった。
周りにはヒトしか居なかった。
逃げ出した。
先生に言われるままに。
でも結局、今、
人にも混ざれず、ヒトが目の前で死んだ。
それでもやっぱり美味しそうなのだ。
私はヒトだった。
怖く、怖くてしょうがない。
恐怖こそが、君はヒトではないのだとセンセイは笑ってくれた。
違う、
私は人ではない、
ヒトですらないのだと、
ならば私は。
それでもやっぱり、
ソレを打つのは怖かった。
恐怖が勝って何も出来ない。
私はただ、生きたいのだろうか?
恐怖心からだとヒトを食べるフリをした。
口に入れ咀嚼し、飲み込む演技をする。
少しずつ少しずつ時間をかけて食べる。
やはり美味しくないのだ。
美味しく感じたくない。
言い訳を、ただ彼女が去るまで食べ続けた。
「それじゃあ元気でね。」
満足する彼女を背にただ食べ進める。
彼女はもういない。
それでも演技は続いた。
目の前にはもうヒトは居なかった。
人形人食種の略称はどうしようと常日頃考えてたけど、ちょうどいい「ヒト」で統一しようかと思います。




