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 救えなかった。


 守れなかった。


 自分の無力さを恨む。


 倒せなかった敵を憎む。


 害を成した国を呪う。


 オレは何の為に生きてきたのか……。




 叫び。オレの口から叫び声が上がっている。


 オレは、まだ死んでいないのか?


 光に包まれた視界が開く。


「アリス! 目を覚ませアリス!!」

「ちゅんちゅん!(まだ生きてるんでしょ? 返事しなさいよ!)」

「お願い、死なないでアリス!!」


 皆……? もしかして三途の川って奴か……? 川を渡っちゃいけませんって?

 お前らがいなくなって、ハピアを救う力も無いオレが生き延びてどうするんだよ……。


「ふむ。我々が助けた恩を反故にするとは、所詮は邪悪な魔物か」


 流麗な声が淡々と告げる。何だこいつ? 誰だよ。オレが感傷に浸ってんのに邪魔すんじゃねえ。


「ふん、生意気な口を聞く犬め。いや、犬は感謝を忘れない動物だったな。ではこいつは犬にも劣る何かか」


「わんわんわん!!(黙って聞いてりゃ調子乗りやがって! さっきからお前何様だ!!)」


 だんだん目が慣れ、視界がクリアになる。


 突如オレが吠えたことで、驚きに目を見開くメテオたちが見える


 そして一人の男。背が高く、線の細い、長すぎる長髪の美形。


 何だこいつは……。ロングコートと日本刀持ったら様になりそうだな。なにロスだ?


 いや、良く見ると耳が長い、尖ってる。


 こいつはアレか。ファンタジーでお決まりの種族。


「わん(エルフか)」


「間違ってはおらぬが我らを他のエルフ族と一緒にしてくれるなよ。畜生風情が」


 何なんだよコイツ!! いちいち喧嘩売りやがって!


「マッドハートが匿えだのと言うから期待して助けてやったが。見込み違いだな、圧倒的な弱さを感じるわ」


「わんわん!!(あぁ!? お前アイツの知り合いかよ! 助けてやったとか恩着せがましいんだよ! だいたい他のエルフと違うって何だ! 外人なんて皆同じだっつーの!)」


「アリスだめだよ!」


 キャロがオレを抱き抱えて口を塞ぐ。


 キャロ、何すんの! キャロに抱かれた事で冷静さを取り戻す。


 オレたち、生きてたのか……。


 メテオも、クーも。皆無事だったのか……。


 もう、体は動くんだな。


「あぁ今のところは問題は無い。我らを助けてくれたエルフたち、此奴らはウォーエルフと呼ばれる存在だ」


 すげえの来たな。戦争エルフか……? エルフは平和を好んで争いを避けるんじゃねえのかよ。


「ちゅんちゅん(それはこの人達も一緒みたいよ。アリスも無事みたいでホッとしたわ)」


 あぁ心配かけたな。てゆーか一緒って何だ、呼び名にウォー付けといて平和愛してんの?


「我らは他の軟弱なエルフどもとは格が違う。争いを避ける為の最も効率的な手段を取れる強者だ」


 なんかマッチョな臭いがしてきたな……。


「アリス、ちゃんと聞いてあげて。この人長老さんだよ?」


 わかってるよキャロ。続けたかったら話せよ戦争野郎。


「下賤な犬め。わかるように教えてやろう。我らは強者だ。この世界において強者に対して弱者はどうする? 決して戦いを挑んだりしない筈だ。


 圧倒的な力の前に争いは存在しない。残るものは降伏と平和、それだけ。


 その為に我らは人生全て。永き時の流れの中で切磋琢磨し、力を積み上げた。


 それが我らウォーエルフだ! 臆病者の腰抜けどもとは違う!!」


 やっぱりマッチョじゃねーか!! 聞いて損したわ!


「アリス、助けてくれた人にそんな言い方……」


 良いんだキャロ。どうせ筋肉バカには伝わらないさ。


 それで、ココはウォーエルフの隠れ里か何かか? 炎に包まれるオレたちを助けて保護してくれるってか?


「勘違いするな勇者の犬よ。マッドハートがお前の強さには可能性があると言ったから助けただけ。ただの興味本位よ」


 オレが勇者って知ってたのかよ。随分と不敬だな?


「敬うに値せんわ。私としては早く出て行って欲しいのだがな、里の者がそれを許しはしない。貴様の強さに興味深々だからだ」


 随分と統率力の足りない長老だな、リーダー変わった方が良いんじゃないか?


 突如メテオがオレをキャロから引き剥がす。


 何だ? 何すんだ?


「我とクーはキャロを守りながら少し休む。アリスは精進するがいい」


 いや休むって……、お前は結構休んでたろ。てゆーかオレが何を精進するんだよ?

 休んでる暇があったら早くハピアのとこに行くべきだろ。


「アリス、グッドラックだよ!」


 キャロがガッツポーズを見せてくる。


 何だ? 聞き覚えのあるフレーズだな。ハピアにでも聞いてたのか?


 そしてその単語に嫌な予感しかしない。


「我らエルフの中でも最強の戦闘民族!!」

「WeAreTheStrong!!」

「我ら! 闘いに生き! 争いを拒む者!!」

「We! Love! Peace!!」


 周囲から、里中から怒号が響き渡る。


 それと同時に駆け出す群衆。


 それらは当然のようにオレを見据えている。


「ちゅんちゅん(グッドラック)」

「アリスよ、グッドラック」

「勇者たる駄犬よ、生き残る力があれば里から出してやろう」


 こいつら……、ふざけんじゃねええええ!!!!


 オレの絶叫はウォーエルフの雄叫びに掻き消された。

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