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4.弱者の選択

 まだ昼を過ぎたばかりの森の中、天を仰ぎ倒れている。


「おやおやぁ、アリス様ぁ。しばらく見ない内に随分とお太りになられた様で〜」


 人をおちょくったかの様な言葉を吐く仮面の男。いや、実際に馬鹿にしているなこれは。

 大仰な仕草が余計に腹立たしい。


「マッドハート、何の用だ。わざわざオレ達を、オレを笑いに来たのか」


 立ち上がり、ふざけた態度の魔族を睨みつける。


 メテオとクーが警戒し、キャロの前に立つ。


「いえいえそんなぁ〜、滅相もない! 貴方たちがお困りの様子でしたので、お力添えに来たまででございます〜!」


 力添えだと? 何だ、ハピアを救うのを手伝ってくれるのか? 


「いえ、私は直接戦う様な力を持ち合わせてはおりませんねぇ〜」


 じゃあ何だと言うのだ。道案内でもしに来たのか?


「いえね、貴方たちの様子を見ていたのですが〜。どうにも弱過ぎるのですよ〜! いやはやガッカリですねぇ〜」


 何だこいつは? 挑発なのか? 悪かったな弱くて、文句言うだけなら帰ってくれ。


「では要点をお伝えしましょう〜。貴方たち魔物三匹とハピア嬢の繋がりを断たせていただきます〜!」


 その言葉を聞いた瞬間、俺を含めた全員が警戒態勢へと入る。


 魔力を滾らせ殺気を迸らせる。キャロですらマッドハートを睨みつけている。


 繋がりを断つだと? どうやって? いや、方法など問題では無い。何故だ。そんな必要がどこにある。


「言ったではありませんかぁ〜! 貴方たちが弱すぎると。その原因はハピア嬢、いえハピア嬢を攫った何者かが原因ですねぇ。

 私には見えますよぉ〜? 魔力の流れが、御三方から魔力が何処かへ吸い込まれているのを感じますねぇ!」


 くそ! 全然わからねえ! 俺たちの異様な弱さを何とかしてくれるってのか?


 だがハピアとの繋がりを断つだと?


「わんわん!(ふざけんな! そんなもん誰が認めるかよ!!)」


「いや待てアリスよ、もう少し話を聞こうではないか。ハピアを繋がりを断つとはどういうことだ? 魔族マッドハートよ」


 メテオ……? 何を言ってーー。


「えぇ、えぇ! お答えしましょう〜。貴方たち三人が吸われている魔力の流れを断ち切ります。

 それによって圧倒的な強化! とはいかないまでも今ほど弱くならずに済むかと〜」


 仮面の男、マッドハートがクルクルと回る。本気で言ってるのか? ふざけてるんじゃ無いだろうな。


「我は受け入れよう。力が無ければハピアを助ける事も出来まい」


「ちゅんちゅん(そうね、ハピアに対する気持ちとかが無くなるんじゃないなら。特に問題無いわよね)」


 おいお前ら本気か? オレは嫌だぞ! キャロも何か言ってくれよ!


「私は……。ハピア様は大丈夫なのかな……? 魔力がハピア様に行ってたのに急に無くなるって平気なの?」


『何らかの形で魔力が必要なのかねぇ。供給が断たれたら困るかも知れないねぇ』


 お婆ちゃん……、そうか。くそ! そういう可能性もあんのかよ! おいマッドハート! この話は却下だ、帰りやがれ!


 オレがそう思う瞬間、メテオとクーが地へと倒れ伏す。


 は……?


「おやおやぁ、これは失礼致しました〜。てっきり了承して頂けたのかと思い、お二人はお先に処置をしてしまいましたねぇ」


 ふざけんな!! 戻せ! 戻しやがれ!!


「またまた無茶を言いなさる。アリス様は姿形が変わられようとも、傲慢なお方ですねぇ〜

 そう焦らずともご安心を〜、今は急な体の変化で動けませんが! 起き上がった時にはあらビックリ〜! 力が漲り今の弱さから解放される事でしょう〜!」


 勝手なことばっかり言いやがって!


「アリス、良いのだ……。我らは問題無い、ハピアを助ける力になれればそれで良い……」


 メテオ……。くそが!


 オレは大地へと魔力を漲らせる。


「わんわん(お前らが動ける様になるまでオレがお前らを運ぶ、それまで寝てろ)」


「おやおやぁ? アリス様はよろしいのですか? あまり無茶はなさらない方、が! 私どもとしましても、死なれては困ります故〜」


 黙ってろ!! オレはハピアと繋がっていたい。あいつを助ける為に行くんだ。行った先で倒れられたら意味がねぇ……!


「では最後に、せめてもの御助力をば〜!」


 そう言ってイカレ野郎がトランプを取り出す。


 ウザったらしい華麗な手捌きでトランプを自在に操ると一枚のカードを投げ捨てる。


 何だそれは。何のつもりだ?


「今投げた方向。あちらへ進むのが吉と出ておりますねぇ〜。クラブのエース。まあそれがどの様な吉報かは判りかねますが〜」


 そんなもん知るか。オレは元々目指してた方角へ進ませてもらう。


 だがキャロは丁寧にも投げられたトランプを回収している。


 キャロ、そんな奴の言うことを信じるのか?


「そういう訳じゃないけど、念のため……。ほら! 私を助ける時にも助言してくれてたし、私を連れ出したのもこの人なんでしょ?」


 そうだけど……。


 しばし沈黙する。


 まあ……、念のためな。 行くぞ皆。


 大地に張り巡らせた魔力を解き放つ。小さな芽が生え、それが育ち若木となり、大きく育ち根を太くする。


 それらを獣の姿に創造する。


 疾き獣、木偶獣パンサー。だめか、集中力が足りねえ。四足歩行の強そうな感じには出来たが想像通りとはいかない。


 だが構わない。


 あとは気合で運用する。


 咆哮。オレは咆哮を上げて獣を増やす。


 キャロ、メテオ、クーを木偶獣から伸ばした蔓で結びつける。


「わん(飛ばすから気をつけてくれよ)」


 乗らせてない獣は護衛だ。オレの分は要らねえ、走り込みだ。


 クソが、マッドハート。オレが本当に弱くなったか、見せてやろうじゃねえかよ!!


 木偶の眷属を引き連れ、オレは走り出した。

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